医龍伊集院考

 ようやく集中も終わり、今日の飯は何を食うかと思案中である。欝なことにおよべは水曜休みなのだ。それで検索したら、潮来さぬきうどんはやっているらしい。ここの太いうどんはものすごいこしが強いだけではなく、噛むと小麦の良い香りが鼻を突き抜ける。昼時は近くのサラリーマンで満員だ。入れるか不安。青空のとんかつや華光軒はちょっと重いかなぁ。ゆっくり休みながら、ビックコミックすぺりオールを読む。医龍の絵は、マンガの「間」に新境地を開拓しているように思えてならない。カットの切り取りで、瞬間のキラリ、ギラリなどが、巧妙にメディア表現として峻立してゆくように見える。絵もそうだが、教養小説がすきという、痛い趣味を持つ人間には、こたえられないものがあるのだ。私小説、風俗小説、教養小説。痛いものは何でも好きだぞ俺は。で、思いついて、。リベラルアーツというカテゴリを作ってみることにした。自己形成や教養に関することを書いてみたくなったのである。後は、大学の改革論議なども、ここで書けるのかもしれない。岡山の教養部、現在の文理学部、私に教養があるなどとはとてもいえないのだけれども、教養を問題にする部局で一貫してやってきたことだけは、隠しようもない事実なのであるから。岡山でそれを再確認するのも悪くはあるまい。
 医龍というマンガは、勧善懲悪の明快な図式で、読者の快哉を喚起するという類のものではなく、両面を描き、その間にあるものとして、人物や人間関係を描いてきたことは、わざわざいうまでもないだろう。加藤助教授は、野心家の医学者であると同時に、医療改革という気持ちをそこに秘め、患者や看護士とのヒューマンなやり取りも記憶している人物である。しかし、敗北の美学に話を落とし込むのではなく、権力と正義の両立というスタイルにおいて、人物は輝いて見える。アメリカ帰りの亀頭先生もしかり、野心と権力が、素朴や正義をそっとやさしく包む、と同時に損はしない。ドラマでは阿部サダヲが演じた麻酔医の荒瀬も、正義と金をわかりやすく背負っていて、パロディのようですらあるが、ドラマのマグマとなっていた時期もある。教授たちはとことん食えない存在みたいでもあるが、若き日の姿なども時折描かれ、学生運動を闘った世代の葛藤などもにじませてある。しかし、すぱげっち食うカットはすごすぎるけどね。もちろん霧島も、強さと弱さを混在させている。朝田だけはわけわかめだけどね。
 伊集院の成長は、今の若い人が読んでどう思うのかわからないけど、モラトリアムなんてことが言われだしたころ、それなりに模索をした私にはなかなかずんと来るものがある。朝田について、成長してゆく、それだけのことだと思ったのだが、霧島という対極を設定し、その間に伊衆院をおいたのは、すごいことだと思う。霧島は、単なる悪役ではなく、地に足の着いた標準化をあらわすものにもなっている。伊衆院は、「凡庸なもの」として存在しているわけだが、その「凡庸」が、いろいろなものを吸収して、伸びてゆくさまは、読むものに勇気を与える結果となっている。最近のマンガやドラマなどは、これって結局シンデレラコンプレックスみたいなもんじゃないのといいたくなるくらい、頼れて、癒される人が出てきて、問題を快哉だぜ!みたいに解決しちゃうわけだが、このマンガにおける「よっしゃ!」は、もう少しいろいろな印影をこめてあって、その含みが瞬間の「間」として、絵になっているのは、馬路すごいことだと思う。
 このマンガに関しては、再読するときに筋を追うのではなく、気に入りのカットをじっくり見るということが、意識化される。これは前から無意識にやってきたことだと思うのだが、西原理恵子の俳句的とも言いたくなるような「間」の表現とも違う、面白い表現をここに読むことができるように思うのだ。岡山に来ると、どうも力みかえってしまう気がする。しかし、それはもしかすると力をもらうということかもしれない。プリントアウトしてきた原稿に目を通したら、やる気がもりもり出てきた。しかし、その前に採点がある。あーあ。w
 ということで帰ってきました。お昼、−−というか朝というべきか−−は潮来さぬきうどんで食べた。ホテルアネックスは、チェックアウト後もチャリを使わせてくれたのでチャリで行く。前回夕方行ったらやっていなかったわけがわかった。営業が11時20分から2時半になったんだね。昼のみ。昔は夕方から8時くらいまでやっていたのだが。昼の混み具合をみれば、それもありとは思うが、私がいった時間はまだ混んでいなかった。表の中国銀行の昼休みがまだだったからだと思う。肉うどんの野菜天入り。他の人がぶっかけを喰っていて、ちょっと後悔したが、前は肉うどんばかり喰っていたし、まあいいっかってかんじです。ホントはざるを喰いたかったが、これはゆであげなので一見では申し訳ない。うどんは前より少し柔らかくなった気もした。前は「かたいとかゆう椰子は来なくていい」というくらいの気合いだったが、さすがに妥協したのか。しかし、ともかく風味はここのものは独特で、小麦に味があるということがよくわかる。これが一番わかりやすいのはここのうどんかもしれない。
 疲れたが、学校に出てきて用事を済ませ、ともかく帰って採点。インパクトをみるのは明日以降。それから、泳ぎにいくかも未定。さすがに疲れたが、身体を動かすのはこりを取るにはイイだろう。