兼田みえ子「詠み人知らず」をめぐって

3月頃、文化社会学掲示板に書いたことだけど、そのときちょっとレスをいただいたし、ここの方がアクセスが圧倒的に多いこともあり、また瀬戸行きを前に思い出したので、加筆しながら、貼っておきます。滞在中はこんなことすらできないかも。−−
 東京に帰って、まず都内のCDショップを探し回ったのが、メラニーの「悲しみの足音」でした。中学のころ、となりの家でもらったトランジスタラジオで聴いていた曲です。ディスクジョッキーがクラブのそれみたいにキュッキュなんてせず、*1ラジオのパーソナリティだったころのお話です。その後、メラニーリバイバルしたりしたせいもあり、けっこう輸入盤はショップにあったし、ベスト盤みたいなのもあって、二枚ほど買ったけど、原曲名がわからず再会はなりませんでした。
 それがこの前なにげに検索していたら、楽天で『Radio Years: Vintage Pop File Again!』というアルバムに、「悲しみの足音」が入っていることがわかりました。迷うことなく注文、まもなく届きました。2分ちょっとの曲だったんですね。今聴いてみると、フォークローレ仕立てっぽく、同時期流行ったS&Gのエルコンドルパサだとか、スカボロフェアーだとかと、似たような路線といえないこともないッすけど、もう涙もんでした。一緒に入っている曲も、ショッキングブルー「夜明けの太陽」などのなつかしい曲や、「二人の天使」「イエローリバー」などのもはやスタンダードナンバーとか、目白押しですた。
 そのなかで、ひときわ目をひいたのは、「口笛天国」@口笛ジャック。深夜三時、これ聴くためにだけ徹夜勉強した*2という「走れ歌謡曲」@文化放送のBGM。落合恵子が、一番輝いていた頃の番組ですね。落合は別格の人気で、深夜一時からの「セイヤング」*3にまわり、文筆家になってゆくわけだけど、わかりもしないのに糸井ごろうや、福田一郎のDJがいいとか言い張っていた連中ににんきがあったのが、兼田みえ子です。
 なんか、今で言うと、黒百合姉妹だとか、『傷だらけの天使』のころの岸田今日子とか、あるいは広田レオナとか、ま、そんなふうな傾向性をもちっと女子アナっぽくしたというか、ゴシックな雰囲気を漂わせていて、痩せてボーイッシュな浅川マキというか。それが、番組でわけのわからない歌の話をしているうちに、ノリノリでわけのわかんない話になって、シングル「詠み人知らず」なんてものまで出しちゃった。もちろん私は買いました。日本の古典文学仕立て、「春は宵、秋は夕暮れ・・・」なんて始まりまして、おのこ、めのこがしっぽり、ずっぽしみたいな歌詞が続き、でもって「清少納言が笑ってる ほほほほ」見たいに終わる。「ほほほほ」というのは、M男コーラス隊みたいなののコーラス。パンクでしたねぇ。その後、『水鏡』とゆうアルバムになったんだけど、それをみつけるのが、次のしごとになりますたねぇ。ないんだよな、これが。
 走れ・・・の裏番組で、TBSが「歌うヘッドライト」という、同じくトラック野郎向けの番組はじめたんですけど、こちらは江川範子のやつだけ聴いてました。こちらは声もよかったけど、文学談義なんかが面白く、聴く人に媚びず、トラック野郎相手にヘンリー・ミラーとか平気で語って、それがけっこううけたりして、なんかやりたいようにやってましたね。斉藤哲夫の『ダンサー』なんか毎週かけたりして。あのころの中島みゆきさんのDJは、騒がしく=若々しく、そして片岡義男や安田南のDJは、馬路大人っぽかったと思います。FMだったし。寮の同室の先輩はこの番組が好きで、みゆきさんや兼田みえこはみとめてなかった。
 ともかくですなぁ、兼田みえ子の録音あったら、アーカイブとまでは言わないけど、そんな傾向のものをコンピレーションみたくして、出して欲しい。あんまり買う椰子いないだろうねぇ。というか、オンデマンドで創ってくれるようなシステムがあるといいんだけどなぁ。出版のグリーンウッドみたく、バカ高くてもいいからね。

*1:あれって、アテクシが一番はじめに聴いたのは、意外にもハービー・ハンコック@ファンクなんだけど。

*2:深夜放送人気ありました。『深夜放送ファン』なんて雑誌まであった。

*3:みのもんたとかもやっていた