NOZOMちんパワーアップ

 教え子の結婚式が女子大のチャペルであった。忙しい時期だったが一年近く前からこの時期での開催が決まっていて、出ることができた。いつもは大学オルガニストの教員と聖歌隊だが、本日は独唱とトランペットがついている。豪華だなぁと思ったら、関係者であった。オーバーを持っていかなかったのでシンから冷えた。そのあと披露宴。NOZOMちんと久々に再会した。毎日1時間以上の散歩と週二回の水泳で鍛え上げ、元国体選手は在職中よりも若々しく見えた。主賓挨拶が決まっていて絶好調だったが、座席表がくばられ、二人の紹介みたいなのが書いてあるのを待合室で見ていて、「なんぢゃああこりゃああ」というので、「はぁ?」とわけわかめだったが、「相手がいたから出来たこと」という項目に「大学卒業(学部)」とあったのだ。私は院の指導教員だったので、余裕綽々と「いい話じゃないですか?」と言ったら、先生は「私がいずして卒業できるわきゃねぇだろう」などと、嬉しそうに怒っている。先生の奥様もいらっしゃっていたのだが、「こりゃあ、なに言いだすか、わからないわよ」などと笑っていらっしゃる。私は思わず「萌えー」と絶叫しそうになった。
 よいお式だった。これほど新郎新婦がうれしさがこらえられないみたいに笑っている式は今までになかったんじゃないか。「しまらない顔」などというヤクザなことばでは括りきれないほどの喜悦が会場にも伝わり、会場もみんなニコニコしていた。主賓挨拶で指名を受けるNOZOMUちん。奥様が「し〜らない」とかゆっている。先生は「座席表に名誉教授とあるが私は東京都立大学名誉教授であって・・・」とおっぱじめたので、私は「先生そのネタはNG」と羽交い締めに走りそうになったが、それはそれでおしまいで、くだんの卒業の話になった。新婦の卒論が、食物社会学を主題としたもので、それは柳田民俗学がどうのこうの、大塚史学がどうのこうのと、お得意のミードや誤訳論議はでなかったものの、学問的怪気炎を吐き始め場内シ〜〜ン、私だけがそのなかで腹を抱えて笑っていて、そして私のテーブルの人も少し笑っていた。先生の頭の上にはシャンデリア。得意の垂直ジャンプしたら頭にグサッ・・・、馬路ヤベーとか思うと笑いが止まらない。先生はひとしきり電波を飛ばしたあと、「こんな教師のところで卒論を書く手伝いをし、卒業させた新郎はただモンじゃない」と言ったら、さすがに場内笑いころげていた。新郎新婦席でテーブルごとに写真撮影。私は先生の後ろでパーを出し、あいかわらずおちゃらけた写真を撮ろうとしたが、根がチキンなもので、指が萎え萎えでチョキになってしまった。
 私のテーブルには新婦が修論を書くときに、臨床ケースのインタビューなどでご指導たまわった心療内科の先生がいらっしゃった。しばし歓談して、お礼などを申し上げた。私はプロポーズの模様などが堂々と紹介された。メールでらしい。メールの文書がプロジェクターで映し出される。飲み屋で他の人の結婚の相談に乗っていた現新婦が現新郎にメイル「私も結婚したいなぁ」「いいよ」「なによそれ(怒)」「イヤ馬路」「なにか言うことは?「結婚しよう!」「はい」。こんなカンジだったと思う。あまりにできすぎた実話だが、けっこうみんな感激していた。私もかなり感心した。そして、電車男の時代にこういう映像をつくって持参し移したお友達もすごいもんだと感心した。まあ実はプロだから上手いのはあたりまえなのだが。そんなこんなで、式が終わり、新郎新婦に挨拶をして出るときに心療内科の先生がおっしゃったセリフに一同びっくり。「メールのプロポーズの話感動した。思わず式の途中君にメールうってしまった」。新郎新婦破顔一笑。いやあ脱帽です。