高円寺円盤へ行く−−荒削りにアコースティックポップ

 出勤し、仕事をして、一段落つき、高円寺に行き友人と会い、メシを喰う。そのあと浜田真理子のレーベル美音堂直営の円盤に行く。高円寺駅南口を出て、信号を渡り、ガード沿いに少し歩くと、道の左側に「円盤」という看板が見える。ライブなんかの情報も出ている。だけどどこが店だかわからない。看板の出ているビルの二階なんだけど、左側に階段があって、そこにポストがあり円盤とちいさくあったのではじめてわかった。西荻の希聞屋みたく、凝った内装のもっとエコロジーな空間かと思ったけど、どっちかというともうちょっとアンダーグラウンドな雰囲気がする。品揃えについて、何かいえるような私ではないのだが、ともかく街々のライブハウスをつなぐというような雰囲気というか、ビックマーケットになったインディーズとは少し違う感じのするものがおいてあり、私のような人間には、共感できる空気が漂っていた。
 プッシュな曲というか、本で言う平積みなCDには、店の人のノーツがついている。目についたのは、「荒削り」という言葉と、「アコースティックポップ」という言葉である。ザバダックとか、VitaNOVAとか、Marshmellowなどが好きな私としては、アンテナがピクピクするものがある。もちろん原爆オナニーズとかもあるけどね。浜田真理子の作品は島根の店みたいに猛烈プッシュではなく、普通のものと一緒にならんでいた。ジギタリスやってたおっちゃんが、フカーツな一枚出した奴とか、けっこうシニア系なものもおいてある。手持ちが少なく買えなくて、今からでも行って買いたいと思っているくらいなんだけど、なんとあの安田南の復刻版CDがおいてあったりするの。手にとってみたら、安田南が大人な女な雰囲気たたえて、ドアップで写っている。ラジオであのしっとりした声を聞いたものには、実に万感の思いに近いものがあります。前にも書いたけど、中島みゆきがまだそこそこジュニアな雰囲気をたたえていた頃に、中山ラビとか、浅川マキなんかともちょいとちがうわよ、ってかんじで、っつーか、ジャンルも違うわけだけど、とりあえずジャズやってた人。片岡義男の作品って、ちょっとなぁという私でも、安田と話すだけで、(・∀・)イイ!!ってかんじになるんだよね。そんな安田のアルバムを買わずに買ったのが、小暮はな『鳥になる日』。店のプッシュは、やっぱ「荒削り」な歌声。うううう。と思いつつ、ジャケツの説明を読む。

 飛ぶ鳥の如く自由に、宙高く舞い上がり天翔ける歓喜のうたごえ。悩みを浄化し至高の言葉へと変える不世出の歌手、衝撃デビュー。

 彼女は自分自身の内奥に起こる生命のドラマをうたう。自分の内側にある醜さや脆さ、悩みから、けして目をそらさない。じっと悩みに耐えつづける。やがて、澱みは濾過され透き通ってゆく。そして−−。内面のカタルシスは悦びのうたごえとなってあらわれる。両の翼を得たうたごえは宙高く舞い上がり、天翔ける。「鳥になる!!」。

 たしかに「荒削り」だなぁ・・・。と思うでしょ。なんで引用するのよとか。たしかに制作者の#1のモチーフは飛翔と透明感なんだと思うし、声に独特のものがあることはたしかなんだけど、それだけなら小谷美紗子に似ているだけとか言う椰子もいると思う。だけど、小暮は制作者をこえて、ぶっ飛んでいる部分もあるということが、聴いてみてあらためてわかる。流して聴いていたら、#3で、空の向こうに背の高い宇宙人がこちらをみている、ふと反対側をみたらおなじような宇宙人がいるではないかとかゆってるの。ええ?!と思い、歌詞カードをみる。#5「せみがひっくりかえっていた」なんて歌もある。で、ありが料理をしようと思ったら、「せみの手足が動いた」。これがまたララバイみたくうたいあげるの。わはははは(・∀・)イイ!!。鳥肌もの。#6「穴があいていた れんとげんをとってもわからない 穴があいていた」。メロディーはなつかしくてぴたっと来る。#1もいいけど、NSPとか聴いた世代にはこれが一番イイと思うかも。#8「あなたはひとつの秘密 ふふ うれしい あなたは二つのひみつ へへ まんぞく ランラ ランランラン」。#10「ハトが歩く ハトが歩く 石じゃり」。おいおいハトが歩く歌なんてはじめてだぞ。すごすぎ。わははは。笑っているけどさ、嘲笑じゃないんだよ。馬路、すげぇアレゴリーに、っつーか、どこかなんとなくっつーか、トラウマなんだよね。でもって、突然小谷美紗子にへんしんして、っつーか声はもっと透き通っていて、ドスがきいているというか野太い感じだけど、らいらいらい〜と、歌い上げる。スゴイよこれ。戸川純の「諦念プシガンガ」なんか児戯に見える。たしかにめっさ「荒削り」。#1の飛翔滑空は、東京エスムジカなんかの洗練された表現と比べると、言葉がうるさいと思ったけど、なんか最後は小暮ワールドに飲み込まれマスタ。きいたふうなこと言えば、いろんな要素が入っていて、未整理なんだなぁ。方向性が一つにビシッと決まると、ウレセンなんだろうね。でも、このままでいい気もする。私も方向性決まらないから、自己弁護に聞こえるカモね。
 もう一枚は、『ZOO−−夜の幕の此方の』。似たような名前の後輩がいて、編集者かなんかしているはずなんだけど、田崎英明氏から吉祥寺の曼陀羅に出ているとの噂も聞いていた。同じ人とは限らないけど、一応買った。こちらは、クラッシック他、インテリジェンスな趣向がややうるさいけど、「荒削り」に知的な不安定を創りだしている。そこそこにイイと思った。なくならないうちに安田南を買いに行こう。お茶も飲みたいと思ったけど、常連な人がいたのでやめたけど今度は飲みたいと思う。儀礼的無関心でほっておいてくれる店だといいんだけどね。高円寺のガード下にこんな店だとかが都丸書店なんかといっしょにならんでいるのは、なななか萌えな風景であった。