厚東洋輔『グローバリゼーション・インパクト』

 仕事も一段落で、さぁ、入試だ、と思っていたところに、世界思想社から社会学ベイシックスの念校が届きました。まさに真っ赤っかの書き直し三度。怒られてのびるタイプの私としては、非常に至福な時間を満喫できてウハウハですが、ケアレスミスも多く、編者に申し訳ないかぎりです。政治の巻もついに3月に出るようです。
 すごく忙しかったせいもあるのですが、ミネルヴァ書房から叢書・現代社会学というシリーズが出ていることを、始めて知りました。『社会分析』、『社会学とは何か』という書物は書店で見かけた記憶はあるのですが、来年度概論の担当だし、準備段階で『Do!ソシオロジー』と対比しながら読んでおこう、とφ(..)メモメモするにとどめておりました。
 今回シリーズの全容を知り、非常に楽しみになった次第。社会関係資本三隅一人社会学の使い方=佐藤俊樹社会的ジレンマ=海野道郎、都市=松本康、社会意識=佐藤健二、メディア=北田暁大、比較社会学=野宮大志郎、ボランティア=似田貝香門、アイデンティティ浅野智彦ジェンダーセクシャリティ加藤秀一、貧困の社会学=西沢晃彦、社会学の論理=太郎丸博、仕事と生活=前田信彦、青年の戦後史=片瀬一男、福祉=藤村正之、社会システム=徳安彰、グローバリゼーション・インパクト=厚東洋輔というラインナップで、さっそく全巻予約をかけ、さらに図書館にも入れてもらうことにしました。
 叢書を知るきっかけは、厚東洋輔先生から、『グローバリゼーション・インパクト』という御本をいただいたことです。ほんとうに恐縮いたしました。心よりお礼申し上げます。前著においては、グローバリゼーションについての体系的議論をコンパクトにまとめて提示されていたものが、今回はウェーバー研究という原点に帰って、じっくり考察されています。いくつかの章は評論で読んでいましたが、いくつかの章は未読であり、まとめて出版されたことは非常に嬉しいものがあります。私のような者にコメントできるような本ではないとは思いますが、僭越は承知で何か言ってみたいと思います。
 私は社会学史を講義するときにずいぶんウェーバーを読み返したのですが、参考文献というか、「ネタ本」として手引きにしたのは、佐久間孝正先生の比較社会学研究です。そこでは、合理化、物象化が鍵語になっており、国際比較、グローバル化という議論への橋渡しが明確にされていました。なぜ西欧においてまずもって高度な資本主義が形成されたか、という問題は、上記のDo!から、徳永恂や大澤真幸の宗教社会学的な議論を読むたびに反芻してきました。昨年秋に学会報告した際も、ウェーバーをめぐって、ミルズとパーソンズはかなり真摯に向かいあっていたということを再確認しました。そして、パーソンズは、異例なくらいミルズを激しく論難したわけだけれども、異例なくらい誠実にその批判を受け止めて、メディア論や社会進化論を生み出したということを実感しました。
 しかしなお合理化のドラスティックな進展と、20世紀的な暫定的な枠組の解体、そして第二の大衆化?と動員の論理といった問題群がおぼろげに見えてきて、頭を抱えていたところに本をいただき、非常に刺激的でした。
 こうやって目次立ててみるならば、大きな特徴の一つは、ハイブリディティの問題を取り上げて、明確に内容的な議論をつめていることだと思います。サブカルチャー論的にも重要な議論であることは言うまでもありません。次に、アジア社会の問題を取り上げていること。これは国際的な問題提起なども視野に入れたことのように思われました。内藤莞爾メモリアルで、対談などをみてみたい気もしました。官僚制の章では、ゾームの教会法からカリスマ論を省察した先輩の修士論文を思い出しました。
 まだめくった程度で、当てずっぽうな感想しか述べられませんが、いろいろ勉強する手がかりが得られるような気がいたしました。ミルズのパワーエリート論を書いたことは、偶然ながら、非常に重要なきっかけのような気もします。中村好孝氏との共著ですが、いろいろ編者にご指導いただいた結果、けっこう気に入った作品になるような気がします。それを踏まえながら、また何か言えればと思います。