中山ラビと中島みゆき

中山ラビといえばやはり「ひらひら」、安田南が「ぷかぷか」。街頭で政治的な自己主張をする時代に区切りがつき、若者はやたら内向し、恋人との情愛にやっと自分をつなぎとめるものが見つけているなどと言われはじめ、フォークも政治的な主張がなくなっちゃって、「ニューミュージックぢゃね?」みたいに、新傾向模索半分、皮肉半分で言われはじめた頃の話。しかし、かぜにたゆたうようなうたは、とてもすてきだった。中山ラビ国分寺で、ほんやら洞の東京店をやっていることは、それなりに知られている。東京経済大学の集中講義に行く際前を通るたびに思い出した。
 喫茶店をやりながら、ときどき歌っているらしい。そんな噂を耳にして検索。みくしになんと中山ラビのコミュがあってびっくりした。本人公認のコミュらしい。トップの文章を引用させてもらいます。CDも二枚。(みくしりんくは、典拠明示のためかかげましたが、招待されていない人は見られません)。

ラビ

ラビ

 知ってる人は知っている。知らない人は知らない。ほほほほほほ〜。/「ひらひら」という70年代の曲を歌った フォーク・クラシックの女王!!!ひらひら〜♪ 歌姫ラビちゃんのコミュでございます。/「人は変わる」・・・・・。/この時代をラビちゃんと過ごした方もそうじゃない方も。昔も今も〜ラビちゃんと一緒にひらひら〜 しましょうぅぅぅ。お気軽にいらしてくださいませ。
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 トップの写真は、パッツンパッツンの金髪でシャウトする中山ラビ。そして、今月吉祥寺の曼陀羅で行われたライブの写真がアップされている。聴きに行った人が、「黄昏れている場合じゃないよ」とゆわれたみたいだ、などと書き込みをしている。茶店・・・のようなもの、を経営し、ときおりライブ。かっこいい行き方だと思うなぁ。むかしよく話をした連中のなかで、ちょっとかっこいい行き方をしていた連中は、会社に入って、お金を貯めて、中山ラビがしているような行き方をしたいと言って、「卒業」していったのを思い出す。「いちご白書をもう一度」の髪を切って言い訳したという風景が、思い出される。
 その時代のもう一人歌姫である中島みゆきは、ひさびさの新オリジナルアルバム『転生』を出した。オリジナルと言っても書き下ろしではなく、夜会の曲のアレンジ再編集みたいだけど、CD化と言う点ではオリジナルと言ってもさしつかえないだろう。「ひらひら」生きている中山ラビに対して、中島みゆきはどうなっているのだろう。そう思いながら、アルバムを買った。

転生

転生

1.遺失物預り所
2.帰れない者たちへ
3.線路の外の風景
4.メビウスの帯はねじれる
5.フォーチューン・クッキー
6.闇夜のテーブル
7.我が祖国は風の彼方
8.命のリレー
9.ミラージュ・ホテル
10.サーモン・ダンス
11.無限・軌道

 女子大OG瀬戸内寂聴さんの一代記主題歌である「命のリレー」を聴いたときに、なんとなくプロジェクトX続編な曲調な気もして、さすがに中島みゆきさんも自己模倣の段階に入ったのだろうか、などとも思ったし、「帰れない者たちへ」を聴いて、聞き手のほうも自己模倣ちっくを満喫、毛お腹いっぱいであったことも事実。実に(・∀・)イイ!!。「帰れない歳月を 夢だけがさかのぼる 足跡も探せずに 影と泣く十三夜 異人の形です 旅した者は 戻れぬ関です よそ者には 帰れない歳月を 夢だけがさかのぼる」。ここでは「影と泣く」になっているフレーズが「月に泣く十三夜」と何度もリフレインされる。井上陽水は「人恋しいと泣けば十三夜」と歌ったよなぁなどと思えるし、「戻れない」というようなところに、ファーストアルバムの「あぶな坂」を思い出したりもする。
 しかし、これは黙示録みたいなもんなんだろうなあ。まぢやべぇくらいゆったりと、だけどありえねぇくらい獰猛に中島みゆきは、作品世界をぶち壊し、新しい創造にむかおうとする。懐かしいモチーフを随所に盛り込みつつも、上野洋子風というか民族音楽調のメロディだとか、ワイルドなリズムとか模索しつつ、「見渡すかぎり草原の中 ここは線路の外の風景」と歌い、そして「メビウスの帯は ねじれねじれ続く」とかぶせる。「フォーチュンクッキー」は「好きな未来を あなたの手で選び出して ひとつだけ当たり ほら」だし、「闇夜のテーブル」は運命操るカードゲーム、「わが祖国は風の彼方」で、「命のリレー」も「この一生だけでは辿り着けないとしても 命のバトン掴んで 願いを引き継いでゆけ」だ。「ミラージュホテル」は寓話的な情景を提示し、「サーモンダンス」は「まだ遠い まだ遠い まだ遠いあの国まで たくさんの魂が待っている 見つからない 見つからない 見つからない輪轍機 この線路を切り換える為に」で、最後の曲は「無限・軌道は真空の川 ねじれながら流れる 無限・軌道は真空の川 終わりと始めを繋ぐ」でちゃんちゃん。最後の曲は、「MUGON IROPPOI」の転生?とか思ったりするところはいくらでもあるのであって、みゆきちゃんあいかわらずやばいと思います。ただ、やっぱ中山ラビのひらひらはひらひらで、全体をわしづかみにしてやるんだという凶暴さ獰猛さとは無縁ではあるものの、いいなぁと思う。いろいろなそれぞれの熟年、老年のトポスが予感される。