松本明子の手鼻ちーん

 弟一家が横浜に来るということで、今週も横浜へ。出がけにシャネルのコロンをつけようとしたところ、誤って床に落とす。これくらいのことは何度もあったはずだし、床は絨毯だったのだが、当たり所が悪かったのか、まったくでなくなった。口金は鬼のように外れず、いかんともしがたい。だめもとで、買ったところの上野広小路にある松坂屋へ。ここは私のような年代のものにも、シャネルのショップなどをわりに気楽にみることができることは前に言ったとおりだ。ベテランの店員の方は実に親切で、いつもプロの対応をしてくれる。私はプロ意識のある仕事振りは非常に好きなので、大事な買い物はけっこうここでしている。シャネルの店員の方なのか、デパートの店員のかたなのかわからないけれども、ありがたいことだ。いろいろ手続きをして、結局とりかえがきくことに。だめもとだったのでとても感激し、もう一つ別のコロンを買ってしまった。百貨店で買い物をするという昔のなんともいえない信頼の感覚が思い出され、うれしいものがあった。別にとりかえてくれたから言うわけではない。昔の百貨店で買い物をしたことのある人はきっとわかる感覚だと思う。
 弟たちと両親と中華街へ。久々に楽園にいく。店のばあちゃんは元気だった。いくつになるんだろう。かなり昔からばあちゃんだった。本日はモツなしで食べやすいものを並べた。美味しい。同發の豚とろチャーシューや焼き物も食べたかったが、まあ満足だ。連休になると、中華街は鬼のように混む。店によってはつくりおきを出すようなところがあるが、ここはそんなことはない。ふたりで行くような場合、おそば二つ頼んで、一品なにかというくらいになると思う。その一品は、適当に知っているものというのではなく、おすすめの壁に貼ってあるものとか、店の人に聞くとか、下調べをしておくなどして頼まないと、中華街はまずいということになるだろう。どこの店もすべてのものが美味いわけじゃない。広東料理屋のマーボ豆腐が美味い場合もあるかもしれないが、からっきしな場合も少なくない。帰ってきて功名が辻を見る。やふうテレビ欄より。

第17回「新しきいのち 」(4月30日放送分)

 身重の千代(仲間由紀恵)の元には法秀尼(佐久間良子)やきぬ(多岐川裕美)が訪ねてきては世話を焼いてゆく。この間一豊(上川隆也)は転戦につぐ転戦、また信長(舘ひろし)の命により安土城の普請に狩り出され、帰宅もできない日々だ。千代は無事に娘を出産。この乱世で平凡に生きられる以上の幸せはないと、よねというありふれた名をつけた。一豊が長浜に戻ったのは一年後のこと。喜ぶ一豊だが、よねに怖がられる始末。その頃、濃(和久井映見)は信長が変わったと感じていた。「傷の痛みがわからぬ者に民の心はついてこない」そう語る濃は光秀(坂東三津五郎)を熱い眼差しで見つめる。千代が光秀の娘・玉(のちのガラシャ)(長谷川京子)と出会うのもこの頃のこと。
 秀吉(柄本明)の命のまま、旭(松本明子)と副田(野口五郎)の婚儀が成立。その副田が千代を訪ね、旭は何もしゃべらず抜け殻のように心を閉じているという。千代は旭に「赤子のように泣き、怒り、すべてを吐き出せば明日を生きる力が湧いてくる…」と語りかける。上杉謙信迎撃のため北陸に到着した秀吉が、直ちに長浜へ引き上げた。秀吉には考えがあり半ば企んでの帰陣だ。「猿を殺す」。信長は激怒した。

 前口上は安土城を中心とした信長様の戦略絵図。そして始まるなり、いきなりプレグナント女性たちの力強い会話。負けませぬわなどと話しつつ、生命力みなぎるの図。「そぞろ歩きなどしてきなさい」。うーん。そうきましたか。そういうせりふが交わされていたのだろうか。そんなカンジとかゆうことなんだろうな。最近カルメン・マキの昔のアルバムを聴いたら、モノローグがものすごく昔っぽかった。思い出したのが大林信彦「なごり雪」のヒロインのせりふまわし。アレがあのころのしゃべりかたというのは、カルメン・マキのしゃべりと似ているということからなんとなく理解できた気がする。
 男が産まれるということをみんな期待している。一豊が男の名前しか考えていないというのが笑えた。と同時に、六平太が女のほうがよいと千代を見据えたことと、無常を生きてきた千代の笑顔はなかなかイイカンジに響きあっていたと思う。頑固一徹野口五郎が命令で旭とケツコンする。秀吉が一流の策略で五郎を説得する。五郎「わかりますた」。笑うよなぁ。「天下無双の策士」。しかし、旭は抜け殻のよう。助けてと五郎は千代に助けを求めに来る。千代「赤子になってすべてを私にぶつけなされ」。旭の力のないビンタ。噴出すうらみつらみやなにやかや。受けとめる五郎。旭「鼻のかみ方もわかんねぇ。武士はかみ方のしきたりがある。これまでは手でかんできた」。このあと手鼻かみまくり。五郎がかみかたおしえてやる。千代の笑顔。サル「一豊はだめぽだが、妻はすげー椰子だ。アレは男だったらもっと出世していた」。しかし、アラファト突撃松本の手鼻には笑いますた。
 青き情念の炎の筒井道隆香川照之のコンビは、今回は毛利と上杉の動静を見通し、かつ柴田とサルと光秀の関係を洞察するという美味しい役どころ。サルは助言されるけど、信長は見抜いちゃっている。要するに上杉に北国で立ち向かわせ柴田の力を弱めるの図。サルの小理屈に「いけ!」と叫ぶ真ん中もっこ舘ひろし。なんか、目をむく演技がなかなかよくおもえてきたからすごいかも。このあと柴田に喧嘩売って帰ってきちゃうサル。怒る信長。来週は対立。この間の、情と迷いと君主の器をめぐるやりとり、信長と光秀とサルの構図が、女たちの情景を交えて、くっきりと浮かび上がってくる琵琶湖湖畔の風景描写は、すげぇもんだと感心。
 朝生で公共放送で大河やっていいかというような議論があった。どうなのかね。