私は家系ラーメンなどはタップリ生姜をぶち込まないと喰えないという偏食ぶりであり、またはやし家のつけめんの背脂を天かすだと思っていたくらいなので、ラーメンなどを論じる資格のない人間であるのだけれども、ラーメンという食い物自体は好きなのでいろんなところに喰いに行く。うんちくをたれるほどの知識もなく、観光地などのうどんつゆにラード入れてハイラーメンいっちょあがりというのもけっして嫌いではない。なにが好きかと言えば、横浜自宅近くの中華屋のラーメン。名店で言えばくじら軒みたいな味と言えばいいのかなぁ。まあどーでもいいけどさ。
でもって、吉祥寺のまちろぐを始めたので、ラーメンでもまた食べてみようかといろいろ行きだした。学生と話していて、まあ「吉祥寺ではかぎやがすきだ」と言ったら、「中村獅堂がバイトしていたところ」と教わりぶっとんだ。そうなの？馬路かよってかんじ。そーいや、西荻の一圓にはもりまんがいたわなぁなどと思って、話をいろいろな椰子らとしていて、小耳にはさんだのが、源宗近。できて間もない店。なんでも、店主は仏蘭西料理のシェフだったらしい。昼間下見に行ったら、いわゆるニューウェーブ系というか、小じゃれたダイニングバー仕様。照明なども凝りまくっていて、かつラーメン屋という佇まいはきちんとたたえている。次に、予習のためにネット検索した。けっこういろんなブログでとりあげられている。写真を見るかぎり、しょうゆのきちんとしたラーメンで、美味しそうなのだが、けっこう辛口批評も多い。曰くバランスが悪い、辛い、こだわりしょうゆがウザイ、なかには「武蔵家は最初の一口は美味いと思うがここはそうではない」。ひでぇ。劣等比較された武蔵家については、ノーコメントである。だいたいバナナカレーが別館になったあとは、一度も行っていないし。
そして、夜行った。場所が目立たない。三越南側ヴィルディのところを入り、まりやなどを超えて、自由の女神で有名ならぶほホテルニューヨークより一本三越よりをちょこっとホテルアラント裏口方面に入ったところ。落ちついたいいカンジのいい店だ。酔客が六人くらいいた。極み麺、伊勢溜まり醤油が店のこだわりのようで、名刺や丼にも書いてある。普通のラーメンに、メンマと野沢菜と薫タマのトッピングを選んだ。湯切りもチャキッとして、さあ喰うぞと思ったら、鍋で麺と汁を混ぜている。濃厚なしょうゆスープを、煮込みというわけではないのだが、麺に充分に絡ませて、それから丼にもって出してきた。メンマも非常に醤油味の強い味付け、スープもネギもこだわりのしょうゆがしみしみであり、さらに卵にもこだわりのしょうゆが一滴たらしてある。水っぽくなるのがいやなんだろうなぁと思った。
麺はちじれめんでよく汁にからんでいる。スープは非常に醤油味が濃厚だが、舌を刺すようなものではなく、マイルド。じゃこのあげ玉がコクをだし、かつ濃厚なしょうゆスープを吸ってこだわりしょうゆをデフォルメしている。卵も非常に薫製が効いている。味玉のような薫タマが多いけど、ここのはちゃんと薫製ってかんじがする。けど、まあ私にはホンモノの薫製がどんなものだかわかんないけどね。でも美味いよ。野沢菜もごま油で炒めてあり仕事してますってカンジ。角煮は喰わなかったが、これなら期待できると思う。一番美味かったのはチャーシュー。最初の店では絶対にチャーシュー麺は喰わない。泣きそうになることが多いからだ。しかし、ここのはちゃんとしたチャーシューだ。煮豚ゆで豚の類ではない。チャーシュー麺にするだったと大後悔。単品でつまみとして喰ってもかなり美味いだろうなぁ。なんか中華街がなつかしくなった。自販機を見ても、チャーシュートッピングはない。ううう。濃いしょうゆ味の好きな人ははまると思う。
クセが強すぎて万人むけではないと思うが、やたら臭くしてインパクトちうのはちょっという人で、濃いしょうゆ味が好きなら、オススメ。たまり醤油でちぢれ麺を煮込んだというのがコンセプトじゃないかしら。それを、食べやすくしている。チェーン店じゃないし応援したい気持ちだが、キッコーマンのアンテナとかだったら、ぶっ飛ぶなぁ。わははは。思い出したのは一つには、阿佐ヶ谷福來飯店の汁ナシネギソバ。汁ナシといいながら、汁ナシネギソバ元祖中華街海南飯店のものとはちがい、汁があり、濃厚なしょうゆスープで麺が煮込んである。まあ福來よりは、チャーシューも麺も汁もうまい。あとは、なぜか竃を思い出した。あれをあっちっちにしたカンジというと、竃嫌いのひとは萎えるかもしれないが。ただし、チャーシューはじぇんじぇんちがウヨ。あっちはホロホロ、こっちは弾力があり歯ごたえがある。
吉祥寺三越裏というと歓楽街のイメージが強いが、小さい雑貨屋やいろんな店がならんでいて、中道通、公園通りあたりとも、またハモニカ横丁界隈とも、異なる佇まいである。そうした街にかない馴染んだものとして、この店が軌道にのるといいなぁと思った。
