友枝敏雄・山田真茂留編『Do!ソシオロジー』

 今日は成城大学の非常勤だが、卒業生が大学に来るというので昼頃待機。交際十年あまりでゴールインということで、久々の明るい話題でした。しばし歓談し、過去のゼミ勇猛伝説などを語っていたら、突然猛者のなかでも超弩級な椰子がとつぜん「ちーす」ときたので、「また会社辞めたのか?」と聞いたら、たまたま休みだったらしい。守衛さんに呼び止められなかったことで、学生と思われたと喜々としていたが、絶対そうではないと思う。二人とも10年以上前の学生となる。あの頃はまだ三十代だったし、けっこうゼミの企画も多かった。時代は変わり、勉強以外のことはシャットアウトすべき時代になっているように思われる。成城から先ほど帰り、郵便受けをみたら、山田真茂留さんが新しいテキストブックを送ってくださっていた。

Do!ソシオロジー―現代日本を社会学で診る (有斐閣アルマ)

Do!ソシオロジー―現代日本を社会学で診る (有斐閣アルマ)

内容

 今,ここに起きているさまざまな現象を,社会学はどのようにとらえ,語りうるのか。格差問題やリスク社会化など21世紀の日本の現実をクリアに浮かび上がらせ,第一線で活躍するトップランナー社会学の世界へ誘う「いちばんやさしい」現代社会論入門。

目次

 序 章 社会学の方法――社会を科学する=友枝敏雄
第1部 現代社会のアスペクト
 第1章 孤人化する社会と親密性の罠――今日的な関係性の諸問題=山田真茂留
 第2章 学校から職業へ――〈生きにくさ〉の正体を探る=苅谷剛彦
 第3章 非行文化を喪失した少年犯罪――「優しい関係」を生きる現代の若者たち=土井隆義
 第4章 地域社会の崩壊と再生の模索――豊かな社会のかなた=藤田弘夫
 第5章 豊かな社会の格差と不平等――社会階層を考える=吉川 徹
 第6章 社会変動と文化現象――「出版不況」を事例として=佐藤郁哉
第2部 21世紀社会のグランドデザイン
 第7章 ジェンダーフリーのゆくえ=江原由美子
 第8章 ネオリベラリズム福祉国家――グローバル化時代の生活保障=武川正吾
 第9章 リスク社会の克服=山田昌弘
 第10章 21世紀社会と人類の幸福――グローバル化の悪夢を超えて=高坂健次
 第11章 グローバル化と文明の共生――ワールド・エディターという役割=今田高俊
http://www.yuhikaku.co.jp/bookhtml/comesoon/00022.html

 たとえば、『社会学のエッセンス』『社会学に何ができるか』などの総論的な本、あるいはパラドックス、事始め、浅野本、お笑い森下事典、古いところでは姫岡本などで、社会学の基本的な考え方を学んでもらったあと、あるいはそれと平行して読んでもらうような各論的な書物について、もっと選択肢がたくさんあるといいなぁと思っていた。いいものはあっても、「中流化の時代」などと書いてあったりすると、さすがに選択に躊躇する。そんななかで、この本が出たことは本当にありがたい。
 1人で書いたものや、数人で書いたものの方が面白い場合が多いなどという意見もあるわけだけれども、これほどのドリームチームが書いちゃったとなるとそんなうんちくも消し飛んでしまうだろう。本書の特色は、骨太でオーソドックスな枠組から、現代社会の重要な断面を的確に示していることであろうが、そのなかで臆することなくデータを多用し、そして参考文献をたくさん親切にあげていることは、ユーザーとしては大変ありがたい。臆することなくと言ったのは、このような書き方をすると言うことは、改訂せずに長く使ってもらうというノイズに惑わされることなく、今ここでわかりやすく書けることに専心しているということだからだ。臆すると、いろいろな自粛が行われ、本は読みにくくなる。 一年生のゼミで後半何をやるか迷っていたが、定常化社会論ではなく、これを使ってみようかとも思っている。また前半の数章は、社会心理の社会学のゼミでも読ませたいところである。心理学ではなく、社会心理を社会学すること、それを社会学科のオーソドックスな枠組と結びつけることの意味をわかってもらうことで、卒論面接で「これのどこが社会学なの」という質問にも答えやすくなるだろう。そういう意味で、四年生の人たちにもお勧めである。