jibunsagashi

 今これを書いている時点では、香田証生さんの明確な消息は不明である。なんかやたら眼が澄んだ−−ブッシュの澄んだ眼とは違うけど−−へなちょこな風貌に、いろいろな思いや怒りやなにやかやを寄せる「日本人」は多いだろう。まあこういう問題に関しては、無責任だごるぁああ、移動の自由だごるぁああ、個人の責任だごるぁああ、政府の責任だごるぁああ、無責任な非同盟論はやめろアヒャヒャヒャヒャ、NOと言ってみろYOアヒャヒャヒャヒャと、ひとしきり不謹慎なおちゃらけも含めて、自作自演シミュレーションしてみて、話はそれからだと思うし、議論は出尽くしているとも言える。
 福田赳夫氏が、生命は地球よりも重しと言って、政治犯を解放して取引をしたときに、歯ぎしりをして悔しがった人と、誇らしく思った人といるだろう。ある保守派の人が、言っていたことを思い出す。金を出して解決できるなら、血を流さない。どんなに馬鹿にされても、金は出す。血は流さない。国際的な発言権などなくてもよい。常任理事国なんていらない。金だけは出しまくる。安保や憲法はできるだけ巧妙に盾にとる。馬鹿とサヨクは使いよう。で、結局応分の金が払えるだけの経済力が国になくなって、だったら血を流せということになった。
 こうなると、昔つくった敗北者礼賛の替え歌な戯れ文は、今は敗北主義批判に貢献するかもしれない。「Ameニモマケズ アカニモマケズ 列強ノ蔑視ニモ嘲リニモマケヌ 丈夫ナ心身ヲモチ 慾ハ満々 決シテ瞋ラズ イミモナクニヤニヤワラツテイル 貧乏人ハ麦ヲタベ 億万長者ハスシヲタベ アラユルコトヲ ジブンノリガイヲカンジョウニ入レ ヨクミキキシワカリ ソシテタタカワズ 郊外ノ私鉄沿線ノ ウサギ小屋ト呼バレル小屋ニイテ 東ニ病気ノ子供アレバ 行ツテカネヲダシテヤリ 西ニ疲レタ母アレバ 行ツテカネヲダシテヤリ 南ニ死ニソウナ人アレバ 行ツテコハガラナクテモイヽトカネヲダシ 北ニケンクワヤソシヨウガアレバ ツマラナイカラヤメロトカネヲダシ ジケンノトキハハナミダヲナガシ タタカイノトキハオロオロアルキ ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ サウイウ国ニ 日本ハナリタイ」。今さらに思うけど、つまらねぇ替え歌だよなぁ。まあ、マネーゲームが安全弁だなんて議論は甘いだろう。だいたいが、イラク戦争だってマネーゲームと言えばマネーゲームなわけだし。私は国際政治の専門家でもなんでもないし、偉そうなことは言えない。香田さんと、対策にあたっている人々、それからはからずもサマワにいる人々の健康と安全をお祈りしたいとしか言えない。
 そんなことが言いたくて、この話を始めたわけではない。問題は冒頭に書いた「日本人」の特別な思いということだ。バックパッカー、自分探し、自己実現。それでみんなピンと来るものがある。「ヒロシです。ひきこもるほどお金がないです」という言葉などを思い浮かべ、香田さんはてめぇで働いた金でイラクに観光に行ったのかとかと怒る頑固親ぢがいるかと思えば、、切実なダメダメ君の生について思いをはせる若者がいるだろう。そういうことを象徴化したようなものとして、香田さんの映像が眼に入ってきた。しかし、外国メディアを見てみると、と言うか英語で読んでみると、香田さんの事件は、「民間人」が拉致されたと言うことが強調されているように見える。「民間人」とはすなわち市民なのであるね。

BBCの報道

 An Islamist militant group in Iraq has threatened to kill a Japanese citizen it has taken hostage if Tokyo fails to withdraw its troops from the country.

中国日報

 Shosei Koda, a 24-year-old Japanese reportedly taken hostage by an Islamic militant group in Iraq, is a civilian traveling the region after working in New Zealand, according to information obtained Wednesday by the government and other sources.

 でもって、「jibunsagashi+Koda」で検索したけどヒットしない。「Koda」をはずしても、83件しかヒットせず、そのうち外国語サイトは、ドイツ語二件、英語一件。英語はブログのタイトルで、本文も英語で書いてある。しかし直接は関係なし。ドイツ語は、ジャパノロジーのサイトに「Forschungskolloquium„Konsum in Japan. Lifestyle, Produkte, Verbraucherprofile“」というのがあり、そこに報告として、「L. Gebhardt: Heilung (iyashi), Selbstsuche (jibunsagashi)」というのがあった。もう一つは、ポストオウム的な新宗教状態について解説した本だかなんかの紹介サイトで、次のようなのをみつけた。

Die Suche nach "Heilung" (iyashi) und die "Suche nach dem Selbst" (jibunsagashi), zwei wichtige Stichworte der "spirituellen Welt" (seishin sekai) Japans, wiesen auf das Bedürfnis vieler Menschen nach einer Neuorientierung hin. Die gegenwärtige Sinnkrise, so deutet es das Magazin, resultiere vor allem aus dem Zusammenbruch der Familie.

 いずれにしても、ジャパノロジー的なところでしか理解されていないということだろう。ちなみに、hikikomori をググると12300ヒットする。もちろん日本語が多いが、BBC他も報道している。dameren も191ヒットする。もちろん香田さんをこうした文脈で語りたいということじゃなく、いろいろ検索しはじめたら、面白くなってきたということで、inakamono だとか検索している。微妙なデリケートなニュアンスをつたえあう努力の一端を担えたらいいなと思ったというのが、なんともにんともな結論である。
 短大の講義、みんなけっこう聞いてくれるようになった。今日も歩いた。今日は豪徳寺から、赤堤側を歩いた。公園通りを日大文理学部方面にでて、神戸屋でパンを買って、帰った。研究室にいるが、誰も質問に来ない。来るんじゃなかったかも。