モテ本の読み方異聞

 パチンコで大損して暗い気持ちでブックオフでしばし本を物色。w 荻窪ほどではないけれども、吉祥寺も二階ができてかなりの品揃えになってきている。お金がないわけではないのだが、やはり節約せねばと100円コーナーをしらみつぶしに見る。一冊買おうかと思った本がある。富田隆氏のモテる男がどうのこうのという本である。もちろんこの年齢になり、しかもこの肢体でもってモテるもへったくれもないのだけれども、是非とも欲しいと思った。
 それはなぜか?この本を読んだ読者が必死の人だったようで、マーカーで丁寧にマークしてあるのである。そしてこのマークの位置が、「君ねらってるんじゃないの?」と言いたいくらいツボなところにあるのである。たとえば、「女性から声がかかるのを待っている男はモテない。積極的に声をかけよう」だとか、まあふつうに言われているようなところにマークがしまくってあるのである。しかもそれがピンクのマーカーだったりするんだよね。実に切実なのである。男子校出身のシャイマンであるならば、実に同情の余地があることである。何もわかんないのである。おまけに観念的で、妙に聖化され、また妙に欲望の対象化されてしまっている。人として見られないと言ってもよい。
 私も中高男子校だった。バカだったし、それなりに女性の前でおどけることくらいはできたんだけど、まともに口がきけるようになったというか、人間として見ることができるようになったというほうが適切かもしれないけど、そういうことができるようになったのは、岡山大学や女子大でいろいろな女性と話すようになってからじゃないかと思う。ヘンな言い方だが「こいつらも悩みがあるし、ふつーの人間ジャン」みたいな。とてもふざけた言い方だが、そのくらい歪んだ世界を生きていたと思うわけだ。
 とある大先生と学生たちと話しているときに、その大先生たちが女性たちに冗談交じりの怪気炎をあげていたことは強烈な印象となっている。こんなかんじのこと。君たちある程度のエリート男性をものにしようと思ったら、最初はこっちから行かなきゃダメだよ。シャイで自尊心高いから。そのかわり、ポンと背中を押してやるというか、鼻毛一本もピチッと抜いてやれば、あとは猪突猛進。すごいよぉ〜☆。すげぇこと言うオッサンだなぁと思ったけど、けっこうあたっているような気もした。男だ女だと言うこともないじゃないかという意見もあるし、こんなウンチクをかますのもそれなりに問題のある昨今なのだろうけれども。
 このようなわけで、この人が克己心と向上心からこの本を買い、真面目に線を引きながら読んだのはいたいほどわかるような気がした。ピンクのマーカーには、この人の懊悩と苦悶が滲んでいる。電車男の俳優がでていたという「頑張れ若僧!」のCFを思い出した。そして、この系統のノウハウ本や占い本などをすみずみまで物色してみようと思い始めた。こらえきれずにククククと笑っていると、近くのお客さんたちに遠巻きにされている自分に気がついた。気を取り直し、手をパーにして背表紙を隠しながら、素早く書架に本を戻し、本を整えるようにして手を離した。そうすれば何を読んでいたかわからないからである。ひとまわりしてもう一度棚に戻り、買おうかと迷ったが、やはりやめておいた。最大の理由は、ブックオフにはけっこううちの大学のひとがバイトをやっているからだ。こんな本を買ったら、何を言われるかわからない。しかも、噂が針小棒大になるのがうちの学校の特徴だからである。