デスメイク

昼間は仕事をして、あとお客さんとお話、それからちょっとパチンコ台に玉を流して、んでもって5000メートル泳いで帰宅。デスメイクという番組をしていた。コンバットがないので、つまらん。デスメイクというのは、女の人たちがメイクしていて、もっともやばいやつを投票で決めて、そのデスメイクを、一流のメイクアップアーティストが、ビシッと直すというもの。

BSフジで話題騒然だった、メイクアップアーティストのAYUMO率いる「デスメイク」が遂に地上波フジテレビに初登場!!仲間たちから間違えたメイク=『デスメイク』をしていると名指しされた女性達を強制連行!その女性の骨格&顔相に適したメイクを行い、別人に生まれ変わらせる!!世の女性達必見の新感覚メイク&ビューティーバラエティー!!
http://wwwz.fujitv.co.jp/b_hp/0324death/index.html

 連行する時に、三浦さんの弁護士というか、マトリックスの悪役みたいなのが出てきて、連れて行くので、いじりまくりの番組かと思ったら、メイクに関してはけっこうガチであることがわかる。けっして、チャーリーズカマエンジェルズ@ワールドダウンタウンみたいなのとはちがうし、いじられた人もタンブラブラ君のようにミゼラブルなことにはならず、生まれ変わって、投票した連中からケジメをとるという趣向なのだが、みんなすげぇ、まじやべーではなく、「かわいくない」とか、フルボッコで、けっこう面白かった。
 メイクのテクニックを見せつけるという面もあるし、ビフォアアフターみたいなもののパロディになっている面もあるんだろうが、人間の意地悪な面をかいま見れるところが、なかなか皮肉で面白い。
 人は意地悪だし、それほど自分に関心を持ってくれるわけもないし、基本的には人の不幸は蜜の味だし、みたいに思っていた方が、世の中少しだけ生きやすくなることもたしかだと思う。人を操作しようとするひとのなかで、甘えたり、すねたり、逆らってみたり、困らせたりという人がいて、最近ではガキだけではなく、いい大人でそういう人が増えているような気もするのだが、普通はそういうことをしても無視されるのではないだろうか。
 なかには人の意地悪な心に訴えるという操作法を運用する人もいる。たとえばゼミの幹事やサークルの部長を押しつけられそうになったとき、ちょっとやりたそうな顔をする。口では逆のことを言う。これだけで、たぶんやらなくてすむことが多いと思う。社会学科ではコース分けがある。あまり社会学コースに来られると困る。もう一つのコースをできるだけ増やしたい。学生は質問する。「どっちが就職がいいですか?」。ちょっと悔しそうな顔をしながら言う。「もう一つのコースがいいという人もいるが、変わらないよ。実質は」。これで相当変化する。
 人の欠点を知りたいとき、というネタはよく知られているだろう。その人の友達に「あいつの欠点はなに?」と聞くのはあまりにベタだ。じゃあどうするか?その人の友達の前で、ほめるんだよ。「あいつなかなかいいじゃんか」みたいに。すると、友達は、恐ろしいまでに的確にその人の欠点を指摘することが多い。そういう話。
 だからデスメイクは皮肉なのだ。人は恐ろしいまでに顔の欠点などを把握している。某松井選手噂あった有名役者子供女優についてゼミ生が語っていたので、面白いから「なかなか美しい人だよね」とゆったら、「でも頬骨がね」と指摘した。鬼だと思った。デスメイクはそういう悪意のまなざしが人に注がれ、それが完璧に矯正される。それに対して、アーティストが鬼パーフェクトなメイキャップをする。それにコメントをするアフタートーク。実に興味深い。興味深いが、悪意のゲームというような面があざといくらいグリッと出ていたら、もっと私的には面白かったが。
 かつて、『沙粧妙子-最後の事件-』というドラマがあった。「人間と言うものがいる限りこの世界から悪意が消滅することはあり得ない。そして悪意は目に見えないものとは限らない。」という名調子が、鬼ハアトだった。『ケイゾク』よりも熱心に見たかもしれない。打ち切りになった中森明菜の『ボーダー』のほうがよかったけど(笑)。それはともかく、悪意ものというのは、今はもうはやらないのかね。どっちかというと、清潔、思いやり、猫なで声系ばっかりの気もするし。
 しかし、学生の「いいですかぁ??」という問いには笑うしかない。