Tバックpart2−−午後の紅茶異聞

 紅茶は午後に飲む。これはイギリスの習慣なのだと思う。ガキの頃の紅茶の思い出といえば、朝「パン食」*1のときに飲んだりしたことと、お客さんが来たときにケーキなんかといっしょに出したことである。ケーキと言っても、今あるパティシエもへったくれもない時代で、クリスマスなんかは胸が悪くなるようなひつこいバタークリームケーキを不二家で買ってくるのがせいぜいだった。が、野毛界隈はなかなかイキな場所であり、地元のケーキ屋さんなんでものも、しっかりあった。それがコーベル洋菓子店である。ここのショートケーキを出すというのは、接客として、うちみたいな貧乏人にとってみれば、かなりの気合いだったのである。あっさりとしたシンプルなケーキで、ちゃんと今でもある。*2そういう気合いの時は、とっておきの紅茶を出す。野毛通り商店街には、三河屋さんというお茶屋さんがあり、そこではパン食用の安い紅茶の他に、うぐいす色の缶に入ったリプトン紅茶がおいてあった。センターグリルが米国式なら、こっちは英国式である。まだトワイニングも、ジャクソン、ましてやオリジナル紅茶ショップ*3なんてものはなかった。だけど、このうぐいす缶のリプトンは、まさにとっておきのおいしさがあったように思う。まさに「勝負紅茶」と「勝負ケーキ」。うちは、私が高校に逝くくらいまで冷蔵庫はなかったので、レモンなんかはなく、ストレート一本だったけど、ルビー色の紅茶の芳醇な香りは忘れられないんだなぁ。。。と加山雄三調♪
 ところが、リプトンはTバックを出し、その上トワイニングなんかが売り出されて、『イングリッシュブレクファスト』なんてものをうちなんかでもいっちょまえに飲み出して、リプトンは廉価版の代表みたくなってしまったように思う。昔、新宿副都心ができたばかりの頃、みんなしてよく高層ビル街に遊びに行き、三井ビルの喫茶店などで、お茶したりしたけど、人口滝の景色の見える席はプレミア料金で、ポットティーというのを頼んだら、どこでも売っているサーバーにリプトンのティーバック一閃で、スゴイ高くてなんだよ、リプトンかよなどと思った。そのとき、なんでリプトンはこんなになっちゃったんだろうなどと思った。ここの店はよい思い出がない。トイレが男女共同で、賞揚を足していると、個室から女性が出てきたりする。一度なんか、いっしょにお茶していた先輩が出てきてぶっ飛んだことがある。
 大学の寮でもリプトンはよく飲んだ。寮の売店で売っていたのを買った。スゴいやすかったけど、みんな貧乏だから、大事に飲んだ。飲んだあとは捨てずに、ヒモとかに洗濯物を干すみたいにぶら下げておくの。で、乾かして、熱湯を注ぐと、これが不思議に何度でも入るんだよね。四人部屋で部屋にはいると書く机のところに紅茶がぶら下がっている。ときどき我に返ると馬路逝ってよしな風景だったと思う。

*1:トースターでパンを焼いて喰う朝食を当時こうゆった。

*2:ウチキパンやコテイのパンなんかが注目されるなかで、あまりメディアに登場することもないけど、もしかすると出ないのかもしれない。コーベルのケーキ美味しいです。通りかかったら食べてみてください。特に、胃に重い本格パティセリに食傷気味になったときなど。ティールームもあります。ただ、アイスとかクリームとか添えてくれませんけど。

*3:吉祥寺だとロフトの近くの小道にありますけどね。