科学研究費申請書類づくり

 科学研究費申請〆切りが近づいていて、書類づくりに追われた。そろそろみんな若者論も飽きてきて、ほとぼりも冷めたんじゃないかと思うので、細々と再開してみようかと思い、申請してみることにした。地方都市や、さらに過疎っているようなところで、「問いを育てる」(佐藤郁哉)調査をしてみたいと思う。もちろん泥臭い脚で稼ぐようなことしかできないのだが。
 今年から基盤研究なども電子申請が可能になった。税金の電子申請と同じで、枠に必要事項を入力して、添付ファイルで計画書類を付けて、アップロードすれば完了。形式的なミスは、すべてエラーとなるので、その場で細かく直すことができる。事務の人たちの負担もそれなりに軽減されるだろうし、申請者の負担も少なくなる。
 昔は、切ったり貼ったりマジックで塗ったり大変だった。類別を色分けしているからで、若手の奨励研究は紫だったので、それ以外に使い道もない紫色のマジックをそれ1回のために買ったりした。両面コピーもめんどくさかったし。糊づけはさらにめんどくさかった。今はそういうことは一切必要ない。また不正防止ということもあるのだろうが、発注や帳簿などの事務はすべてやってもらえる。私のような書類整理が悪いものには、ほんとうに助かる。
 成果は論文にしたり本にしたりしたのだが、科学研究費にも出版助成というのもあることを最近知った(情けないことに馬路ホントなのよ!)。これもらえば、あまり読者の顔を思い浮かべたりせず、一部の専門家だけに向けて書きたいことを存分に書くことができるじゃないか。
 しかし、最近はどれくらい科研がとれたかはけっこう大学の予算にも関わっているようで、大学によっては研究棟に「みんな科研に応募しましょう!!」などとポスターが貼ってあるらしい。うちの大学はそういうことはしていないが、事実説明が簡単になされたくらいのことはあったように記憶している。
 申請書類を書いていて困るのは、大学生でいうところの四月病みたいな状態になることだ。四月病というのは、四月にむくむくと向上心がマルティプライズして、今年は3カ国語マスターとか、できもしない講義登録して、泣きそうになる病気だ。教師が3月頃新年度の講義を構想するときも同じような状態になる。私も何年に一度くらいだが、1年分のノートを3月につくってしまったりする。もちろん連休明けにはいやになってお蔵入りになるのだが。
 で、科研費四月病というのはなにかというと、というかこの場合は十月病というべきなのかな。まあともかくそれは、あれもやるこれもやると、妄想が膨らんでしまうことだ。気宇壮大幕天席地抜山蓋世な気恥ずかしくなるような申請書ができる。そうなってしまうと、内容を削ってもなかなかいいものにするには時間がかかる。そして結果はかんばしくなかった。逆に、昔々、申請〆切りを忘れていたようなときに、殴り書きの手書きで、ものすごい簡略な構想の要点だけを書いたような申請書を書いたら、交付されたことがある。
 大学教師になってしばらくした頃だったと思うが、結果の公表というのがはじまった。私はジツはこれを1回も申請したことがない。もらえるかどうかが問題で、もらえなかったときにどのくらい惜しかったかを知りたいとは思わない。もらえたときにどこがよかったかをほめてもらいたいとも思わない。やりたい研究を率直に書いて、もらえなければ仕方がない。でも、研究構想や計画について、内容に踏み込んだコメントがもらえるとしたら、見てみたいと思わないことはない。