うつ・不安に効くケータイ式認知療法

 卒業論文で何人かが『アキハバラ発』を使っていて、そのうちのひとりが携帯料金を払って「これで生きながらえることができる」とネットサイトに書き込んだことをピックアプしてきた。青年にとり、携帯式掲示板のMegaviewはまさに「生命線」だったのかもしれない。「どうにでもなればいいこんな世界は」という、ザ・バックホーンの「生命線」の歌い出しをまた思い出した。歌詞は、頬をつけた鉄路の冷たさとそこでドクドクと感じた命の鼓動の温かさ、軋む車輪の音・誰かの悲鳴と「生きていたい」という赤い命という対比的イメージをモチーフにして展開されてゆく。
 なんで携帯サイトになんか、それもMegaviewなんかが「生命線」だったんだろう。そんなものに書き込まなくたって、「いのちの電話」みたいなのもあるだろう、といった人がいる。そんなところにでんわして、つくられたような声で、熱心に勘違いなことを言われたって、癒されることはなにもないよな、などと思う。かつての2ちゃんだとかだと、なにか言えば「逝ってよし」とか言われて、フルボッコになったけど、「逝ってよし」と言う奴の顔がなんとなく浮かんでくることがあり、さらにボケかましたり、喰い付きどころ満点の書き込みをしたりして、「逝ってよし」といってくれる人を探しまわっているのをみたこともある。
 またかつての2ちゃんには、確信犯でナビっているようなのもいた。ボランティアだったのか、物好きだったのかわからないけど、なんかなぁというときに、一言いうようなのがいて、その精度は抜群だったのを思い出す。そう言えば2ちゃんを知ったのは、某掲示板に書いていたら、「君こっちに来てみたら」と社会学掲示板にナビられたことがきっかけだった。それを言ったのは、とあるマイミクではないかと思ったりもしたのだが、それはともかく中堅のあの人もあの人もあの人もあの人もあの人も・・・書き込みをして、スレッドをたてていた、有り得ないころの社会学掲示板をしばし楽しむことができた。今でも、メンヘル、いわゆる毒鬼喪系などにおいては、時々ナビを見出すこともあるし、それなりの書き込みもある。
 今さらそんなあたりまえなことを言ってもしょうがないといえばしょうがないのだが、何を言いたいかといえば、ケータイサイトでうつ不安に効くというのがあるというのを、産経新聞でみたからだ。要するに携帯で書き込むことで認知療法ができるというわけだ。やっているのは皇太子妃の主治医でもある先生で、その先生がケータイ専門のサイトにしたというのは、なかなかすごいことだと思う。
http://www.cbtjp.com/

うつ・不安に効く~7つのステップ 気持ちを軽くする携帯式認知療法

うつ・不安に効く~7つのステップ 気持ちを軽くする携帯式認知療法

【著者に聞きたい】大野裕さん (1/2ページ)
2008.11.30 08:38
□『うつ・不安に効く7つのステップ ケータイ式認知療法
 ■考え方を変えて気分転換
 「いつも楽しく前向きに生きていけたらいいのにと考えることがあります。でも、それは無理な話です」
 ちょっと落ち込んだり、不安だ、悲しいというとき、どうしたらいいのだろう。心療内科や精神科にかかるほどではない、けれどもなかなか気分が晴れない…そんな気分を整理する知恵があるという。
 「辛いとき頭に浮かぶ考えは、自分の考え方の特徴を一番よく表している。それを見つめ直し、考えをしなやかにしていくのが認知療法です」
 著者は精神医療の現場で注目される認知療法の第一人者で、国際学会設立時からの会員。皇太子妃雅子さまの主治医としても知られる。
 読者は鉛筆を片手に読み進める。考え方を切り替える第1章は「何が起こりましたか」「どんな気持ちでしたか」などの問いに答えながら辛いときの考えを書き出す。さらに、そう考える根拠や反証など、7つのステップを踏みながら“点検”する。思い込んでいたり、深読みしすぎたり。気分が晴れた体験を積み重ね、緊張をほぐし、最終的には考え方のクセを根本から変えるのが目標で、薬物療法と同じ効果があるという。
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/081130/bks0811300841000-n1.htm
 つづるのは紙でもいいが、手軽に書き込める携帯サイト(うつ・不安に効く.com)も同時に開設した。本書やサイト活用は治療ではないので、受診機会を逃さないよう鬱病(うつびょう)チェック(QIDS−J)も収録、受診時は書き込んだものを持参すれば症状を正確に伝えられる。
 気分が晴れない原因は、他者だったり、変えられないことだったり。気分転換の技術を求めて、サイト開設初日の19日、登録者は1000人を超えた。世界初の試みで、本書はガイドブックにもなる。
 「『さびしい』という言葉でインターネット検索する方が多いと聞きました。この療法に出合い、自分の心に向き合ってもらえたらうれしい」(大和書房・1260円)
(牛田久美)
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/081130/bks0811300841000-n2.htm

 私も若い頃は非常に不安症状がキツク、パニックを起こして何度も病院にかけこんだくらいだ。まだ20代だったのに血圧を測ると200をはるかにこえていたこともあり、大変な興奮だったことがわかる。病院もあったし、学生たちとわいわいやっていたこともあるし、孤立はしていなかったので、不安をとることでだんだん治っていった。不安をとるクスリは幸いすごく効いた。他方、自律訓練みたいなのは、対症的には一定の効果があったが、自分に依頼心があったので、劇的な効果はなかった。依頼心を制御できたことで、治ったと思うし、距離をとって接してくれた同僚の先生方には感謝している。
 一点の曇りもない快晴みたいな状態をあきらめ、豪雨も、こぬか雨も、曇り空も、そして雨上がりもイイカンジみたいなイメージを得たことで、一つのきっかけを得た。自分の中の薄汚いものに寛容になることも覚えた。そうじゃないと、真っ黒を自罰している厳しさみたいなかたちで、真っ白な自分を温存し、結局は自分にだけは砂糖のように甘いアホなことになる。
 今は軽度で病院に駆け込めば高いお金をとられるし、わいわいやるような友だちもあまりいない時代だ。まあただ、わいわいの場所はネット上にあるし、お金を出せばカウンセラーに話を聞いてもらうこともできる。「『さびしい』という言葉でインターネット検索する方が多いと聞きました。この療法に出合い、自分の心に向き合ってもらえたらうれしい」というのは、恐れ入谷の営業文句だとも思ったが、あざといまでにツボをついている結び方だと思う。
 ちなみに、これをみて「さびしい」で検索してみようと思った人には、宮台真司『14歳からの社会学』は、かなりのおすすめである。そして、もうひとつ、『生と死の現在』という本に、後輩の薄井明が書いている論考も読んでみて欲しいと思う。