昨日TKO負けの後重体だった日本チャンピオンの田中聖二選手が亡くなった。目立たないが40人近く亡くなっている。やっぱボクシングはガチなスポーツだなぁと思った。で、今日は、WBCバンタム4位の長谷川穂積が、14回防衛、9年間無敗の王者ウィラポン・ナコンルアンプロモーションに挑戦する日である。ウィラポンと言えば、ワールドダウンタウンで笑っちゃう名前だが、ナニワのジョー、今どきめずらしい絵になる男、辰吉丈一郎からタイトルを奪って、ずっと防衛、バリ強と思われた西岡利晃に4回挑戦させて、ことごとく退けた。さすがに40歳近くなっているし、計量も失敗して再計量したというし、もしかしたらとは思ったけど、やっぱ勝てるワキャねぇよなぁと思いつつも、もしかしてと思い、最近は世界戦でもあんまし見ないのに、久しぶりにテレビ中継を見た。
長谷川は、健康上の理由で引退した親の夢を継ぐ親子鷹ボクサーで、サウスポースタイルのテクニシャンっつーことなわけだけど、今の若者にありがちななんかへなちょこな雰囲気を醸す、シオシオノパーなビジュアル。よく言えば、大人しいけどきれると怖いというか、そんなカンジ。って、殺し屋1かYOと言うかもしれませぬが、まあああゆうことはない。チョビ髭でもはやして、辰吉ちゃんとならんで歩けば、弟分くらいには見えるかも。しかし、正直そんなに期待していなかった。でも、中継見たんだから、多少期待していたのはたしかだけどね。はじまったらさ、けっこうパンチがあたるんだよね。シュパンシュパンうって、けっこうイイカンジ。でも、途中からチャンプが地力出してきて、ボディを執拗にうってくる。ハイハイハイハイ、これが今日のドラマデツカ、判定負けデツカ、KO負けデツカ、いずれにしても長谷川ちゃん、ダメだよ、露骨にイヤな顔をしちゃさ、とかふざけてみてたんだよね。ところが、この長谷川ちゃんここからがすげかった。右のリードパンチとフック、左のフックなどもよかったんだろうが、左のアッパーが非常に効果的だったんじゃないの?わかったようなことを言うと、マニアックな某先輩に怒られそうだけど。出てくるところを、面白いようにアッパーが当たる。
このへんから、浜田剛さんや、小林さんの解説もワケわかめになってきた。「ボデーうたれても、顔面効いているから、ボデーなんかうたせておいて、がんがんうて(馬路無茶いわはるw)」、「チャンピオンは全力だ、長谷川は余力がある。一発じゃなく苦しくても数発ぶち込め。そうすれば勝てる。気合いだ」みたいなカンジ。でもさ、頂上を極めた人たちは、適当なところで手を打ったら絶対チャンピオンになれないことを知っているんだろうなぁとは思った。「一線越え」というのはそういうものだろう。自身の小さな達成を考えてもそんなカンジがする。ガンバリズムな昔が蘇った。9Rすぎて、かなり優勢になった。10Rと11Rはかなりのところまで追いつめ、普通の椰子ならぶっ倒れていたと思う。しかし、このウィラポンは、WDTの椰子とは大違いで、痰も吐かないし、腰もすわっている。馬路強いと思った。最終ラウンドは、凄かった。ウィラポンは、ガチンコ必死君になっている。弱点とおぼしきボデーボデーボデーボデー。ひょっとしてやべーんじゃないかと思った。顔面にももらっている。さすがにここでダウンしたら負けだろう。しかし、ここで「一線越え」したかんじで、最後の30秒はよれよれになりながら、顔面打ち返して、ブンブン打ち合ってかーん!終了!
え、馬路?勝っちゃったらどーするのよ。ウィラポン両手あげちゃってるけどさ、あんたやばくね?とか思っていた。リングアナがジャッジの結果を発表。判定はスプリットじゃなく3−0。「世界WBCバンタム級」、負けかやはり・・・、「ニューチャンピオン」。エエエエェェェってかんじ。勝っちゃった。本人へなへなで、奥さん泣いちゃっているし。インタビューでガキがリングにあげられたら、ガッツさんの娘と違って、ガキが火がついたように泣き出すし、ろくにインタビューもできねぇ。勝ったとは思えない静かな姿は、ねなちょこでなんなんらーっつーかんじですたが、すげーよな。黄金のバンタムだもんな。原田、辰吉、薬師寺、六車だっけ?とっただけでも凄いと思う。
テレビ局はすかさず、リングサイドの辰吉にインタビュー。「たいへんなことになった」。辰吉やる気になっているんだろうね。何度もやると言って、協会を困らせているみたいだけど。西岡も黙ってないだろうし、ウィラポンもマッチメイクしてくるかもしれないし。スポンサーも商売になることは確かだろうし、マッチメイクのインフラもしっかりできあがっているだろう。となると、どんなヒーローの物語が創られるのだろうか。長谷川は、ビックマウスで「次は統一戦」とかゆうんだろうね。ググったら言っていやがった。若者たちは世界を目指す。「勝ち組神話」みたいな言説に回収されて、ちゃんちゃんなのでしょうか。