間と拍子−−間の社会学6

 たとえば、東京エスムジカの曲を聴くと、速度感だけみても、いろいろなパーツが不安定なバランスで、ときおりヒュッ、ヒュッと、ホホをかすめるような魔を感じることがある。スクリッティポリッティなスリルなどというと、80年代ポップを聞いていない人には、ぢぢいの内輪ウケすぎないと言うだろうけど、これはなかなか適切な表現なのである。同じような趣向はいろいろな作品に見られる。それを中井正一も紹介していた端唄の「メリヤス」のようなものとして表現している現代ポップも散見される。オリエンタルポップだとか、ザバダックだとかその周辺に惹かれることの一つの理由は、メロディーラインの個人的な好みなどのほかに、それも一つの理由だと言えるじゃないか。それを拍子というかたちで、作品化していると感じたのが、キルシェで、ブラウニーが再始動した、2003年4月にたまたま渋谷のタワレコで買ったのが最初だった。
 そのとき、キルシェのアルバムを2枚買いますた。風の彷徨、花降る森で、架空庭園、鬼さんこちら、五月はベリルの風をつれて、Breeze・・・。アコーディオンのねぇちゃんと、ちょっとおたくなあんちゃん。もうこれはザバダックじゃんか。でもでも、異種格闘技竜虎あいうつみたいなせめぎあい*1はないっす。しかしですな、私的には20萌えな音楽が、なんの衒いもなく℃演歌のように歌い上げられると言ったら、ちょっと偽悪的だけど、いわゆる「はずれ」がないし、まあ照れずに言えば、けっこうなごむっす。*2
 その9月に、必要あって、キルシェをぐぐりましたところ、このユニットがかなり前から独自のホームページを持っていることを知りました。なかなか美しいサイトで、早速ブックマーク!!プロフなどを読んでびっくらこいたのですが、キルシェってザバダックコピーバンドとして出発したんですね。納得というか、ならモロもわかるわぁーーってかんじですた。Voのみとせのりこオリタっていうユニットつくって、フィルっていうミニアルバムっつーかマキシシングル出したのと、ザバダックの吉良がSongsっていう、まさかトリビュートとは思わないけど、コンピレーションっていうか、ともかくアルバムつくっていて、そこにみとせなんかがさんかしているということで、この二枚を買うために渋谷のタワレコへ。そしたら、フィルはあったので、即買いました。リズムな不安やノリはなく、ピアノさらっとひいて、おなじみのメロディーラインでサクッと歌っているというカンジの気持ちのいい小品でございました。
 だけど、ファンサイトなどをググりますと、やっぱみとせの本線はアンバランス破調系なんじゃないかと思われます。碓井康裕さんのサイトの話は面白かった。まず、「ジャンルとしては、Zabadak谷山浩子遊佐未森〜辺りが好きな方なら結構『ハマル』かと」ですと。なるほど、御意御意。『ぷれあです』の「五月はペリルの風をつれて」なんかは、『ハルモニオデオン』のころの遊佐みもりをパロったふうみたいにすら思っていたけど、谷山はビックリした。言われてみるとたしかにそういう気がする。「上野洋子さんの声が好きな人はおすすめ」と書いてあるんだけど、たしかに似ていると言えば似ている。ただ、多彩な才気が横溢してとぐろを巻いているというカンジではなくて、落ち着いて和めるカンジですね。そのくらいしか、私にはわからないのですけど、間と拍子という観点から面白かったのは、次のところ。

 僕がとても・・・気に入ったところとして、すごく個性的なグルーヴ感がある。と言うところでしょうか。一般的な4拍子は結構少ない…? 6拍子とか3拍子とか…曲によっては変拍子とかも出てきます。 しかも曲中にシンコペーション(だっけ? アクセントの音符をずらし込む)を多用する曲が多くて、たぶん最初に聞くときは多くの人が「な・・・なんじゃこりゃ?ぜんぜんテンポが取れん…(>_<)」って思うんじゃないかと。 少なくとも僕はそうでした(^^; でも聞き込んでいって、その「ポイント」を上手くつかめるようになると、その微妙な「ズレ」が非常に耳心地よくて…どんどん曲にのめり込んでいくような感じがします。その感覚はライブになると、特に威力を発揮します!…ライブがいいんだこれがまた…踊れますo(^-^)o。

 踊るというのにはビックリしたけど、「ティル・ナ・ノグ」なんかは、たしかにおっしゃっていることにドンピシャで、盛り上がりそう。アンデス民謡みたく、最後に早くなるところがあるのもいともえ。*3コピーからはじまったけど、コピーに終始することなく、またこういう傾向にありがちなヲタなペダントリーが五月蝿いということもなく、ずれた拍子で踊れるというのは、非常に面白い間の作品性だと思いました。

*1:昔のハイファイセット紙風船の赤い鳥とはまた違う意味で。

*2:文化社会学掲示板カキコ。い 投稿日: 2003/04/20(日) 01:41。

*3:173 名前: い 投稿日: 2003/04/24(木) 19:38。