おいドメネク!

 昨日はサッカーを見ていたわけだが、まったく眠さを感じなかった。ナイスゲームだった。あまりサッカーに詳しくない私ではあるが、鋭くボールにタックルし、ボールを奪いあい、かつ笛が吹かれない。ボールは足に吸い付くようだ。ボールを奪ってからの加速もすごく、アンリが忍者のように滑走して、何人抜きかしたときには、マラドーナのときのような伝説がまたできるのではないかという予感がした。そしたらさ、とんでもねぇオチになった。ディフェンダーに向かってジダンが頭突き。大木金太郎の一本足とも、ボボ・ブラジルのジャンビング・ヘッドパットとも違う、仁王立ちでずん!なんか、頭すりよせて、おちょけているのかと思ったら、ディフェンダーが吹っ飛んでいる。もう終る間際だったからいいけどさ、ちょっと残念な気もしたが、これでフランスチームは結束ができたとも言える。スタンドは大騒ぎだし、ちょっと格闘技のりになる自分がいた。しかし、やふうのニュースを昼食前に見て、ぶっとんだ。

 相手選手への頭突きによる主将ジダンの衝撃的な退場処分。フランスはエースの退場を機に、2度目の世界一の座が遠くにかすんでいった。ドメネク監督は「彼はこのW杯を通じて偉大なショーを見せていただけに悲しい。彼も後悔しているのではないか」と失望感漂う表情で話した。

延長まで120分を終えて1−1。PK戦で2人目のトレゼゲがペナルティースポットに進み出る。右足でけったボールはクロスバーをたたいて下に落ち、ゴールの外へはじかれた。イタリアは5人全員が確実に決め、歓喜の瞬間を迎えた。
(やふうにゅーす)

 ドメネクちゃんはさ、ジダンのヘッドパット炸裂したとき、ガッツポーズしていたぜ。「おっしゃ!」みたいにさ。「よくやった」とか、「暴力はいかんが、ダーティーなディフェンスに対してオトシマエをつけるのにはやむをえなかった面はある」くらいのけじめをつけないとおかしくないか。この監督は、まあ顔的にもちょっとせこいカンジで、人文的アウラがむんむんな人なだけに、この変わり身の早さもまた身上なのかもしれない。ちなみにPKは、このドメネクちゃんが満を持して送り込んだトレゼゲがはずし、頭突きくらったディフェンダーの方がサクッと決めて、これは勝負ありかなぁと思った。デル・ピエロも一つのポイントだと思ったのだが、サクッと決めていた。
 私は、格闘技ファンだったし、プロスポーツの乱闘の闘争心みたいなものは、けっしてきらいではない。ナンバー誌編纂の『プロ野球暴れん坊列伝』などは愛読書で、でかい人外をパンチ一発でノックアウトした大杉勝男さんの話とか、実はキレまくりの瞬間湯沸かし器、しかし血が上るのではなく、血がひくというか、青白く萌える平松投手@岡山県高梁市出身などの逸話などは、何度も読み返した。平松は、いかにも物静かな紳士というカンジなので、よけい印象に残っている。高校野球でも、眉毛をそって鬼ぞり入れた先輩たちに、愛甲投手もチキンにビビったみたいな話もきらいじゃない。で、某球団の二人のコーチが、審判に殴りかかり、けりを入れた事件のときも、「面白かった」などと口走ってしまい、岡山大学のとある尊敬する教え子に小一時間説教されたのも懐かしい思い出である。やっぱこういうのはいけないという理屈は、そのとき学習した。
 フランスの選手は、それでも、これで結束が固まったのだろうと思った。そして、フランスの人々は、「よくやった!」というのだろうと思っていたが、サポーターたちが「あれは間違っている」と語っていて、さすが血に血を洗う争いの挙句に民主主義の理念を気づいていった国の人々はすごいものだと、心底反省するものがあった。いきおいで、オッシャ!とかゆっちゃうようなのは、結局状況によっては虐殺に加担しちゃったりするようなことになるのだろう。
 まあしかし、とんでもないオチだよなぁ。前大会でのラウルのセンタリングもとても印象に残ったし、マラドーナなんかは何が神の手だと言いたくなる部分もあるわけで、こんなのも話としてはありだろうかなぁ。一生忘れない大会になったのは確かだ。