早明浦ダム一気に貯水率100%に

 一昨日から、早明浦ダム周辺での降雨量や、ダムへの流入量、貯水率などを検索しては調べるということを日夜くり返していた。これは仕事が進まないための現実逃避とも言えるし、また昔から地理や地学が大好きで粘着的に調べまくったということもある。しかし、それ以上に94年の渇水のことが思い出され、心配していたということがやはり大きい。あのときは本当にすごかったようだ。職場の同僚が香川大学に非常勤に行っていて、香川の様子を話してくれた。やはりくっきりしたイメージとして刻まれているのは、トイレの話で、同僚の「人間の業というものを見た気がする」ということばが忘れられない。同じことは、阪神の震災の時も見聞きした。仮設トイレのてんこ盛り糞便の上で尻を浮かせて用便する諸行無常はなんとも言えないと、知り合いは語っていた。
 94年の渇水のときは、もうダメポというところで、台風が来て「神風」とまで呼ばれた。ところが前回の台風はググッと東にズレこっちに来ちゃったので、あたたたたであったわけである。台風14号は、甚大な被害を各所にもたらしたわけであり、不謹慎なことを言わないように気をつけなければならないが、渇水にとっては「恵みの雨」であり、再度「神風」が吹いたということにでもなろうか。それにしても、自然の力というのはものすごい。最初はあまり雨が降らず、四国を避けているのではないかとすら思っていたのであるけれども、そのうち猛烈な雨が降り出した。そして昨日まで0%だったのが、ものすごい勢いで水位が上がっていった。火曜日の夜八時には流入量5404.33m3/sというのだから、笑うしかない。2ちゃんでもよかったという声が多かった。「おまいらが雨乞いなんてするから、ものスゲー台風が来て、ものすげーことになっちゃったじゃないか。どうしてくれるんだ」などと、いかにも2ちゃん的な言い回しではあるが、降ってよかったなみたいな発言が続いていた@自然災害板。
 それにしても2ちゃんに集っている人々の情報量というものにはあらためて驚かせられる。私は貯水率などに関しては、アメダスと、四国新聞のサイトと、あと「早明浦ダム流入量」でググルとでてくる10分おきの流入量などを見ていた。地図と照らし合わせるのも大変だったし、吉野川の流域などを調べるのにずいぶん苦労した。ところが、2ちゃんで国土交通省の「川の防災情報」というサイトが引用されていて、ここに四国の主要ダムとリアルタイムのデータがでている。これをみれば面倒な照らし合わせは必要ない。
http://www.river.go.jp/
 しかもよくみてみると、全国のダムのデータがでているのである。こうなると、もう北から片っ端から見ることになる。一番高い堤のダムは?貯水量の多いのは?ダム湖のでかいのは?などなど次々に興味がわいてきた。こうなると仕事などそっちのけで調べはじめることになる。でググっていたら、「ダム便覧」というサイトがあることがわかった。日本のすべてのダム、世界の主要ダムのデータが網羅してあり、堤の高さ、貯水量などなどのデータがダムの様式(アーチ、重力式・・・)別にでている。また、いろいろなダムの写真がでていたりもする。寮の後輩の古山順一が若い記者時代に命がけで取材した徳山ダムは日本最大級のダムであること、岡山大学の同僚が反対運動にくわわっていた苫田ダムは中国地方では非常に大きいダムであること、親と旅行に行った岡山中央町の新成羽川ダムは重力アーチ式のダムとしては日本でもっともでかいダムであることなどがわかった。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TopIndex.html
 ダムは、ニューディール政策とセットで習う開発計画の要であり、また戦後の土建政治の象徴でもある。長野県政では、ダム行政が大きな争点となっていた。またダム造りで多くの人々の生活空間がダムの底に沈むことにもなる。早明浦ダムが干上がるとでてくる役場の建物も反対運動の象徴であるらしい。他方で、ニューオリンズの惨状が思い浮かんだ。そして、ふたたび寺田寅彦の『天災と国防』を読み直している。私が過日古本屋で5百円で手に入れた岩波新書版はよくみると横書きが右から左に書いてあった。え?!と思って奥付を見たら、昭和13年刊行の二刷りだった。敵の昇華と防災を結びつけたさりげない立論は、私の修士論文『反省と想像力』の要にあるものであり、ずっとそのまわりを考えてきたのだなぁとあらためて思う。