三浦展『第四の消費』

 三浦展氏から本をいただいた。恐縮しています。いつもながら本当にありがとうございます。3.11を経て、震災復興とも対峙した三浦氏が「つながりを生み出す消費」「つながりを生み出す社会」に論じ至っていることは非常に興味深い。タイトルもよいし、代表作の一つになるとよいなと思いつつ、ページをペラペラとめくり、そしてネットサーフを行った。

第四の消費 つながりを生み出す社会へ (朝日新書)

第四の消費 つながりを生み出す社会へ (朝日新書)

少数の中流階級が消費を楽しんだ第一の時代。
高度成長の波に乗り、家族を中心とする消費が進んだ第二の時代。
消費が個人化に向かった第三の時代を経て、消費はいま、第四の時代に入った。
伝説のマーケティング情報誌『アクロス』編集長として一時代を画した著者が、30年の研究をもとに新しい時代を予言する。
80年代を知らない若い世代にとっても必読の入門書。


第1章 消費社会の四段階(第一の消費社会(一九一二〜一九四一年)
第二の消費社会(一九四五〜一九七四年) ほか)
第2章 第二の消費社会から第三の消費社会への変化(第二の消費社会と第三の消費社会の違い;消費の高度化、個人化 ほか)
第3章 第三の消費社会から第四の消費社会への変化(第四の消費社会と基本としてのシェア志向;シェアというライフスタイル ほか)
第4章 消費社会のゆくえ(消費社会の変遷と世代の対応;第五の消費社会に向けての準備 ほか)
巻末特別インタビュー 「無印良事」の時代へ(辻井喬氏)(消費者の第一の解放―一九六〇年頃;消費者の第二の解放―一九七〇年代後半 ほか)


【社会科学/社会】高度成長、オイルショック、バブル、そして長引くデフレ……日本人の消費は発展段階に応じて変遷し、消費の単位も「家族」「個人」と変わっていった。次に消費が向かうのはどこか。消費社会マーケティングの第一人者が大胆に描く近未来予想。http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4022734450.html

 下流を馬鹿にする人と思っていたけれども今度は違う、というような、意外感を表明するブログやつぶやきが散見される。しかし、三浦氏の立論にはまったくぶれはないと私は思う。郊外化も、下流社会も、街散策も、そしてウェーバーの翻訳も、見田宗介との対談も、もちろん辻井喬との対談も一貫した立論であり、80年代消費を牽引したマーケッターとしてのオトシマエをつけるものになっている。
 「つながりを生み出す・・・」にしても、団塊ジュニアの消費を論じた際に、当時はまだ人口に膾炙していなかったコンシェルジュというコピーとともに、提起していた。実例としてあげられていたのは、アマゾンのおすすめ、伊勢丹の化粧品売り場、i-modeなどである。このような社会性、関係性と消費の倫理を関連づけて考えるところに、三浦展氏の立論の特徴があるように思う。それは、マルクスウェーバーと対峙し、勤労の倫理再構成を考察したパーソンズと消費の倫理(ボボス)も積極的に評価し立論を行ったダニエル・ベルという社会科学的な知識に裏打ちされたものであることを、私は知っている。
 消費の単位が、国家→家族→個人→社会と移り変わる、というのがなぜ第四の消費化、という理由になっている。社会学者においては、80年代の消費の自己目的化、金融資本主義の展開、そして格差社会、リスク社会の進展などがすっ飛ばされている、という不満を持つ人もいるのだろう。しかし、80年代消費のなかに、というか、消費社会の進展のなかに、つながりを生み出す消費が胚胎されていて、それが顕現しつつある、という道筋を明視し、股ぐら一本スジ通して、ガシッと示し、新しいビジネスチャンスを求める顧客に貢献することが目指されているとも解釈できる。