小林信彦『時代観察者の冒険』

 まんなかもっこ館ひろし、まだまだもっこ館ひろし、ネコにももっこ館ひろし♪などと鼻歌を歌いながら、ちょっと自宅の掃除をしていたら、小林信彦の『時代観察者の冒険』が出てきた。下町のモラリズム、保守主義を磨き上げるとこういうことになるのかなぁと間抜けな語彙をあてはめていて、読んでいた頃が懐かしい。風貌から、ほのぼのとしたカンジの人だと思っていたわけだが、読み直し絵t、さまざまなものにズタズタにされたきわめて繊細な感受性の人が、全身の毛を逆立てて、ピリピリしながらものを見て、書いている、そんなイメージが、この当時のものを読んでも伝わってくるような気がした。時代の最先端を読んでいる。
 私が、『POPEYE』を手にして、なんじゃこりゃ、「ポ、ポ、ポパイ。ポパイのおなら。せ、せ、せかいで一番クサイ。窓を開ければ黄色い煙がポッポッポ」とくだらない歌を歌っていた頃に、はるかに年上の小林は、最近総合誌はいけない・・・たとえば『世界』、そして・・・○○の『展望』・・・そーいや、こうした総合誌頑固一徹の編集者と同義のもの・・・それが今は情報をバラバラにして組み替えるみたいな・・・だから『ぴあ』は考えてみると毎号買っていて、あとは『POPEYE』・・・これって「POP EYE」ってことぢゃね?みたいなことをゆっているのである。ぶっ飛びますた。無知を恥じ、一応検索。そしたら、かなり常識化していることのようだ。実は、マンガのポパイの語源が、POP EYE であって、「目が飛び出るほど驚く」みたいなことらしい。それをさらりと言ってのける。こけおどしの、論理や知識や修辞でごてごてした文章を書くことの恥ずかしさみたいなことを再確認できる本だなぁと思った。

内容(「BOOK」データベースより)

ぼくたちは、いま、どういう時代に生きているのか。そして、80年代とは、どういう時代だったのか―。〈日付けのある文章〉を軸にして、旺盛な好奇心と鋭敏な感受性で、東京の変容、人間観察、ショウと笑い、アイドル、言語、本と読書の周辺などと、とりあげる話題は多彩に広がる。〈時代の匂い〉をふんだんにつめこんだエッセイでおくる、現代観察フィールド・ノート。

目次

社会時評1 1978‐1979(情報公害について
生活騒音と狂気
外来語の誤用と〈パロディ〉 ほか)
言語時評 1977(電話のなかの言葉
テレビのなかの言葉
〈エンタテイナー〉という言葉)
社会時評2 1978‐1986(〈ギャグ・エイジ〉の守護神
白球を追って
こだわり続けること ほか)
日記から 1981
ニューヨークから(相互理解
ブロードウェイ1981
消えた書店)
東京のこと(下町の夏
花火の町
町人文化への道 ほか)
十人十色(親切な人
ヨコの関係
お酒飲む人 ほか)
作家と作品(もう1人の〈北杜夫
筒井康隆劇場12人の浮かれる男』
大岡昇平『成城だより』 ほか)
自作の周辺
本と書評の周辺
原初の風景
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