The Who をめぐって−−ポップにオリエンタルな場

 プールでサクッと泳ぎ、帰宅。なぜか書評はそっちのけである。本を読めば読むほど書けない。一度読んで、一気に一筆書きしかないね。ウン!!って、怒るよね。ゴメンナサイ。本をいただいたということから言えば、掲載予定誌をここで紹介しないといけないのかなと思うが、それはまた余裕があればということで。実は、書評を書く見本に送って頂いた。可能なら電送と申し上げたのだが、私の場合馬路めんどーならいいということ、っつーか学生なんか態度でかい椰子いますよ、馬路。レジュメ電送、印刷私なんて、最初はざらですから。それを四年生までにビシッと筋を通すのが教育なんだけど、あーあ。それはともかく、うちの学生とはぜんぜん違う真面目な方が、かなり苦労していただいたみたいで、本当に申し訳なく思った。そしてお礼も申し上げたい。
 2年ちょっと前に吉祥寺の新星堂が「吉祥寺系」みたいなもんをつくろうとして、試聴コーナーをつくっていたことがある。そのコーナーに「ポップにオリエンタル」というコピーでプッシュされていたのが、The Whoの『深海の草原』である。もちろん、破壊王ピート・タウンゼントのグループではない。表題曲は、まさにコピーにジャストフィットな一曲であったが、その曲よりは、「春と桜」という曲を何度も聴いた。童歌のようなメロディーラインで、ろうろうと歌い上げる、ちょっとハスキーなヴォーカルは私たちの世代にはおそらく「鳥肌もの」と言ってもいいのではないか。
 歌詞には「同志(とも)」とか、「縁(えにし)」とか、「希望(ゆめ)」とか、ちょっと「い?」なことばも出てくるけど、極私的にはものすげぇトラウマなくらいツボ。「ひらりひらり 散りゆく桜 我と大地に帰れよ/まだ見ぬ未来へ想いを馳せて 同志(とも)と春を希う/・・・/希望に生きて 希望に泣いたら 共に春を迎えよう/希望に燃えて 希望に満ちたら/あなたのもとに帰ろう」。 esp.「希望に生きて・・・」という部分の、一切の衒いもない歌唱には、不覚にも涙しそうになった。たぶんこれは、そんなに一般受けしないだろうし、丸抱えの癒しを求める幼さや、一直線に突き進むだけの若さとはまったくちがうものだけど、中年や老年というものが、熟し枯れ果てて見苦しいものになってゆくだけではないぜという、そういう勁さを描いているように思った。*1
 ググってみたら、サイトがあって、曲もそこからダウンロードできた。井の頭公園で野外ライブしたり、時々小ホールなどを利用したライブをしている森山佐登美・由香の姉妹を中心としたユニットだった。しかし、今は、『深海の草原』がヒットするだけで、公式サイトなどはリニューアル中なままになっている。最近のコピーは「ポップでロックがオリエンタル」みたいである。活動休止中なのだろうか。CFとかもやるみたいだったのに。まあ売れればいいってもんじゃなく、余裕ができて、気がむいたら歌うっていうのもありだろう。BBSに「桜と花」の感想を書いたら、レスをいただき、二度ほどライブにうかがった。『深海の草原』は、ギターだなんだとついた編成だったけど、二度行ったライブが二度とも姉妹のピアノとボーカルだけの編成だった。
 一回目は、東京芸術劇場@池袋の小ホール。今はホームレスや高校生や勤め人や外国人が混在する80年代風カルチャー空間@おなじみIWGPぃ〜にある劇場の建物はなんとも言えないハイブリッドな雰囲気でいい味ですた。でもって真っ暗に証明が落とされいよいよ開演開演!!ワクワク!!おおっと、なんと演劇風の舞台作り!!ぜひライブで聴きたいと思っていた「春と桜」は中程に出てくるので、まあゆっくり聴くかなって、ライトコーラ含んで舞台を見ましたら、一曲目からぶっ飛んだ。ミュージカルとも違う、なんつーか演劇のせりふまわしみたいなシャウトのはいるワイルドさを含むボーカルとピアノが創り出す世界は繊細で、非常に不安定な均衡が保たれたえも言われぬような童歌童謡調の世界が現出する。ガイア&エコロジーっちょいメッセージには、構えてしまうところもあるんだけど、あんまりえぐみもなくって、コンセプトがやわらかいので、無理なくついてゆける。ほんで、唄は、どうだ繊細だろ!!って押しつけがましいわけではなく、時に荒々しく情念が走り抜け、でもって歌舞伎のキメぜりふみたく、ズダーンと舞台を足でぶったたく。(・∀・)イイ!!。マーラーの悲劇的ハンマーかっちゅーのなんつー不謹慎なギャグを思いつく人もないようで、みんな鳥肌もんみたいな忽然とした表情で聴き入っている。舞台は一貫してスポット照明のみ。メッセージ性のあるべしゃりもほとんどなく、拍手も最後にね!!ってことで、ま、ひたすらに唄を聴いてちょってかんじであった。最後花束もってゆこうとした人がたくさんいたんだけど、あっさりひっこんじゃった。あら〜〜ってうちに終了で、めっさクール。
 二回目は西荻の奇聞屋。場所は西荻南の有名なアンパン屋のとなりである。地下に降りていくと、竹にこだわった装飾が施されたエコエコなムードのこだわりな空間が目に入る。調度も凝っていて、また料理の美味しそうな香りもして、汗くさい落書き空間とは違う、なかなかよさげな場所である。貸し切りパーティーなどもできるようである。他には、ステラ・ミラ uni などで、ドリンクと食い物ついて3500円は安いんじゃないかなぁ。プロデュースが矢野誠。ミュージシャンのオーディションなども、大道芸のプロダクションが仕切っているだとか、裏話が聞けたのは面白かった。
 今度もピアノとボーカルの二人編成のThe Whoは、池袋の時は、低音の一部や、シャウトの炸裂部などに気になるところがないではなかった(などと小生意気なことを言うと有識者になんか言われそうな)んだけど、池袋とは段違いに非常に切れ味が鋭いというか、すごかった。これは調子のせいか、それとも小さいところだったからかはわからない。曲は、ちょっとちゅらさん奄美沖縄系なども交えつつ、エコエコラブ&ピースメッセージなどを衒いなく打ち出しながら、いろんなテクニックを堪能できるという編成になっていたように思った。このユニットについて言えば、ボーカルがツインで絡むところは、私にはかなり鳥肌ものであり、まがまがしいとまでいうと、さすがに形容がぶざまに瓦解するだろうけど、たたき付けるような破調狂気な−−これもぶざまな形容ですねぇ−−ピアノがはっきり聞き取れたのも、小さなホールならではなのかなぁと思う。
 祭の歌、宴会の歌、歌声喫茶の歌、カラオケの歌とも違う人と人とのつながりを創り出す場を発見したのは、面白いことだった。このスペースでは、六十年代風に言えば、高度に実験的なさまざまなマゼマゼが行われているようで、注目したいと思うし、グループのつながりから、自分の好みのユニットをいろいろ知ることができたのはすごくいいことだったなぁと思う。*2

*1:妙なことを言うようだけど、ドラマ「ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ」の最大のポイントは、「小市民的サラリーマン」の典型のような父親が、不治の病で死にかかった女性と結婚するという伏線なのかも知れないなと思ったのであります。

*2:ライブスペース奇聞屋HPより。「自然音楽家吉川正夫がプロデュースするライブスペース。アーティスト梶浦孝博のデザインにより、木や竹などの自然素材と光の調和が織りなす柔らかなイメージの空間が出来上がった。ノーチャージで楽しめる『森の日』(吉川の作品から命名されたらしい:inainaba)を中心に、様々なジャンルのアーティストによる実験的なプログラムも楽しめる」。「ポエトリーリーディングカフェが増える中、奇聞屋の「朗読の日」は吉川正夫のピアノによる即興演奏とリーディングとのコラボレーションが楽しめるというので評判を呼んでいる幅広い年齢層の参加者が、オリジナル詩や小説など様々な朗読を展開中。注:オープンマイク→観客が自由に参加できる形態」。「自然写真家牛山俊男氏によるスライド(星空や花などの自然写真)と詩の朗読、吉川正夫のピアノ即興演奏、この3つが一体となって作る世界が楽しめるプログラムが1部2部は、牛山氏のスライドとお話日本で初めてオーロラの撮影に成功し、朝日新聞でも紹介された牛山氏によるスライドの美しさは絶品」。「アコーディオン奏者の第一人者横内信也氏をゲストに迎えてのプログラム横内氏のアコーディオンソロによる『津軽じょんがら節』を聞くために駆けつけるファンも多い」。