旦那様から殿様へ

 非常に忙しい。ちょっと気分を変えようと、起きてNEWBURY CAFEでブランチをとることに。前にも日記に書いた西荻住宅街になぜかあるガレージ風の建物。学生たちは「代官山風」などと言っている。サンドイッチを食うはずが、イワシブロッコリーとトマトのパスタというのに惹かれ、それを注文。+600円でミネとコーヒーが付く。イワシはアンチョビ系のものかと思ったら新鮮生イワシを調理したもので、珍味だった。客層などからいってもかなり場違いなので、さっさと喰って店を出る。大学に来て、パソコンを見て、WBCの視聴率が瞬間で50%超え、平均でも35%超であることを知る。たしかにエキサイティングだったからね。イチローの妙にアメリカンになったようなパフォーマンスには賛否があるけど、がちでムキになってやるのは、悪くないだろうと私は思う。プロレスのマイクパフォーマンスのような、ショーアップされた真剣勝負はファンの心をとらえるだろう。しかしなんと言っても、脳天に突き刺さった映像は、松中のベースぶん殴りと、上原の力投だ。「大リーグ」への気持がないはずがない上原や松中のパフォーマンスは野球の面白さ−−瀬戸内少年野球団から長嶋茂雄に至る枠組を今に置き換えるような可能性を含んだもの−−を凝縮していたように思われる。
 昼食休憩に「功名が辻」を見る。前口上とってだしの部分は、史実を簡略に整理してあって、わかりやすい。今回は趣向性のある「現代化」のネタがなかったのはさみしい気もするが、中年以上ならこの方が見やすい部分もあるだろう。最後に比叡山攻めの映像と、上川隆也朴念仁一直線がテンパって目をむくシーンが象徴的なものとしてカットインされ、主題提示がされているのは実に巧みでありますね。でもって、ドラマの入りはいきなり前回の復習。まるで民放の復習しまくり映像。しかし、いきなり「千代〜〜」「千代千代」だぜ。ちよちよさえずってんぢゃねぇよ窪園状態ジャンかとかおもわず独り言。さすがNHKなのは、「千代、千代・・・」→千代のアップ→キター「だんなさま」、かと思いきや、なぜか「殿」。おいおいおいおいおいおいニューパターンか???
 そして、上川隆也コミカルな朴念仁パフォーマンス「小りんに助けられた。やましいことはなにもない」。バーブ佐竹の「どうせ私をだますならだまし続けて欲しかった」でイニシエーションしてやりたい状況のバカ殿を好演している。そして、原作のけっこうワルな千代をお茶の間風に解釈し直しているのは、さすがふたりっ子ぢゃんかよってかんじですた。一本気の説明的言い訳に、若い頃の失態を思い出したチョイワルおやぢもおおかったのでわないだろうか。その、小りんだが、長澤まさみのドスとコケットのバランスはじつにくのいちでよろしゅうございますね。こいつ若いけどすごくね?黒革のねえさんよりよいとおもうけどな。イケズして「みんな逝った」。一豊「馬路?」。小りん「うそ、あんたをいぢめてやりたいから」。一豊「がちょーん」。迫る小りん、一豊のやせがまん。あーあまたつくっちゃった、人間関係の多角形。六平太、千代、一豊、小りん。他にも信長の三角形、秀吉の三角形などがこれまでに発見されており、徳川殿だけ着ぐるみのような浜ちゃんが珍獣のようにポテチンとしているという構図と対照的になっていて、その運動がドラマをかしゃかしゃ動かしていて、筒井道隆香川照之上川隆也仲間由紀恵の陰と陽が基本的なモチーフとなる四角形として機能していると思ったけど、さらに複雑に絡めてきやがったぜみたいな。だんだんわけわかめになるが、全体の運動見極めるのは至難だが、とりあえず断面を心地よく楽しむことで、なにか見えてくるということなのかもしれない。
 小りん=恩人、「やましいことはない」と言い訳しまくる一豊。千代サクッと「もうよいのです」。一豊「ポカーン」。わはははは。千代「殿様お願いがございます」。おおおおおお、「だんなさま」が「殿様」にめたもるふぉーぜしちまったぜ。「そばめいくらでもつれてきていいよ」「そばめいらないもん」とずっこける一豊。って、これスラップスティックか???しかし、秀吉のちょーしこき祭には大藁。葬式しろとゆっていたのに、よく帰ったとオイオイ泣く。庶民の人情と、家来を冷酷に使い、かつ人心を得るテクニックな秀吉。生瀬勝久「秀吉ちゃんは、二つの顔をもっておられる。どちらがホントの顔かわたしにはわからぬ」と説明的な台詞が入るわけだが、人間みなヤヌスぢゃってことがわかりやすいし、いーんじゃないのって・・・思ったら、一豊「どちらも同じお顔ぢゃ」と満足げに感動して微笑を浮かべる一豊。すげぇ、すべてを突き抜ける朴念仁一本気大馬鹿野郎状態。功名の一本槍が、複雑に絡み合ったドラマ空間を貫き通しているんだよ、ときたもんだ。説明的という人も多いだろうが、いつもと同じように柄本や上川や生瀬が、演じ抜いてしまう。そして、説明的という批判をあざ笑うかのように、一本槍をもちまくりの一豊軍団が映し出され「えいえいお〜!」って、トリックの山田かっつーの。wと思うまもなく、ちらりと映し出される金パチの叡智。引き締まる映像ってか。飽きさせないところがすごい。
 筒井道隆にまぬけな提言をする上川達也。この筒井の「読み」として、歴史の布置を解説。諜報戦略と一気呵成、人質と戦、陰と陽、曲線と直線・・・この構図をとりまとめる秀吉の「戦だぢょ」、一豊「ハイッ!!!」。だめおしをするよな寧々の台詞。逆名古屋弁講座というくすぐり。ガキ「おらあ、立派な人質になるだぎゃ」。小りんウインクなみのおふざけ。なんじゃこりゃあああ。わはははは。と思ったら、成熟したガキの無邪気な諦念「おらあ、はりきってやるだぎゃ」。でもってスピーディーに比叡山の一件へ。光秀@みつごろうにまんなかもっこし「そちのもっともらしい顔」。「わかっております」と篤実に賢しらにこたえる光秀、信長の表情、でもってこりゃまたもっこし効果音!!キター。わははは。飽きさせないなあ。w 「天候の戦略化」でしのぐ信長、仲介する光秀、それはいいけどあいかわらず微妙な三谷幸喜わけわかめの演技のあと、火鉢にハックションで灰をかぶってやがんの。これはまさか歴史考証しているわけねぇよな。
 しかし、人質のガキは731舞台を描いた映画「黒い太陽」のガキみたいな怖さもある。寧々「さすがおまえ様のお血筋。みごとなおつむでございます」。秀吉ガハハハハと笑い「口の悪い奥方」。ガハハハハ。あさましさもへったくれもあるかいというような笑顔は、やっぱすげぇな。見せかけの和議=光秀、がちんこの戦い=秀吉という対照をしたあと、秀吉の甥は一豊に槍の訓練を受ける。この辺は実に含蓄ある。一豊「千代に会いたいのぉ」。
 光秀と秀吉。将軍と信長の構図を見通す二人が、ともに信長をかつぐ。勧善懲悪な俗説とは一線を画していると言わんばかりの、歴史解釈歌舞伎まくりで、比叡山ホロコースト軍議。信長「ぼうずもがきもおんなも逝ってよし」。ジャッキーンと効果音。光秀の怒アップ。vs信長。女人、武器もった坊主=「悪人」=仏罰を加えるというロジック。保守とラディカルのガチンコ。と思っても、結局「ひょーばんわるくなるぢゃん」という「こさかしさ」に追いこまれる光秀。・・・・・ビビル一豊。・・・坊主を叩ききる光秀。坊主「仏罰ぢゃあああ」。みつごろう怒アップ。ガキや赤子や女人を斬れぬ一豊。でもやっちゃう?やっちゃう?ここに駆けつける秀吉。逃がす秀吉。柄本怒アップ。図式的だけどわかりやすいよな。
 槍をおく武者たち。「許されるのか」→「秀吉(・∀・)イイ!!」と暗示。癒す千代。「ぢごくのはてまでも殿と」。クールなガキ登場。諦念な定型、さらに説明的な「立派な人質」。つーか、この椰子が秀次っつーことだわな。予告。信長「今こそ公方を斬る」。三谷@ごじゃるごじゃる仕様「え!」。ワハハハハ。最後まで魅せてくれる。そのあと功名が辻の情景紹介でちゃんちゃん。ちゃんと歴史の説明もする。