岩井志麻子と西原理恵子

 ちょっと親が書道展をみるためにひさしぶりに小学校に行くというので、ついていった。今の小学校はオープンスペースになっていると聞いていたが、廊下と教室はあって、別に体育館みたいなところに何クラスもあるわけではなかった。なんかみんなしっかり授業を聴いている。私たちが通っても、大騒ぎしない。昔の私だったら、大騒ぎだっただろう。
 週末に買った「保守系」の週刊誌、月刊誌などをペラペラとめくる。なんと週刊文春にまで「若年派遣の肖像」というグラビアが出ている。たまたま経済がよかった時代に恩恵にあずかれたことが、そうでもなくなった結果恩恵にあずかれなくなった。どうすればよいかいろいろ考える。強者にツケをまわすか、弱者にツケをまわすか、どっちもどっち。じゃあ、環境立国とか考えてみても、結局どこかに弱者をつくり出すしかないんだろうなぁ、とか考えると暗澹たる気持ちになる。これを社会の根本問題として考えてみたいと思って、社会科学を学びはじめたはずが、妙なゲームのなかでアップアップしている。しかし、まあ、ゆっくり考える時間を得られていることは、あまり有り得ない幸福として感謝すべきことなんだろうとは思う。
 岩井志麻子が、週刊文春の「女はそれをガマンできない」というコーナーに寄稿していて、これが親友とおぼしき西原理恵子がガマンならねぇ、というので俄然注目だった。自分の家のソファにはトラバサミが仕込んであって無事に帰れた編集者はいないとか、自分らの結婚を便所虫が飛んできたようなものといいやがったせいで夫のあだ名が便所虫になったとか、十八歳年下のダーは韓国の人なのに「I love JAPAN」のTシャツとか着ているみたいに描くなとか、まあそこそこ面白いことは書いてあるんだが、母親としても、収入もすべて上回りやがって、しかもダメ人間ぶりを描きながらよい母親のイメージを読者に与えやがって、このやろー、みたいな筆致は、ちょっとぬるいぜ岩井、みたいなカンジはしないこともない。
 ムカツクとか言いながら、要するに西原理恵子が「ちむらばかが遊びに来てよっぱらいまくってローゲーバーストアウトしてわけわかめになった」とか、「青木光恵が自分より早く結婚したのはムカツクが、なんか家でフルボッコにされて、傷だらけで来る」とか、そんなのと一緒っぽくしようと思ってできなかっただけかよ、岩井見損なったぜ、みたいに思っていたら、そうではなかった。
 最後の一段落で、激辛炸裂で、芸のあるところを魅せている。週刊文春に載っていた文章の抜粋ですが、一応シモネタなので読み進めるのはご注意下さい。
 「西原はどう見ても悪そうな友人や、西原を利用しているだけの詐欺師みたいな連中さえも愛する。まざまざと器の違いを見せつけてくれるわけですよ!/そんな西原ですが、一つだけ弱点があります。それは非常に陰毛が濃ゆいこと。かつて男から『五月人形鍾馗様のようだ』と言われたそうです。私が勝てるとしたらこれしかありません。/でも毛の濃い女は情も濃いといいますから、ちゃんと辻褄はあっていることになりますね」。最後にほめ殺しだぜ、と嘯いていやがんの。
 しかし、由緒正しき保守系週刊誌にこんなことが書かれているとは思わなかったが、鍾馗様という比喩は鬼笑うよな。イメージが炸裂するし。すごいシモネタなんだし、こんなところで話している場合じゃないんだが、次のページをみつけて、笑った。質問サイトって、かつてのVowより面白いかもしれない。ベストアンサーも、その他のアンサーも、関連質問にも抱腹絶倒でした。やふうのサイトですが、シモネタの嫌いな人は絶対みないでください。何度みても笑えます。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1213415467
 芥川賞で、山崎ナオコーラが賞を取れなかった。たぶんとれないと思っていたけど、まさかベタに「毒が抜けた」と言われるとは思わなかった。テルちゃんは、豊崎由美さんに挑戦するように難しいことを言っていた。難しい部分はともかくとして、最近のナオコーラは、これでメシ食えますみたいな感じに見えないこともないし、もう賞とか別にどうでもいいんじゃないかと思うけど、私的にはなんかわかりやすく毒のないことを書いているようで、すごくわかりにくくなっているんじゃないかなぁ、とすらおもったりもするんだけどね。『人のセックスを笑うな』の描写で、小動物の体温をしっかり観察し、さりげなく書いていることは、私には大きな感動だった。