泣き虫ファイターのどつきあい

inainaba2005-01-03

 起きたら晴れていて、郵便物などのこともあり吉祥寺の家を見てきた。まだ雪が散見される。大学にも顔を出したら、本館前の庭はまだ雪化粧であった。5日ぶりの研究室だが、出張もあったあとで、ずいぶん久しぶりな気がした。早く戻らないといけないのだが、ともかく郵便物の整理などをして、あと本をザッピングして、家に戻り、火の元のチェックをし、とんぼ返りした。今日はタラちりというか、昔の湯豆腐。豆腐と塩だらとネギのみ。なべのなかに醤油とかつお節とネギの刻んだのを入れた容器をしこみ、つけだれをあたためるという、伝統的な湯豆腐である。今は風呂桶仕様のものなどがうられているが、うちはなんでもなべは土鍋である。ついでに言えば、なんでも調理は両手の中華なべである。
 なべのあと談笑していたら、今日がボクシングダブルタイトルマッチの日であることを忘れていて、途中からみる事になってしまった。第一戦のWBAフライ級タイトルマッチで、同級7位のトラッシュ中沼(国際)が、王者のロレンソ・パーラベネズエラ)に負けたことは、終わった後に知った。で、肝心のWBCスーパーフライ級タイトルマッチは、途中からみる事になった。豪打の王者川島勝重(大橋)と、同級1位のホセ・ナバーロ。無敗のエリート挑戦者対ドキュソ仕様の喧嘩ファイター川島。チャンネルを回したら、まず飛び込んできたのはリング上にどでかく印刷された永谷園のお茶漬けのりのイラスト。これを真上から怒アップ。おおやるぢゃんと思った。おまけにほぼ一社提供みたいで、永谷園の気合を感じた。煮込みラーメンとか、お茶漬けとか、ひつこいくらい製品が宣伝される。しかし、いやな感じがしなかった。なんてったって、この正月に、この時間帯に、ダブルタイトルマッチをやるというのは、やるぢゃん、やベージャン、すげージャンなのであるもの。
 で、川島の試合だが、スタイリッシュでクールなナバーロが川島のパンチを殺しにかかっているかんじで、ぢぇンぢぇンキカナイんじゃない、これってフォアマンのパンチを殺したモハメド・アリ?とか思わせるような展開。ナバーロの違いは、殺しまくるのではなく、足を止めて打ち合う。これが正確無比の精密機械のようなんだわね。よくみると、地味なパンチだけど、ペコポコあたっていることはあたっているんだわな。しかし、川島はもうギュンギュンにうってゆく。これが強力なパンチなんだけど、途中からバッティグで出血し、泣いてからが強い弱虫泣き虫君がでかいパンチをぶん回すカンジに見えないこともない。フックなんて、もうラリアット仕様というか、昔の「おかやまのおばあちゃん」で有名な藤猛選手のハンマーパンチのようなのね。あれは当たると一発で倒れたけど、こっちはバコンボコンてんぷるや、あごや、ぼでーにあたっているようなんだけど、ナバーロは倒れない。しかし、川島がすげーのは、ひかないんだよね。ともかく前へ前へと出て、打ちまくる。クールにかわしていたナバーロはさすがにびびったんじゃないの。最後の方は、けっこうパンチきいていた気がするもの。
 すげぇ喧嘩ファイトだとは思う。しかもこんな強い一位とマッチメイクした気合はすごいと思う。しかし、たおせなかったことで、課題は残ったんだろうな。60年代から70年代のボクシングをみた人は、たとえばファイティング原田や、大場政夫の狂ったダンスのようなラッシュ攻撃と重ねて、歯がゆいものを感じたのだろうと思う。僅差のスプリットデシジョンながら、アメリカ資本のすごく強い選手に、勝つには勝った。格闘技の師とも言える寺沢正晴氏のコメントを聞くのが楽しみである。
 でもさ、泣いちゃだめだよ。すげーつええ椰子はぜってぇナカネェよ。イチローが泣いたかっつーの。すげーがんばって、フルラウンドうち続けたことはもちろんすげーことだけど、あそこはさ、クールに「いつでも挑戦を受ける」とか、「今度はぶったおす」ぐらいのコといわなきゃ。「あけましておめでとうございます」にはわらったけどさ、「スタッフの皆さんに感謝します。ファンの皆さんに感謝します」じゃさ、マラソンの故円谷選手だよ。
 永谷園をはじめ、製作スタッフの情熱はひしひしと伝わってきた。永谷園仕様のリングも、けっこうかっこよく思えてきたりした。そして、勝者に永谷園全製品が送られるというのが、二回くらい繰り返されたのも、よし!永谷園喰ってやると思ったよ。どうせなら、全製品一つ一つ読み上げても、よし!と思ったかもしれねぇよ。そして、最後に西沢ヨシノリのバウトを時間ギリギリで放映したのも、強烈なメッセージだった。西沢は、苦労に苦労を重ね日本選手で史上最年長となる38歳11カ月で敵地ドイツに乗り込みチャンピオンマルクス・バイエルに挑戦した。強烈パンチでぶった押しながら、判定負けした。敵だらけのなかで、ちょび髭の西沢が、不敵な笑いでぶった押し、またKOパンチにも余裕綽々で、しかしまあ負けたことを、どうしても放映したかったんだろうなぁというのはよくわかる。最強のおやぢ西沢ヨシノリというコピーもイイ!クレージーキムが、この西沢に感銘を受けて、頑張っているみたいなわけだけど、なんかやっぱこういう椰子が出てくることは、けっこう重要だと思う。そして、川島はそこそこトラウマなファイターで、ひたすらにうちまくるファイトぶりが、クレイジーラッシュというよりは、殺し屋1のようなトラウマな泣き虫ファイターであることも、今時のヒーローなのかなぁとも思った。