岡山の休日

 朝起きたら、まだ雨降って嫌がる。吉祥寺の高校生じゃないけど、「うぜーうぜーうぜー」とセミのように呟いた。うぜーボタンがあったら、昔ゲーセンにあったハイパワーオリンピックくらい連打しちゃうよ。馬路で。シャワー浴びて、洗濯して、NHKで将棋とかうだうだみて、メシ喰いに外出。まず、青空というとんかつやにいってみる。893事務所ひしめき合う歓楽街にじぇんじぇん似合わない、深川あたりの路地の住宅みたいな民家を少しだけ改造した店。台風だからかなんだかわからんちんだけど、閉まっていた。でもって、中心街の商店街にある「およべ」といううどんやへ。昔は小さな店で、ともかくしっかり丁寧につくっているという感じの店だったけど、なんとなくセンスがいいなぁと思っていたら、ビル建てて、名店になっちゃった。岡山は確実に成功するには本格派のセンスのよさが必要な街だと思う。東京のまねとか、そういうんじゃだめなんだよね。無駄な金は絶対使わない人たちだから。ここのうどんはだんだん進化しているように思う。こぶにゆでたまごにあげ玉を散らしレモンをあしらった「はいから」、丁寧にねぎとうすアゲを刻んだものがのっている「きざみ」など、一つ一つにさりげないちょっとした工夫というか、昨今流行の言葉で言えば「仕事」がしてある。どんぶりも押し付けがましい講釈はないけど、なんとなく品がいい。そんな始まりで、しまり屋の岡山人の心をつかんだと思うけど、最近喰うたびにうどんの麺がうまくなってきている気がする。それは、わたしがかわっただけかもしんないけどね。いいうどんって、こしやつゆってさまざまだけど、噛んだときに本当にいい小麦のにおいがして、うまみが広がる感じがすると思うんだよな。通を気取るつもりはじぇんじぇんないんだけどさ。香川の人も、「うまいうどんは味噌汁で食ってもうまい」とゆってたし。
 でもって、そのあとは買い物。親のところと、弟のところにマスカットを送った。マスカットはこっちは農園などに買いに行くとメタくそ安い。東京で6000円くらいのものが、馬路1000ちょいくらいでかえることすらある。若手教員でたまたまドライブしていて農園を発見して、寄ってみて、話し込んで、みんな大喜びで親元だとか恩師に発送。一万円とかゆうと、すごい量になる。面白いので、そのときアテクシは、親と、あと指導教官だった佐藤毅さんにドカンと送った。佐藤さんから電話があり、「君、何万円送ったんだ?つけとどけのつもりか?」、アテクシ「センセーに、そんな何万円も送るわけないじゃないですか。一万円もしませんよ」。佐藤さん「なんだそうか。ふーん」、ってがっかりするなよおさーんと笑っちゃった。考えてみると、面白い先生だった。われわれがへべれけに酔っ払って、「サトウクン、よぼーぜ、いっしょにのもーぜ」見たいな話になり、一番後輩の私が電話して、「サトウクーン、飲みいこうよ、ぱーっとさ。いこうぜ。おさーん」とかゆったら、「君たち人を呼び出すのに国立までこいというのか?吉祥寺までコイ!」と一喝され、「来るってよ」「ありえねー」とか無責任なことを気合で言いつつも、北野タレント名鑑のガダルカナルたかみたいな気分でびびって、吉祥寺にむかい、馬路タクシーで駆けつけてきたセンセーを前にわれわれの情けなかったこと。でもって、サトウクンは「いい機会だ」とかゆって、一人ずつケロケロになるくらいまで、説教された。たけちゃんだとか、寅さんのたこ社長そっくりだとか、めちゃくちゃ言ったけど、学会行って、ふけようぜみたいな提案して、宿で平均年齢三十歳以上の院生たちが、布団蒸しやるのを肴にのんでたんだから、面白かったわなぁ。「先生ひたいにハエがとまってますよ、やばいんじゃないの」とかゆったら、そのあとガンになり、完治するも血液のガンになり、退院間際に見舞いに寄った私が「先生の一番好きなものもってきましたよ」と言い、お金をピラピラさせたら、「ニャハ!!きみもあいかわらずしょうがねぇなぁ。ガハハハハ。だけどさ、おれももうだめかもしれないよ」とかゆうから、「んなことないっしょ、なんとかよにはばかるって言いますし」とかゆったら、そのあとすぐ亡くなった。まあでも、今考えるとすげぇ話のわかる人だったと思うね。っつーか、いろんな先生にお世話になったけど、権威的で、高圧的な人なんていなかったように思う。恵まれてるってよく言われます。
 などと、昔話が過ぎたかもしれないけど、話はマスカットだよな。岡山では安いはずのマスカットを高く売っている萬花そうというお店があり、ここから送った。岡山人が高い金を出すだけのことはあるものです。フルーツ王国なんていうけど、とんでもないものがあるよね。山形の桐の箱入りのさくらんぼ。マスカットはそういうのはない。桃はあるよ。戦慄が走るようなのが。一個で桐の箱がにあいそうなのもある。むかし馬鹿親に送ったら、「馬鹿じゃねぇの、お前。こんな安いものこんなはこにいれてどうするんだ?ぼったくられたんじゃねぇか」なんて電話かかってきて、むかついた。上は、いくらでもあるのよ。一般庶民では頼めないようなのが。地元のセレブのお使い物などは、独自の農園でつくられてんじゃないの。価値はよそ者にはわからない。きめるところはきめるってかんじだよ。松坂の牛肉もすごいよね。地元の人は、何万もするやつを平気でブロックとかで買っていくじゃない。こういう世界をみると人生観変わるよね。
 でもって、福福まんじゅうで、今川焼きみたいなのを喰って、どうしようかと思ったけど、疲れたし、一応健康ランドに向かうことに。