テレ朝「警察の血」

 だいぶ前に録画しておいた「警察の血」というドラマをみました。けっこう面白いと思って、全部見たのは、江口洋介の熱血ホイッスルもさることながら、阿藤快の893っぷりにつきるものがあります。なんか昔の極道って、こんなのが多かったよなぁ、よく風呂屋に来ていたよなぁ、とか思ってしまいました。へらへらテンパっていて、妙に説得力があったように思います。この893でスピンオフ禿げしくきぼんぬ、と思わず叫びそうになったくらいです。w これは、必殺仕置き人のような椎名桔平を凌駕する迫力だったように思います。
 親子三代警察一家の宿命とからめたミステリー&サスペンスで、豪華配役と整った脚本、写真館、ホイッスルなどの道具立てによる巧みなメリハリにより、原作の線の細さ、筋立てやオチの不自然さみたいなものもカイゼンされ、いろんな世代の人が昔を思い出しながら、見るにはちょっとよいかも、みたいな娯楽作品にはなっていたように思います。
 うちの父親も復員してきて、左官になりそこねて、給料取り=警官になったクチなわけですが、おぼろげに覚えている当時の街並みや家族の情景などは、なんとなくなつかしいものがありました。うちのまわりの野毛地区は、闇市の街でしたし、またホモバーのたちならぶ場所で、上野界隈とちょっとばかりに多雰囲気があります。(この前も、業者さんが外国から「お稚児さん」強制的に連れてきて、横浜で働かせていて罪に問われたりしていました。私が東宝の怪獣映画などをみた二番館の映画館は、今はモホセン映画でちょっとばかり有名になっているようです)。
 交番勤務で街のお巡りさんをやったうちの親は、交通畑に進み、その後警察学校で教えることになります。そこでの教え子の人たちが、よく家に遊びに来ていたのは記憶に残っています。そのなかには機動隊で浅間山荘に行った人もいますし、鑑識の人、刑事の人、いろいろいます。今度のドラマで、とりわけ思い出されたのは、公安の出世コースを歩みかかった人です。やはり心労が重なって大変なようだと、よく親たちが話していたのを思い出します。
 海猿のあんちゃんがすれっからしになって、強面刑事ばりに、ドスをきかせるようになるのは、昔のへなちょこ伊藤の面影が残っていることが、かえって効果的で、笑ってしまいました。清濁両面を意図的に描くことで、娯楽作品にそれなりの格調をつけようという試みは、それなりに興味深いものがございました。それは一見救いのようにみえた庶民や温情派のキャリアなどについてもそうだし、主人公たちについてもそうだし、描き込んでるぜ、みたいな気迫はさわやかなものがありますね。
 でも、なんか性だとか、宿命だとか、そんなちょっぴり耽美的な紋切り型をあてはめると、すごくよく理解できちゃうような演出が随所に見られて、またちょっとええやろ?みたいなゲージツっぽい映像なんかもところどころにあって、おいおいちょっと安売りしすぎじゃねぇか、と思ったりしましたけど、まあ娯楽作品だし、ギャグのオチをテロップで示すのと同じことかな、と思わないこともなかったっす。それに演じる人たちが、それなりの役者たちだったし、それなりに見せちゃうところが、もうお腹いっぱいの東映お正月映画仕様みたいなかんじで、まあイイジャン、みたいなカンジはしました。
 もしかするとすごいのかもしれないと思ったのは、ゲージツっぽいシーンがあると、オチとして椎名桔平がネックブリーカーでバキッとやっちゃう?やっちゃう?みたいになるところで、しかも安手のホラー映画みたいに脅かしてやらないというんじゃなく、もう期待通りバキッとやるので、スカッとしましたです。