落日のテーマ@「僕たちの失敗」

 渋谷駅のところを歩いていたら、研ナオコが底意地悪く変装したみたいな姑の人が、「おしんを嫁にみせたいの」と凄みのある面相でゆっているどでかい広告がスクランブル交差点のところにあり、なにかと思ったらNHKオンデマンドだった。それならば、みたいのはなんといっても銀河テレビ小説の「僕たちの失敗」で、これは見るっきゃないと思い、調べたらちょっとよくわからないことになっている。TBSの「バラ色の人生」のセピアな映像とかも見たいのだが、そういう見たいものって、もうあんまりみれないのかもしれない。
 荻島真一酒井和歌子の高度に実験的なケコーンのお話で、ヘイトアシュベリーな60年代的な気分や、ウーマンリブだとか、中ピ連だとか、そんな社会風俗を背景にしたものだとばかり思っていたんだが、原作は石川達三と確認してぶっ飛んだ。いろいろなエントリーのなかで、荻島真一のファンだった人のエントリーが実に秀逸だった。引用させていただくことにした。

ドラマ「僕たちの失敗」は契約結婚の話です。
3 年間という期間限定で結婚し、子どもは作らない。
お互いの自由を認め、束縛しない。
そんな契約を結んで結婚生活に入った男女の話でした。


荻島真一酒井和歌子の二人が、その男女を演じていました。
確か、冬のシーンでした。
「どうせ、私とあなたは契約が切れれば他人になるのよね」
というようなセリフを行って、酒井和歌子が飲めないお酒を無理して飲む場面。
彼女は和服を着ていました。
お酒を飲むとき、クッとアゴがあがるでしょ?
で、彼女の白いうなじを見て、彼は彼女を押し倒してしまいます・・・。
(^^;


やがて、彼女は子どもができたことに気付きます。
でも、男は子どもを産むことを認めません。
・・・二人は離婚することを決めます。


彼女は言います。
「あなたと別れて、私は この子を産むわ」
彼は彼女に背を向け、歩き去ります。
坂道を下る男・・・。
それを見送る女・・・。


・・・と、車が急に飛び出してきます。
宙を舞う男!!


何とも哀しいエンディングでした。(;_;)


(これで終わりなの!)と愕然としました。
後日、石川達三の原作本『僕たちの失敗』を購入し、夢中で読んだのですが・・・。


小説の終わりは、男の独白で終わっていました。
  ・・・それでも、僕は死なない。


(へっ!? これで終わりなの?!)
原作も哀しい結末でした。


このドラマの主題歌は、五輪真弓の『落日のテーマ』でした。
この曲を聴くと、あのドラマのエンディングが蘇ってきて、物悲しい気持ちになります。http://pippupgii.blog.so-net.ne.jp/2008-11-11

 私はこのドラマを別居結婚のはなしだと思っていたし、また荻島真一じゃなく森本レオだと思っていた。記憶というのは、曖昧なものだ。というか、私のがひどすぎるのかもしれないが。w まあともかく、ドラマ映像としてはすんげぇエクスペリメンタルだったんじゃないかと思う。
 五輪真弓のこの頃の音楽は、なんともフラットなメロディラインで気の抜けたサイダーのようでもあるんだが、楽器と歌声の音は素晴らしく洗練されていて、夢中になって聴いた。五輪は、その後「恋人よ」をモチーフにエスタブリッシュされていくわけだが、試行錯誤の時代の、「落日のテーマ」「なんて素敵な日」「酒酔い草」「汚れ糸」「夏のおもかげ」「赤毛の犬」といった作品群は、完全に放置プレーになっているなぁ、とあらためて思う。私のネットワークウォークマンには、「なんて素敵な日」「酒酔い草」の2曲が入っている。なぜか「落日のテーマ」だけ、ダウンロードできないのである。まあしかし、レコードはあるんだけど。
それにしても、上記のエントリは実にイイカンジですね。読むだけで、ドラマ映像がよみがえってくるような感じです。「宙を舞う男!!」で、逝ってよし、などとつぶやく気にはなりません。このエントリは、荻島真一の命日を前に書かれたものでした。亡くなったと知り、驚きました。