タクシーのぢぢいの理屈

 タクシーに乗ったら、いきなり「お客さん、むかつかない?」と聞いてきた。おいおいぢぢい、なにを怒っているのよと思ったら、要は近鉄併合っつーか、プロ野球再編のことなのね。オーナーのぢぢいが勝手にそんなこときめていいのかっつーわけ、って、あんたもぢぢいだろってかんじだけど、その理屈がふるっていて、「イキじゃねぇーよ。あいつら。昔で言えば相撲のタニマチだろ。おだいじんは、金ぽーんとはらって、これを使いなよってかんじだろ。それがイキってもんだよ。その点、岸しんすけさんは、偉かった。イキだった。ぽーんと金出してね。そのかわり、京都の料亭なんかで、柏戸大鵬をの2横綱に芸者衆と交わらせて、それを肴に酒飲んでたんだから。そのぐれぇじゃねぇとな。ナベツネって、大勲位だかの友達っていうと、岸さんなんかともかんけいしてるはずなのにだめだね。ありゃ。あいつもと共産党かなんかだってね。だからイキじゃない。アカはだめだな」とか、もうおーウソ炸裂だけど、名調子に腹抱えてわらっちゃいました。一リーグ化を、「アカ」のせいにしちゃう理屈はむちゃくちゃだけど。実は岸しんすけネタは、他でもきいたことのあるネタで、まあ一種の左翼ギャグなんだろうね。ぢぢいは、それをどこかで聞いて、岸さんは偉い人に我田引水したと思われ。
 まあしかし、ぢぢいの理屈はともかく、もしドル箱の巨人戦わけあってなんとかしましょうやみたいなだけだとすれば、なんか枠組み古くないか??ッテ思う人は多いんじゃないかなぁ。言ってみれば、力道山豊登ジャイアント馬場と、インター王者をつくってそれで屋台骨もたせていた日本プロレスみたいな枠組みなんじゃない。当時、猪木はコブラツイストで人気が出始めていた。それだけじゃなく、中堅にもいい選手がたくさんいた。グレート子鹿なんかは、ロスにわたってミル・マスカラスの目に辛子すりこんでタイトルとったりして、憎しみをあつめ、かなり悪役スターだったのに、帰国したら萎え萎えで、ダメだなぁーと子供心におもったりしたもん。若手も、日曜夕方六時台に前座プロレスみせる「ヤングプロレスリング」なんつーのをやっていて、人気あったはずなのに、当時の納得は、やっぱり馬場で、いろいろな可能性が失われていったように思う。でもって、猪木がブレイクして、相対化はされたけど、枠組みは温存されてて、あとは衰退の一途をたどった。野球がそうならないとは言い切れないよね。
 かならずしも、巨人が悪いとも思わないんだけどね。大砲が6人もいる打線なんか、ぶっとびますもん。ギター五本のローリングストーズ思い出しちゃったりする。あべの大砲ぶりは、巨人が待ち望んだものだろうし、二岡も、にしも、昔の末次、柳田には及ばないだろうけど、って、あの巨人ファンの矢野顕子が応援歌つくっちゃったくらいだし、面構えもすごかったしね。清原もすごいし。プロ野球というリアルはとっくになくなっているのかなぁ。昔のプロ野球ニュースは面白かったよね。一年中プロ野球でもったわけだし、全チームを公平に採り上げて、解説者がついて全試合をじっくり放映した。おかげでめったに見られなかった村田兆じのマサカリ投法だとか、鈴木啓しの草根節も聞けたし。日本シリーズ加藤哲郎「巨人なんてロッテなみ」発言の面白さもわかったし。選手のふるさと紹介も面白かった。高松の栗林動物園のウンコ投げゴリラにはわらったけどな。有名人でもなんでも、ウンコ投げまくり。気をつけましょうって、あれじゃどうしようもねぇわな。フジテレビはそれをうち切ってスポルトにしたわけだけど、面白くなくなっちゃったのかな。ただね、外野席で大騒ぎして応援するのは、絶対いまだに面白いはずなんだよね。サッカーの地域密着は実はかなり眉唾だと思ってるんだけど、大騒ぎの面白さはサッカーの方がよくわかってんじゃないのかな。大騒ぎの「場」を大事にして、つくっているから、新潟みたいなチームもできる。要するに、結論はないんだけど、川崎のファン、福岡のファンにきいたら、いろいろみえてくるんじゃないかなぁ。ちなみにうちの近くはベイスターズファンが多い。だけど、ベイのファンは地域密着ってわけでもないし。野球ジャーナリズムには、面白がり方をいろいろ教えて欲しいものですね。景気がよくなったらなんて言わずに。