世界が涙した「殺人事件」

 最初は、さめざめと笑っていたのである。まいみくのいさむし経由のネタにである。すでに書いたことだが、今一度復習しておこう。「オリエント工業かなんかしらないけど、伊豆ダッチワイフ殺人事件には笑いましたよ。『人形には“暴行”の跡もはっきり残っており、署は遺棄の動機を、さんざん使った揚げ句、「恥ずかしくて山に捨てた身勝手な犯行」』。ほとんど事件がないところらしい、というのも、なんか牧歌的なかんじがしますよね。さんざんつかうんじゃねぇよとか、暴行ってなんだよとか、反芻するともう笑いが止まりません。続いて、どこかの山村で第二の阿部定事件、すててあったのは精巧なディルドだったとか、第二のさがーくん事件、すててあったのはなんちゃらほおるなんてこともありえるでしょうかねぇ、とか、馬鹿話のネタは尽きないものがある」。しかしである。篤実な犯人が、自首してきちゃったのである。その記事を、いさむしがふたたび紹介してくださった。

ダッチワイフ遺棄犯の素顔…妻死別で“同居”数年

 静岡県伊豆市の山林で寝袋にくるまれたダッチワイフが見つかり、遺体と早とちりした県警が一時、死体遺棄事件として捜査に乗り出す騒ぎとなったが、県警大仁署は16日、廃棄物処理法違反の疑いで、この人形を捨てた無職の男性(60)を書類送検した。


 調べによると、男性は先月21日、身長170センチ、体重50キロの女性型の人形を自宅から車で運び、投棄した疑い。人形が精巧だったことから、県警では死体遺棄事件として捜査に着手、検視の段階で人形と判明した。報道で騒ぎを知った男性が今月6日、同署に出頭した。


 関係者によると、男性は数年前に妻と死別して以来、人形をパートナーとして暮らしてきた。長く一緒に過ごしたが、子どもとの同居が決まったことと心臓への負担を考慮し、処分を決めたという。


 「長年連れ添った人形だから情も移ったようだ。バラバラにしてもかわいそうだし、処理に困って不法投棄に及んだ」(捜査幹部)


 報道を見て、「大変なことをした」と悩んだ末の“自首”だったという。


ZAKZAK 2008/09/16
http://www.zakzak.co.jp/top/200809/t2008090205_all.html

まず、「関係者によると、男性は数年前に妻と死別して以来、人形をパートナーとして暮らしてきた」というのが、目にとまった。そして、次に「長く一緒に過ごしたが、子どもとの同居が決まったことと心臓への負担を考慮し、処分を決めたという」と書いてある。そして、「バラバラにしてもかわいそうだし」。そして、前回の報道における文言を思い出した。「さんざん使った揚げ句」。そうか、さんざん使ったんだな。心臓に負担がかかるほど。長く長くすごして。毎夜毎夜の夜とぎや人間の表情のイメージが炸裂した。そして、犯人は篤実に自首したという。正直言おう。私はめったに泣かないし、泣くことは感情の失禁だと信じて疑わないし、泣くのをウリにするような人間は基本的には信用しないことにしているつもりだが、これには泣いた。こういうのは高いんだぞ。死体にまちがえられるようなものは、鬼のように高い。↓こんなパーツでも、こんなに高いんだから。これは別のまいみくに教わったネタ。
http://www.hpsart.net/mask_shop_page/mask_shop_main.html
これはこういう風につかうらしいのだが。
http://www.hpsart.net/download_page/real_face/dlrf-02/index.html
 それはともかくだ。不法投棄はいけないに決まっている。世間を騒がせたのだし、警察の人もなにもしないわけにはいかなかったはずだし、送検は妥当だろう。しかし、私はこのぢいさまのリビドーに一種の崇高さを感じる。サブカルチャーなんてものを研究するのは、こういうことを考えるためだったのだという初心を思い出した。思うんだが、これはちゃんと業者も責任を持つべきことなんじゃないかと思う。たぶんオリエント工業などならば、アフターケアは万全なんじゃないかと思うが、精巧なものをつくったら、ご葬儀サービスくらいはあってもよいのではないかと思う。まあしかし、もっと捨てにくいものはいくらでもあるわな。