一人の最期

 本日の主題は、エンバーミング予約きぼんぬ、らしい。はやくもネタ切れか?といいたくなるような、と思ったら、予約という主題が掘り下げられて、「一人の最期」というような主題として提示されている。そして、人間のエンバーミングとブリザーブドフラワー=花のエンバーミングが対比され、その二つが装置となって、ご遺体が浮かび上がるようになっている作り方は、原作の力量が並々ならないものであるのを予感させるし、またドラマとしても、いろいろなアラを吹き飛ばし、見るものに一つの納得を与える。演技と演出に、あまりにもベタな紋切り型とも思えるもの(歌丸師匠でもばらしたくなる木久蔵師匠のネタみたいなというか)があるのは、一つの作意なのか、それともアラなのかは直ちにはわからないけどね。

 ある夜、エンバーマーの心十郎に、葬儀屋の恋路から仕事の依頼が入った。心十郎は、急いで作業場の教会へ向うが、遺体がなく不審に思っていた。その時、部屋に何者かの気配を感じた彼は、恋路だと思い声を掛ける。ところが、その人物は女医の小雪だった。
どうやら小雪は、恋路の口を割らせて“謎のエンバーマー”が心十郎だということを知り、乗り込んできたのだ。人間は死んだら終わりと考える彼女は、遺体に腐敗防止や殺菌処置を施して生前の姿に修復するエンバーミングは必要ないと考えていた。そのため、心十郎がエンバーミングをすることに腹を立て「病院から追い出す」と宣言し、その場を後にする。小雪と対立を深める心十郎・・・。そんな中、心十郎にエンバーミングの生前予約が入る。後日、心十郎は、依頼主・白川澄子の自宅を訪れた。そして、同じく澄子に仕事の依頼を受けている、死装束デザイナーの麗明宏と出会う。2人は、澄子が末期ガンで、余命一ヶ月と知る。独身で身寄りのいない彼女は、自分の最期を一番輝いていた頃の姿で迎えたいと切望し、エンバーミングを依頼していたのだ・・・
http://www.tv-tokyo.co.jp/shigeshoshi/03.html

 「暴言セリフ」で掲示板で話題騒然になっている国生のブートキャンプからスタート。白川さん(中村久美)「踊ってられていいわね」。って、毎回ゲストで出る椰子、あいかわらず濃いよな。これで、さらに、どんだけーがでるんでしょ。配役だけでも、相当狙っているよな、というカンジはするわけだよね。まあ、ちょっぴりマイナー趣味のうんちく、エッジぴんこだち、ということ以外でも、こんなのもいるんだけど、みたいなことはあるんだろうね。間宮軽薄に登場するも、怖い白川さんけっこう気に入る。心眼をもってしてみれば、間宮はちゃらおにあらずというわけでしょうか。あるいは、ちゃらおが好きなんだろうかとか。
 掲示板での批判を踏まえたかのように、間宮と国生がはげしいやりとり。「とんだ天使がお出ましだ」には笑ったけど、笑う間ものなく、「ゴミ同然」というセリフをめぐるヒューマンな熱い討論。そのあと国生は院長とも熱い討論。討論のあと、院長にモーションかける国生。怖い女医先生も恋には奥手、って、さ、すげぇモンキリだけど、「大盛りの豚骨ショールラーメン」と国生噛んだ力業の演技で爆、ふっとんだ。これが計算しつくされたものだったらすげぇよな。
 そして、ゴミ発言も、それなりに計算されたモンだったんだろうが、それにしてもシビアな意見が続いたものだ。忍成修吾扮する葬儀屋に「ちゃらおが、仕事のあとに人肌きぼんぬでちゃらちゃらしているんぢゃねぇよ」みたいに叱られるエンバーマー。ようやくここで主題提示。エンバーミング生前予約。
 で、突然、どんだけー登場。後ろ姿にナンパしてびびる間宮。そのあと、白川さんから依頼。Ikkoは服のデザイナーみたいな役?と思ったら、死に装束デザイナーらしい。そういう専門家もおるんだな。そりゃあいるんだろうね。うちのおやぢの兄みたいに、白装束で、額に△の布、杖もって、みたいなのばっかりな時代じゃないだろうし。白川さんがエンバーマーに「お葬式に来てくれる?誰も来てくれないから・・・」。葬儀屋の観察眼がすごいものがる。ブリザーブドフラワー=枯れない薔薇へのうんちく等々。間宮鬼キメ体言止めセリフ。「枯れない薔薇」。まあ、あり、だとは思うけどね。なぜかと言えば、このへんのベタなセリフで、「エンバーミング予約」「一人の最期」みたいな主題が、丹念に深められているからだ。
 と思ったら、Ikkoの鬼破調な演技がそれに続く。「白川さんあかるいじゃん。だいじょぶじゃね?」みたいなちゃらおたちの不見識を斬る。ここで怒るオカマ、怒啖呵。て、てめーらなと説教されるエンバーマーたち。あくまで気どった演出ではなく、ベタとも言える展開に考えさせられた。のあと、白川さんのベタな回想。「誰の思い出にも残らない・・・」。で、ブリザーブドフラワーが存在証明になるわけだけど。このへんの展開を見ると、原作マンガの作品性と、マンガの表現力というものに驚嘆せざるをえない。なんか忍者ハットリ君の実写とアニメくらいの差があるような、というか。
 合コンのあと「天使が呼んでいる」で死を暗示、変身、であとはいつもの展開。ナレーション。・・・作業のシーンは、非常に単純化され省略されている。掲示板の指摘どおり。そして、誰も来ない葬式。オワタね、と忍成修吾たちは撤収の準備。と、あとから客が来る。まず一人入ってきて、それから多くの人が。誰も来ないのと、ドラマとしてはどっちがいいんだろうか?? 花のエンバーミングというオチがようやく提示された。エンバーミングは人の心を温める。でもってオレの心を冷やす。・・・これで来週へ続く。