藤田哲司『権威の社会現象学』

 うちの大学で社会学理論学会があり、生まれて二度目になる懇親会というものに出た。その後二次会に行き、ワシは50台だぞごるぁあということで、見栄はって少しだけ多く金出したら、気を遣って本を贈ってきてくださったのが藤田さんである。返信がすっかり遅れてしまい申し訳ありません。そしてありがとうございました。
 権威の発生をめぐる実に骨太な思考が展開されていると同時に、「ポスト『生の技法』的な世代」(勝手な私の言い方)ならではの独特のスタイルを併せ持つ作品で、天田さんたちの生存学とも違う、興味深い独自の世界を提起しているように思われた。

権威の社会現象学―人はなぜ、権威を求めるのか

権威の社会現象学―人はなぜ、権威を求めるのか

内容

「権威」というメカニズム解明に必須の武器(ツール)
権威を求め、受容者を集団化し、その長期持続を願う人類共有の心情は、
ひいてはすでに虚妄と化した権威の固着化さえ生み出す。
今回の東日本大震災に際し、政府、企業、学者らが露呈した、
もはや幻想でしかないこの種の権威を我々は速やかに解体せねばならない。
権威という現象をめぐって蓄積された知見を精細に分析・整理し、
自発的受容と自立的判断放棄を迫る権威のメカニズムを的確に解明した
本書は、そのため必須の武器(ツール)となるだろう。

目次

はしがき──「人はなぜ、権威を求めるのか」をめぐって
序:本書のテーマと構成―自発的遵守と私的判断の放棄としての権威―
第1章 権威の発生(1)─“authority”語源三要素とその継受―
第2章 「権威」の発生(2)─定訳の権威の源流と成立をさぐって─
第3章 局面配列としての権威―権威過程的接近―
第4章 敬意対象としての権威―高齢要素重視へ向けて─
第5章 3つの権威観―縦糸型権威から横糸型権威ヘ─
第6章 私的判断放棄と現代社会―権威継続をもたらす縦糸的問題─
第7章 敬意が排除を生み出すとき―権威継続をもたらす横糸的問題─
結 び―権威の動態的把握と高齢要素の現代的意義─
文 献
索 引

曽良中清司先生の門下のようで、ご遺族のお言葉が添えられている。曽良中研究室と言えば、十年以上前にうちのゼミ生が入院したところで、ご指導ぶりについてはその卒業生から聞いている。それに照らすと、著者の思いの丈のようなものも、おぼろげに見えてくる。この時代に、このような分厚い本を出されたことを、とても羨ましく思う。こちらは、企画書を送ってもなかなか相手にしてもらえない状態であるので.しかし、それも私の勉強不足と思うので、これを刺激にまた一がんばりしてみたいと思う。今後ともよろしくお願いいたします。