播田美保のお歯黒

 録画しておいた怨み屋本舗の地獄姉弟の後編を見ました。ニカッと笑った口元だけがサブリミナルにシュタシュタしていて、最後に登場かやこ、いや、さだこみたいな播田美保でしたが、後編を見てぶっ飛びました。江口のりこと比べたのが悪かったっす。江口のりこの場合、さねいえにしても、井上さんにしても、なんかやっぱり時効警察的な、というか、ケラ系っていうか、その辺の枠組の上にいると思うけど、播田美保の場合は、暗黒舞踏も、黒テントも、さねいえも、ホラーも、なにもかもまとめてぶっ飛ばしみたいなカンジになっているんじゃね?みたいな。
 つーか、これまでの「悪役」たちもそうだけど、救いのまったくない、容赦ないおぞましさで、ウリウリウリウリみたいな悪食悪趣味がシュールなまでに疾走しているカンジで、なんかかっちょワルいよなぁ、1st Gigと比べて、などと思っていたけど、まあなんとなくっぽい思いつきみたいなカットは多いと言えば多いけど、ここまでやっちゃうと笑うしかないというか。

復讐代行業者「怨み屋本舗」の怨み屋は、人気ラーメン店「武藤製麺所」の店主・武藤誠から、新人アルバイトの社会的抹殺を請け負った。
武藤は、このアルバイト店員から執拗な嫌がらせを受けて廃業の危機に立たされていたのだ。
怨み屋が、アルバイトの素性と嫌がらせをする動機を探る中、ある姉弟の存在が浮上する。
さらに、武藤にもひた隠しにする過去があることを掴む。
http://www.tv-tokyo.co.jp/uramiya/backnumber/06.html

大学出たてのおねえさまは、純情可憐で、その純情を播田美保が熱演かよ、とか思っていると、これが狂気の妄想だったりする。播田美保は、純情と狂気の弁証関係みたいなもんを演じきるのだろう、とか思っていると、健啖に武藤誠をパクついちゃったりする。このウハウハな健啖さが、ものすげぇ表情のものすげぇメイクのものすげぇ造作で、悪趣味もへったくれもないゲラゲラ感で、しかもその純情と狂気が、「お歯黒」としてイメージ化されるという力業。なんで「お歯黒」なんだよ、とか思わないこともないが、まあ要するにこれが世の中、ってことでしょう。
 そして「お歯黒」にも救いはなく、身勝手なまでの健啖さで、おねえさまはちゃんと六角慎司の弟君もパクついちゃっていて、そのドッギーな写真を情報屋がみせて、まさかと思ったら、やっちまったなぁ、しょうがねぇなぁ、と嗤われるわけだけど、この写真がまた「お歯黒」以上のものすごさで、諸行無常の逝ってよし、と申しますか、どうにもこうにもなんともにんともで、なんか前後逆にもみえたりして、まさか、播田はtrannyじゃねぇだろうな、みたいなコミカルもござったりします。でもって、妄想や健啖さは、最後に「ハッピーエンド」になったラーメン屋夫妻のなかにも顕現してしまい、播田美保の残像がぬらっとあらわれて、ちゃんちゃんみたいな。
しかし、今度の怨み屋は、名古屋今池のノン助のラーメンというか、なんかものすげぇゲロ不味仕様でありながら、滋味あふれる繊細な技巧と、それでいて思いきったあてずっぽ、といって悪ければ直感気合い一閃と、ものすげぇインパクトで、ずっしり胃袋に収まるって感じですね。
 それにしても、お歯黒は心的外傷になりそうなくらいのインパクトだった。夢に出てきそう。もう何度かみて、演出の意図を、播田の解釈と演技がどのくらい喰っちまっているか、みたいなことを見すえたい気もしますが、私の能力をいろんな意味で超えています。