めだか

 半月ほど前から「めだか」というドラマを少しずつ見てきた。などといったら、とある旧知にやはり隠れミムラリアンですかなどと言われ、そーいや笑顔や髪型などが似てないこともないかなとは思ったのだが、それだったら私だって鼻はジャッキー・チェンに似ていると言われたこともあるし、などと思いつつも、ともあれ、ミムラだからみたというのは、深層心理ではあったのかもしれないが、それ以上の意味はない。誰に似ているかについては、質問禁止だぜ。わははのは。どんなドラマかというとだ、フジテレビのサイトには次のようにある。

寿退社を夢見る平凡なOLだったヒロイン・目黒たか子、通称"めだか"が、リストラをきっかけに定時制高校の教師に転身。初めは大してやる気もなく、適当にこなしていけばいいや・・・くらいに思っていためだかだったが、やってみたらこれが結構大変。落ちこぼれ学生からサラリーマン、自営業、キャバクラ嬢と、生徒たちはクセ者揃い。そのうえ半数は自分より年上だし、小学校時代の同級生までいて気まずい雰囲気。昼夜逆転の生活で合コンにだって行けやしない。不満だらけの現状を、いつものようにあきらめて受け入れていくめだか・・・。ところが、あるできごとをきっかけに、めだかが熱血教師に変身!生徒たちの前で思い切り啖呵をきってしまう。「私は辞めないからね、今度は絶対、諦めないからね!」そんな自分に自分でビックリしながら、悪戦苦闘の毎日が始まった!ドラマは、めだかと生徒そして同僚教師たちとの関係を面白おかしく描きながら、定時制だからこそいや応なく生徒の人生に関わらざるを得ないめだかの奮闘ぶりを、テンポ良く展開させていきます。そしてそこに垣間見える登場人物たちの生活には、小さな幸せや悲しみがあり、笑いと涙のエピソードが満載。と同時に、めだか&生徒&同僚教師との恋の三角関係も織り交ぜて、ラブストーリーも描きます。
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/medaka/index.html

 へなちょこなやつが、リストラされて、よりによって定時制につとめて、ある日突然熱血に変身してしまうという筋書きは、主題歌を歌っているスピッツが実はものすげぇパンクであるというのと同じくらい、一見するとわからないくらいパンクな筋立てだと思う。ミムラ原田泰造瑛太須藤理彩山本太郎木内晶子平岡祐太黒木メイサ市毛良枝泉谷しげる小日向文世浅野ゆう子林隆三という配役もぬかりなく見える。山本の使い方はユニークだし、市毛も林も浅野も小日向も泉谷も、奇をてらうことなくわかりやすく演技している。原田泰造瑛太は面白いリアルをつくり出している。後者は達者で、読みが深いと思った。原田は、時々ネプってホリケンとおちょけそうになるというはらはらどきどきがあり、無手勝流のウィスパーボーカルのように押さえた演じ方をすることで、クサイものになってしまうような台詞が逆に躍動してくるという、毒をもって毒を制すwみたいなもっていき方が、計算尽くだったとすれば、スタッフは馬路すげぇとおもったし。また、スピッツの正夢を背景に歌い上げられるドラマのサビも、「こいつらの学校の先生だよ」とか、「まるっとおみとおしだ」とか、「わかっちゃいますた」とかいうのとおなじくらいガツンとくるものがあって、私的にはごくせんや金八よりもむしろ面白いと思った。だから、このドラマの視聴率が最近の怨み屋本舗と同じくらいのこともあったと聞き、正直ぶっ飛んだ。
 それはまあ、なんでも「そうですよね」というヘタレが主人公というのは、金八とか、ごくせんとかにはないことで、テヘテヘしながら生徒たちとともに答えを探してゆくみたいな考え方は、けっこうツボだったりもすることもある。また定時制が舞台ということもある。定時制の生徒は、いろんなやつがいて、学びたいとかいう純粋な衝動がみられて、感銘を受けることは、岡山大学東洋大学の夜間部で教えて経験しているし、そういう手応えは。近隣のワルが集結していた東村山の塾で教えていて、このままこの仕事をしていくのもいいなぁと思った頃の思い出とも交響し、神経症で国際的に活躍できそうもないなら、人間くさいと言われる場所にどこまでも分け入ってやるという衝動を惹起したように思う。サバティカルには定時制で一年とか思っていたりもした。しかし、やはり所詮私は無責任な傍観者なのだと思うし、だからこそ妙なロマンで美化しているのではないかとも思わないこともない。
 それでも、泉谷しげる演ずる花屋の酔っぱらいオヤジが照れくさそうに学びたくなた理由を言う場面などは胸が熱くなるものもあったし、貧乏で高校をやめなくちゃいけなくなったやつや、フリーターで負い目をおったやつや、父親が死んで、母親が病気がちで、すべてを背負って、かつ学ぶ夢は捨てないというスーパーマンぶりなども、抑制されてはいて、しかしスーパーぶりが峻立しているようなウルトラCな演出は実にスリリングで感銘を受けた。こういう含みは、わかりにくかったのかもしれないとは思うけど。
 正直このドラマを見るまで、今はともかくいずれは、切実に学びたい人がいる、泥臭い場所で教えたいと思っていた。しかし、これを見て少し変化した。原田泰造扮する教師は、前任校での挫折から定時制に移っていたのだが、そこにオトシマエをつけたとき、再び「進学校」に移ってゆく。勤務先のせいにするのは、卑怯なんだろうなぁとは思う。