『ほんとうに読んでほしい本150冊』

 プレジデント社から本が届いた。前に届いたときは、左翼傾向出版から届くよりもぶっ飛んだものだが、今回はまた三浦展氏が本を出したのかしら、みたいな感じで余裕のものがあった。ブックガイドの本である。本ミシュランみたいなものだが、あの三浦展ならば、もっと気の利いたコピーをつけることだろう。ただ、この本には、そのような題名がつけられるのではなく、「ほんとうに読んでほしい本150冊」というタイトルがつけられている。このほうが新しいんだろうな、と感心した。
 三浦展氏は、健啖な読書家である。その点では、例えば田崎英明稲葉振一郎といった人々と同じである。田崎氏や稲葉氏は、学会の事情、論壇界隈の情報に昔から通じていて、いろいろなことを教わった。独自のルートから入手した本の話を伺うのは、非常に勉強になったし、また役にたった。これに対して、三浦氏の場合は、本を味わう味わい方、独自の観察力というか、眼というか、そんなところで大きな刺激を受けた。新しい情報をもらうことももちろん多々あったが、すでに知っているような本を語っても、たいへん楽しい時間を持つことができた。むしろ、同じような本に目をつけていて、話が盛り上がるということも多々あって、例えば国立のガラス玉遊技という喫茶店などで、カレーを食べ、食後のコーヒーを飲んだりしながら、何人かの仲間で話したことを思い出す。

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 若い読者に読まれる「ビジネス書」の中身が変わり始めている。ノウハウやスキルを主題とした今までの売れ筋ビジネス書だけではなく、ライフスタイルをテーマとしたものや、「古典」と呼ばれるような堅めの本が、じわりとロングセラーになっている。
 本書の巻頭を飾るのは、勝間和代さんが「私を進化させた著者」に挙げた三浦展さんとの初対談。この対談の中で、勝間さんはこう語っている。「本当に読んでほしいのは加工食品の本ではなくて、もっと原材料ものなんです」――。
 では、ほんとうに人生に役に立つ「原材料の本、ほんものの本」をご紹介しましょう。マーケティングから少子化問題、格差論まで「今の日本」がわかる三浦展さん厳選の20冊、鎌田浩毅さん、佐藤優さん、田坂広志さんら、35人のプロがテーマ別に選び抜く100冊、『夢をかなえるゾウ』『情報は1冊のノートにまとめなさい』『「超」整理法』『面接の達人』など、大ベストセラーの著者が語る「読者論」……。
 最初から最後まで、1冊丸ごと読み応えたっぷりのブックレビュー。


【目 次】
「進化させた著者」と「進化した読者」の初対談!
三浦展×勝間和代
お手軽本よりも、「原材料」の本を読もう!


special report 1
『夢をかなえるゾウ』『ストレス・フリーの整理術』『情報は1冊のノートにまとめなさい』……
今、読まれる本のキーワードは「成功より成長」 ●久保田正伸


special report 2
エキナカ、郊外、TSUTAYA……腕っこき書店員の奮戦記
この店で売って見せます! ビジネス書 ●三田村蕗子


special report 3
時代を代表するベストセラーの秘密
齋藤孝野口悠紀雄中谷彰宏石ノ森章太郎……
あなたの先輩・上司に影響を与えた著者に訊く ●山川 徹


本は漢方薬である。1日30ページ、1年かけて読むくらいでちょうどいい
三浦展厳選!
脳と心の筋トレ課題図書20 ●三浦 展


考える脳を鍛える本
現代社会の正体を理解するための名著
ほんとうは今、何が起きているかを知るために
自分が何者なのか知りたい若者のために
格差社会について語る前に


35人のプロフェッショナルが選び抜く
世の中が読めるようになる名著100冊
おカネと経済の読み方
田中秀臣/田村正紀/浜辺陽一郎/大竹文雄大西洋平


働き方とスキルの読み方
鎌田浩毅/丸山 学/新保信長/牛窪 恵/神川貴実彦/海馬タカシ


若者の読み方
大久保幸夫オバタカズユキ/岡原正幸/鈴木謙介宇野常寛


リスクの読み方
大橋智樹/高嶋哲夫諏訪裕美子/山本太郎


ニッポンの読み方
五十嵐太郎橋爪紳也/武田 徹/吉岡 忍/樺嶋秀吉/磯田道史山田昌弘


世界の読み方
佐藤 優/田中友義/枝川公一/手嶋龍一


知性の読み方
田坂広志/泉 麻人/渡辺 裕/和田 竜


書名索引
http://www.president.co.jp/book/item/321/7059-9/

 この本に出てくる書物も、マニアックなレアものというカンジのものは少なく、またともかく早く押さえておかなくちゃ、というような筆致でもない。ゆっくりと味わうこと。まあなんというか、海原雄山みたいにコスプレした三浦氏に本の美食倶楽部でおもてなしを受けるというかんじだろうか。
 さらに言えば、さすがにしぶとくマーケティングの専門家しているというか、書店業界にもインパクトのあるような工夫された発言がなされていることも、大きな特徴だと思う。青山ブックセンターだとか、ヴィレッジバンガードだとか、そんなものからはじまって、吉祥寺のロハス古書店まで、いろんな書物の場があって、それが週刊誌と資格本、ノウハウ本などが雑然とならんだ下流書店に蹴散らされていることに、三浦氏は深い悲しみを覚えているはずだ。『構造と力』だとか、ミリオンセラーの村上春樹などが、下流売れなのかどうなのか、わけわかめだが、まあ一つのブームから、なにかがかわるかもしれないし、このタイミングでこういう本が出ることは、ワシはとりあえず下流だからさ、フジテレビ好きだし、デブだし、などと言っているアテクシのような者にも、グッと来るものはあるのである。