卒論面接前夜

 いよいよ来週は卒論面接だ。ということで、何人かの学生から相談の予約したい旨のメールがあった。なんでそんなに安心が得たいのか、わからない。緊張して、どきどきして、テンション上がりまくったエマージェンシー状況ほど楽しいものはないじゃないか?何年か前に、風邪で病院によって今タクシーで向かっています、などという電話連絡があったときなんかは、心配ではあったが、刻々と状況報告させたりして、いささかはしゃぎすぎ、「楽しんでませんか」などと言われてしまった。こういう緊急状況ヲタな心境になったのは、神経症を克服してからというわけでもない。前からハイテンションのミッション系の映画とか好きだったし、フォーサイスものとかは残らずみているし。
 まあしかし、どうしようどうしようと大騒ぎするやつは、存外図太かったりするのである。面接のアドバイスなんて、最終試験なんだから、質問内容教えたら、上手くないのだけど、だいたいそんな質問はしに来ない。こういう時してくるのはたとえばこういう質問だ。「やっぱゴフマンのところは自信ないんですけど、原典みんな読み返しておいたほうがよいですかね」。てめぇ、いつ「原典みんな」読んだんだよ、とツッコミを入れたくなるよな。社会学事典みながら、『出会い』一冊と、あと、ヴァンカンなんかをはんちくに読んだだけぢゃね?とか言いたくもなるのだが、ご本人は全部読んだつもりになっている。(これは今年の話ではないですよ。今年はゴフマンを使ったのは一人だけだが、その人はまったく傾向が違うから。今年はリースマンが多かった)。
 この種の質問は、卒論に限らない。通常の授業でもテストの前になると、「自信ないんですけど、教科書と参考文献全部読んでおけば大丈夫ですか?」とかゆう質問がある。こういう質問をする人はベタにそう思っているふしがある。というか、こういうやる気を煙に巻いている自分は、とても悪い人なんじゃないかとか思ってしまうのであった。『出会い』一冊だって、ちゃんと読んでるんだから、オレよりたいしたもんだよなとか、思ってしまう。
 まあこういうまじめな人は、ちょっと意地悪をしたくならないこともないよな。昔、話したことを全部ノートしているやつがいて、すごいと思ったが、ついつい癖が出て、くだらない話を早口でしたら、ムキになってノートをとっていて、そのあと「というのは冗談で」みたいに言ったら、呆然としていたのを思い出す。「こんなことをノートするのはアホ」とか言わなくてよかったと反省した。で、卒論面接だが、前に「スーツ着てくるの忘れるなよな」と言ったら着てきたというのが、ちょっとした自慢のネタであるが、最近の子供さんたちは馬路爆(´・ω・`)ショボーンになる可能性もあるので、できない。
 みんなほんとうにまじめに卒論のことを考えているし、今年の四年は平均的には今までにない高水準だと私は思っている。そして、今の学生(と言うかうちの学生なのかもしれないが)は、コツコツやる気はある。小刻みに達成目標を明示し、少しずつ匍匐前進させれば、すごくいいものを書く気はする。ただ、そういうことをしなくても、みんな憑依したように夢中に卒論に向かいはじめる時が来る。そういうときは、こちらもノリノリで楽しい。今しばらく後者の路線を考えてみたいと思っている。
 今日は会議だった。同僚の先生に、「この前、リアル雨宮処凛みちゃったんですよぉ〜☆」と言われ、「誰すか、それ??」と言ったら、鳩が豆鉄砲みたいな表情になって「誰って、あのサブカルの・・・」、「私そういうのあんまり知らないんですよぉ〜」「ッテ言ったって、先生はサブカルチャーだし」などと話していたら、妙なこと聞いちゃってスンマソンでしたみたいな表情をされていて、こちらのほうが申し訳なかった。
 一事が万事、あらためて自分はロフトプラスワン的なものとは無縁な人生を生きてきたなぁと思う。新宿のジャズ喫茶から、浅草のヌード劇場に移動したビートたけしの軌跡に、自分の知識のなさを重ねて正当化しようと思った時代もあったが、自分がこだわってきたのは、中津市のハモ音頭だとか、旧川上町のマンガねぶただとか、モンパチは写真が一枚だとか、玉造温泉浜田真理子が歌っていたスナックだとか、そういうことだし、あるいは地方大学の学食の風景だとか、横浜の歓楽街だとかゆうものなんだということは、そんな風な正当化することもなく、じっくりと見すえてゆけばいいのではないかと思っている。
 今日は小平でなつかしい生姜焼きを食べ、歩いて帰ってこようと思ったが、あいにくの天気で、会議も長びき、帰ってすぐ泳ぎに行く。4000メートル泳。今日はすいていたので、ノンストップで泳ぎ切った。時間的には、4500泳げるくらいの時間はあったはずなのだが、ちょっと苦しかった。少し疲れているのかもしれない。2時間でコンスタントに5000メートル泳げるようにというのが、現在の目標だ。