美音堂・円盤@高円寺−−浜田真理子『こころうた』を聴く

 ブログを書いていたら、ブラックアウトして文章が消失。殴り書きにせよ、ほとんど書き上げたところだったので、それなりにショック。やっぱ98年発売4ギガHDのメモリも確かめるのも恐ろしいという状況では、論文を書くのが怖くなってきました。まあブログでよかったということでしょう。っつーか、やっぱ明日にでも、パソコン買おうかと思っています。そのために研究補助金とったわけだし。
 ブログで書いていたことは、新星堂に久しぶりに行ったということですね。書いたのは、『ZAZEN BOYS2』と浜田真理子『mariko live 〜こころうた〜』を買ったということですね。要するに。前者は、非常にギターがかっこ(・∀・)イイ!!。だけど、売り物のはずのビートリズムなどもろもろがわたしにはちょっとキツイかんじ。なんかもうギリギリのところで、曲としてのゆるやかなまとまりをつくって、かつ疾走するという離れ業であり、もう少し聴かないとわからないというかんじです。
 でもう一枚の浜田真理子。ライブ版のなかでこれを一番最初に買った理由は、「水の都に雨が降る」が入っていたこと。松江の歌。素晴らしい。ただこれもカバー曲だった。地元のミュージシャン安来のおじの「二枚目」というアルバムに収録されている。地元のレコード店がブログやっていて、そこに紹介されている。消える前はリンクまで貼ったけど、さすがにタグコピペはめんどうだからググって下され。素朴な歌詞で、詩句の出来不出来が激しいが、瞬間最大風速はすごいものがある。
 これは浜田のライブも一緒。音をはずしたり、噛んだりしている。たぶん『情熱大陸』でも言っていた極度の緊張と心身症状なんだろうと思う。だけど、そういうなかでもときおりビュッと凄みのある、ドスのきいた、あるいは艶と含みのあるひとふしがある。ライブならではだとも思う。「The Crow」は特にすごいと思う。*1でもって、美空ひばりの「柔」、勝新太郎の「座頭市」でゴスペルして、「安来節」でロックする。音楽の境目を遊ぶというような作品性を、趣向的なつくりものではなく、ひと節のうなることで、作品として凝縮する。まぜまぜの作品性として面白いと思う。また、「朝日のあたる家」を浅川マキ訳「朝日楼」として歌っている。*2この他箱崎晋一郎「抱擁」ほか、スナックソンクが選曲されているのを見て、玉造や松江のスナックで歌っていた浜田の姿を想像した。
 浜田真理子の作品は、非常にシンプルなジャケツと、歌詞カードが、とてもステキなわけだけど、この作品については、分厚い歌詞カード・ノーツがついている。*3でも、本人のべしゃりはライブのなかにしかない。書いているのは美音堂の社長、名古屋昭博、それと近藤ようこ。やっぱ近藤はファンなんだね。近藤のノーツには、「赤いドレス」という近藤らしいイメージ喚起力のあるタイトルがついている。そして、「まぜまぜ」「越境」の遊びについて、赤いドレスを着た大人の女として視覚化しようとしている。(・∀・)イイ!!。たいして名古屋のノーツは触覚を刺激するモノになっている。
 で、社長のノーツだけど、情報満載。美音堂の事務所を高円寺に移し、文字通り自主制作のレーベルとして、インディーズというのとも違うかたちの活動をしていると言う。そういう作品をそろえたCDショップ、喫茶店、バー、ライブスペースを兼ねた円盤というスペースをつくったということも紹介されている。これも消えたのではリンク貼ったけど、ググって下さい。お茶も飲めるし、中古CD、自主制作などのCDが揃っているらしい。もちろん美音堂レーベルの作品も。とても(・∀・)イイ!!と思うのは、CDウォークマン持参すれば大歓迎で試聴できるらしいということ。試聴機がごちゃごちゃならんだ、大規模CDショップももちろん面白いが、昔のシカゴブルースストリートみたく、いろんな店がずらっとならんでいるみたいなのもものすごく魅力的だと思う。こういう知恵をいろいろ出し合い、持ち合うことは大事だよね。
 わけのわからない小さな店がいろいろならんでいるってワクワクする。そういえば、三浦展氏の『ファスト風土化する日本』とも重なるんだなぁ。一時三浦氏は、高円寺を大プッシュしていて、その主旨が雑多な小さな店がならんでいることに求めていた。そんな場所を紹介した東京案内が『大人のための東京散歩案内』だろう。これに対して、私鉄沿線のターミナルビルの画一的店揃えや、地方の郊外型車直づけブランドショップスタバタワレコシネコンゲーセンセンターの画一性はなんなんだろうというのがファスト風土論の論旨だと思う。まあただ、店にもよると思う。浜田真理子たちをブログで紹介しているレコード店は郊外型だ。また、大阪の地下街は非常に猥雑な魅力に富んでいる。井上理津子『大阪下町酒場列伝』(ちくま文庫)には、地下街やなにかの店も紹介されている。あと、三浦氏が前に個人的なリーフレットかなんかで言っていたのが、中野のブロードウェイ。ビルだからダメってワケでもないだろう。アメ横なんかもそうなのかなぁ。工夫次第では山奥だって行けると思うけど、それはまた別の話。あーあ、時間の無駄しちゃった。 

*1:まあ言ってみれば室生犀星みたいなもの。三好達治が「つち澄みうるおい・・・」という犀星の詩句に惚れ込んでいて,犀星を芥川と比較したことは石川淳から折々のうた著者までが論じていて、つとに有名だけど、それを思い出した。芥川龍之介は百発のうち九十九%的に当たるのに、犀星は九十九%はずす。しかし、犀星が的中させる一発は芥川には氏んでもあたらないものである。

*2:浅川は表題も、工夫して変えているわけですね。女郎屋っぽく。

*3:私はノーツほしさに、一切輸入盤を買わないとぜいたくをしているので、とてもうれしい。