中江桂子先生からよくわかるスポーツ文化論の本をいただきました。本当に恐縮しております。ありがとうございました。ほとんどお返しができず、申し訳なく思っております。
このミネルヴァ書房のシリーズは非常に工夫された読みやすいものが多く、テキストとしては好適なものが多いわけですが、本書もスポーツ文化の諸相を非常にニート(つまりはなんというか、青井和夫的[若い人はわからんかもしれませんが]に整理が行き届いていて、かつ本質的で、トッ散らかっていなくて、聡明なカンジ)にまとめられ、最後にコンパクトにものの見方が示されているという、使い勝手の良いものになっているように思いました。昨年度は、フロンターレと街づくりで卒論を書いたのがいて、もう少し早ければ、指導に活用できたのに、などと思ったりしました。
メディア,消費文化,教育,地域社会,ジェンダーなど,スポーツにかかわる幅広い現象や主題を多面的な視点から取りあげ,具体的な事例をあげながらわかりやすく解説。現代のスポーツ文化の全体像が把握できる一冊。よくわかるスポーツ文化論 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
- 作者: 井上俊,菊幸一
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2012/01/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
◎ 「スポーツ文化論」「スポーツ社会学」「現代スポーツ論」などの講義用テキストとして最適
◎ 読み物としても楽しめるトピックを選択
◎ 1トピック見開き2頁でわかりやすく解説
序 スポーツ文化論の視点? 近代スポーツの成立と発展
1 近代以前のスポーツ
2 近代スポーツとは
3 近代オリンピックの誕生
4 ワールドカップ・サッカー
5 近代スポーツのゆくえ? メディア化するスポーツ
1 スポーツとメディア
2 メディア・イベントとしてのスポーツ
3 スポーツ・ジャーナリズム
4 テレビと放映権
5 メディアがつくるスポーツ
6 インターネットとスポーツ? 消費文化としてのスポーツ
1 スポーツの商品化
2 アマチュアリズムの解体
3 ロサンジェルス・オリンピック
4 スポーツ関連産業
5 スポーツ・ツーリズム? スポーツと政治・権力
1 古代のスポーツ・イベント
2 スポーツとナショナリズム
3 植民地のスポーツ
4 ヒトラーのオリンピック
5 スポーツと階級関係
6 スポーツ政策? スポーツとジェンダー
1 性差とジェンダー
2 スポーツにおける男性中心主義
3 女性スポーツの発展
4 女性アスリートのメディア・イメージ
5 女子マラソン? スポーツする身体
1 スポーツにおける精神と身体
2 スポーツ用品と身体
3 スポーツ科学の発展
4 スポーツと健康
5 ボディビル・エアロビクス・フィットネス? 生活からスポーツへ
1 狩りのスポーツ
2 冬のスポーツ
3 山・野原のスポーツ
4 自転車のスポーツ? スポーツと教育
1 体育とスポーツ
2 子どもとスポーツ
3 遊びとスポーツ
4 学生スポーツ
5 「部活」の文化
6 スポーツは人間形成に役立つか? スポーツと地域社会
1 スポーツと地域主義
2 地域スポーツクラブ
3 都市のストリート・スポーツ
4 市民マラソン
5 スポーツ・スタジアム
6 スポーツと地域活性化? 職業としてのスポーツ
1 プロ・スポーツの発展
2 スポーツ選手のライフコース
3 スポーツ指導者
4 企業(実業団)スポーツ
5 プロ格闘技の世界?? スポーツ・ファンの文化
1 応援の文化
2 つくられるスポーツ・ファン
3 スポーツ・ボランティア
4 消費者としてのスポーツ・ファン
5 スポーツ嫌いの視点?? スポーツと芸術
1 スポーツの美学
2 美を競うスポーツ
3 文学のなかのスポーツ
4 映画とスポーツ
5 スポーツマンガ?? 日本のスポーツ文化
1 「国技」としての相撲
2 武術と武道
3 運動会と国民体育大会
4 ラジオ体操と甲子園野球
5 駅伝
6 集団主義と精神主義?? グローバル化するスポーツ
1 イギリスから世界へ
2 グローバルなスポーツ・イベント
3 アメリカ型スポーツの発展
4 グローバル化の光と影
5 ローカル・スポーツへの関心?? スポーツをめぐる社会問題
1 暴力・フーリガニズム
2 ドーピング
3 賭け
4 セクシュアル・ハラスメント
5 スポーツと自然環境
?? スポーツ・フォー・オール(Sports for All)
1 差別と排除に抗して
2 パラリンピックとスペシャルオリンピックス
3 生涯スポーツ
4 レジャーとしてのスポーツ
5 ニュー・スポーツとスロー・スポーツ
6 福祉社会におけるスポーツ?? スポーツ文化研究の視点と方法
1 機能主義
2 マルクス主義
3 文化史・文化社会学
4 スポーツ人類学
5 カルチュラル・スタディーズ
6 エスノメソドロジー
7 量的調査法
8 質的調査法(フィールドワーク)参考文献
事項索引
人名索引
スポーツ文化論というと、全面発達論とか、シバシンの人間性と人格の理論とか、地域体育論とか、そんな議論を昔学んだことをついつい思い出すような世代な私としましては、身体論、メディア論などともからみ合い、けっこう同業方面の方々がいろいろコミットされている現状を見て、襟を正している次第であります。
まだめくった程度で、なにも言えないわけですが、最近批評の成立とか、動機の成立、みたいなものばかり読んでいるせいで、この目次を見ても、1920年代とか、大正から昭和とか、1968とか、9.11とか、3.11とか、いわゆる一つのカラタニスガ的な切断に引っかけてものを理解しがちであります。でもって、こういう思考ができるようになった幸福を噛みしめるものです。そして、学部大学院時代に、報告をするたびに、サルトルとか、ルフェーブルとか、アルチュセールとか、マルクーゼとか、山口昌男とか、ひろまつとか、そんな者をこっそり使ってねぇか、とかチクチクされたのを思い出します。
まあそれは、思想調査と言うよりは、論文に批評用語とか思想用語を使うと、アポーンされるぞという、先輩たちの温かいご指導であり、むやみに反発しないで、史料をじっくり検討することでコツコツやったことは、悪かったとは思いません。
そんなことを思いながら、ふたたびめくりますと、ガッチリした歴史的視点が浮かび上がってきます。関東の学問は、大がかりな概念装置を組み立てるものが多いのに対し、関西系はサクッとコンパクトな概念を示し、実にエレガントな分析をするという伝統があるように思いますし、編者はそうした芸風の正嫡といってもいい存在だと思いますけど、そのような芸が多様に展開されていて、わが芸風を省みて、じっと手を見るの心境であります。