学会一日目感想文

 亡き恩師が、「学会で集めたプリントで授業を何回かしのぐやつがいる。埋め草探しでプリント漁るようになってはいかん」とおっしゃっていた。学会でこうだったという話をするのがいけないというのではない。授業の準備ができなかったときに学会のプリントで凌ぐのがいかんというのである。あたりまえのことだと思うが、本年卒論指導に役に立ちそうな部会ばかりをまわっている自分に気づき、恩師のことばを思い出した。午前中はマンガの部会、午後は文化と社会意識の第一部会に出席した。マンガの部会では、社会学的の対象としてのマンガについていろいろな角度から議論が行われていた。「文字がなくても20ページでも読み続けられるのは日本のマンガだけ」という指摘が非常に印象に残った。
 お昼は法政大学の学食の食事を堪能。不味いといっている人がいたが、私には非常に美味しく思われた。米が特にうまいといったら、バカにされた。ガキのころ一番安い配給米を喰っていたからしょうがないんだよね。そのあと、tyadon さん、contractioさんたちと歓談後午後の部会へ。午前の部会でも思ったのだが、非常にみんなよく質問する。ギャラリーも例年と比べて非常に多い。部会は実に活気のあるものだった。最近みかけなかった、ガチのバトルも午前中にはみかけた。成果はともかくとして、ネタレス系の私には実に萌えな光景である。午後の部会もそれぞれに論争的な質問が行われなかなか面白かった。ファン文化についてご研究のつじさんが、怪文書と人間関係についての報告をされた。このご報告レジュメを午前中いただき、報告に行った。意味深長な含蓄があり、それがニートなプレゼンとせめぎ合って、なかなか刺激的な議論がなされていた。この他の報告では、自分の研究主題的には伝統芸能歴史学的著作を社会学的に読みほどいていこうとする報告と、清水幾太郎小林秀雄の「社会思想」を検討した報告が面白かった。前者は、一つの手法として非常に刺激を受けた。後者は、清水、小林よりも戸坂潤の読解方向について、非常に刺激的な読みがあったように感じ、頭のなかで反芻した。
 最後に司会者が「みんな背広にネクタイでなかなかでした」というのには笑った。部会の何かが違うと思っていたのだが言われるまで気づかなかった。つまり、実にこぎれいだったのである。ふつうは文化と社会意識の部会は、私が言うのもなんだが、小汚いというか、ラフな格好というか、そのへんのADちっく、つまりはガテン系一週間風呂入りません、肩には雪が降り積もるってなカンジで、独特の雰囲気があるのである。一人も背広のいない部会もあった。ファッションも、最先端のモノできめているのから、ママンに西友で買ってもらったネズミ色のズボンにVネックセーターにシャツみたいなのまでいて、異様な雰囲気を醸していたりするのである。それが全員スーツ姿。まあこれが常識なのかも知れないけどさ。