変ホ長調

 年賀状のはがきがようやく刷り上がってきた。学生さん、元学生さん以外はなるべく後出ししないように気をつけている、というのはまったくウソで、名簿の整理が悪いのと、出すと満足しちゃってろくにみないのといろいろあり、また忌中はがきなどの類の整理も悪く、毎年ひっちゃかめっちゃかなのである。正月に寒中見舞いが嵐のようにくるし、宛先不明で戻ってきまくるし、どうしようもないのである。で、今年はそれなりに名簿を整理したのだが、それでもまだまだ漏れはあるだろう。失礼があったらお詫びいたします。ともかく今年は忌中はがきだけは、来たものをずっとポストにためておいた。完璧なファイリングだったはずだが、どうだろう。教え子の人たちは、十年くらい来たら、先出しするようにします。最近のレイアウトは決まっていて、添え書きしなくてもすむくらいの近況報告を詳細に書き、必要な場合のみ一言添え書きです。何度やめようかと思ったかわかりませんが、やはりこれだけは小学校一年生から続けてきたことなのでやめられません。
 M-1グランプリのビデオをとりあえずざっと見ました。サッカー国際線と有象無象ドラマくらいに違う、関西と関東の視聴率の差をみてもわかるように、やっぱりこれは関西の番組なんだなぁと思うし、いろいろな枠組やスタイルや間合いのようなものを「自己確認」できる関西の人とか、あるいは非常に漫才などに詳しい人とかと、意味ポカーンな私たちでは、ぜんぜん笑えかたが違うんだろうなぁと思う。これはちがうからどうのこうのというのではなく、わかればもっと楽しめるんだろうなということである。見慣れていないだけのことかもしれない。もっとも、メッセンジャー黒田はかなり笑えるのだから、関西関東というよりは、好みの問題かもしれない。
 正直一番印象に残ったのは、変ホ長調が終わってコメント求められたしんすけが「これはボークやで」といった一言と言っても過言ではない。というか、このユニットの「メンバーだんだん減ってるし」「橋田先生自分評価が高い」といったネタの繰り出し方について言えば、かなり笑った。笑ったというか、女性ファンが次長課長の井上がどうたらこーたらとか、もはやイケメン殿堂入りしたチュートリアルのイケメンがどーたらこーたらとか、そういうのと同じ意味において、変ホ長調がストライクゾーンど真ん中ということもあるし、そういう意味において、今回は他はどーでもよかったということは、まあ否定できない。これに比べれば、ハリセンボン竹山も他のこでぶ芸人もかすみたいなもんだと大見得を切ってみたくならないと言ったらうそになるだろう。単刀直入にいえば、ヴィジュアル的に鬼ハアトだということである。
 カウスが「太極拳」といった意味もわかるし、年輪を重ねた名人芸の枯れた味わいが、ほとんど練習していないようなへなへなな語りのなかにあるというような意味合いもわかる気がする。白州正子が、数歳の子供が舞う能の話を書いていて、そこによちよち歩きながらも、いかにも楽しげな舞があり、そこに能の神髄はあるのかもしれないということを言っている。それに近いものを感じたりもした。まあちょっとは違うかな。天然なのか、企みなのか。審査員もポカーンだったみたいだ。最初は、なんじゃこりゃ、こんなんでよくここまで残ったもんだと思わせておいて、だんだん型にはめてゆく。審査員がいろいろ吐かせようと揺さぶりかけても、ぷるぷるぷると首を振り、さりげないおばちゃんトークでくぐりぬけ、ずるそうな顔一つみせないのは、アンタッチャブル山崎のお母さんをはじめてみたときともまた違うえもいわれぬものがございますね。
 決勝までこのユニットがなぜ残ったのか。このような「切り口」がなんで今ここで出てきたのだろうか。そしてこの人たちは素人でなにをしたいのか。わけわかんねぇところが、非常に興味がひかれるものがありました。素人にも門戸を開いて、アマプロオープン戦にするということなんだろうか。どんどこどんも、さんまちゃんも、みんな自分は高校時代が一番面白かったと言っているからね。
 各種ブログをみていて一番笑ったのは、裏番組で一番視聴率が高かったのが、功名が辻でもナイナイでもなく、マグロだったという話。映画にもなるみたいだけど、人生かけてマグロを捕るみたいな番組をずっとやっている理由がまったくわけわかめだ。さんまちゃんの番組に出たマグロの神様山田重太郎というのはかなり面白かったし、釣り師のものまねも面白いし、その延長線上で、マグロをあげるために貧乏な漁師がソナー付きの船を買うみたいな話だとか、人情俗情をてらいもなくむき出しにして、行くぜ男のマグロ漁と言う気合いは、エリが五十センチくらいで、裾幅が1メートルくらいありそうな学ランで、気合い入れまくりのマンガみたいなところもああり、たしかに笑えるけど、ここまで根強くマグロをやるのはなんなんだろうか?w