地域デザイン学会編/原田保編著『地域デザイン戦略総論――コンテンツデザインからコンテクストデザインへ』

 宮本文宏氏からは、地域デザイン学会編の本をいただいた。宮本氏は、岡山大学で最初に担当したゼミの受講者である。この学年には、後に新しい撮影法を開発し『ニャン2Z通信』などで活躍されたカメラマンのアリカワ氏などもいた。鍵が開けっ放しの拙宅にたむろっていた学生たちの1人である。*1
 宮本氏は、存在自体がパンクで損をしているところもあったが、美大志望だっただけに感覚はよいし、恐ろしく本を読んでいて、口も立つ。哲学科の先生たちが、村上春樹を全否定しているのを、わかっちゃいねぇと愚痴っていたのが印象に残る。卒論で書いたのは大衆論で、私はそれを読ませてもらって、へぇ、柄谷行人って面白いんだ、って思った覚えがある。いずれ本を書く人だと思っていたが、それは小説とか脚本の類だと思っていた。ところがIT会社で資格なんかもとって、PMとして活躍し、人材育成その他で実績も上げた。そして、多摩大学の大学院に入ったと聞いたのは、私が足の骨折をしたときである。そして数年して、修士学位取得祝いをしたら、この本をいただくことになった。

地域デザイン戦略総論―コンテンツデザインからコンテクストデザインへ (地域デザイン叢書)

地域デザイン戦略総論―コンテンツデザインからコンテクストデザインへ (地域デザイン叢書)

[要旨]

地域振興や地域再生をコンテンツではなく、知識や文化を捉えたコンテクストの開発によって実現することを指向して、2012年1月に設立された地域デザイン学会が、様々な視点からのアプローチで「地域デザイン」とは何かを分析するコンセプト集。

[目次]

ゾーンデザインとコンテクストデザインの共振―地域ブランド価値の発現に向けた新視角;中心的あるいは周縁的運命からの編集―地域と文化;持続可能な地域経済構造の構築へのデザイン視角―地域と経済;Webを活用した商店街活性化―地域とコミュニティ;スポーツ振興と地域のライフスタイル―地域とライフスタイル;フィジカルデザインからメンタルデザインへ―地域と都市計画;イノベーティブ地域を創るコンテクストデザイン―地域と産業クラスター;地域における価値協創関係の構築―地域とビジネスモデル;地域資産を生かすグローバル化―地域とグローバルシステム;エピソード価値による地域ブランディング―地域とブランド;葉山ブランド品の普及に向けて―地域とアグリビジネス;地域ネットワークによる安心できる暮らしの場づくり―地域と医療;知識集約型ビジネス支援サービスの展開―地域とサービスビジネス;ソーシャルメディアによる地域ブランドの創造―ソーシャルメディアと地域デザイン;伝統と革新―地域とソーシャルネットワーク

[出版社商品紹介]

 な視点からのアプローチで「地域デザイン」とは何かを分析するコンセプト集。地域再生はコンテクストの開発によって実現する。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032863414&Action_id=121&Sza_id=C0

 社会人入学の大学院生に執筆機会を与える多摩大学、そして地域デザイン学会は太っ腹だと思った。人材や学会を育て上げることを改めて目の当たりにした気がした。30年以上学会なんてあんまし関係ないんですけどみたいなシビック?なトークを続けてきたので、まねなんかできるわけもないけど。
 宮本氏は、恩師である編者の議論の他には、こっちに気を遣ったのかもしれないけど、私の母校のイノ研がらみの業績に多く触れられていた。野中郁次郎の戦略的思考論、米倉誠一郎他のイノベーション論等々である。無印都市論のエントリーでも触れたが、コンテクストというのなら、今井賢一金子郁容、あとちょっと傾向は違うけど、三浦展なドンも言及してもいいのにと思ったが、その辺にはふれられていなかった。PMなわけだし、地域情報ネットワークとかゆうのなら、もっといろいろ展開できるかもしれないし。勤務先は、印刷会社と連携して、出版の未来形を模索しているとすれば、出版学会との絡みもあるのかもしれない。
 いろいろ勉強させていただいた。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

*1:そのことについては、拙著『若者文化のフィールドワーク』で書いている。オンデマンド版、電子版も出ているが、アマゾンでは1円で売ってることもあるこの本は、学問的にはアレだけど、青春グラフティとしてはなかなか笑えるネタが満載ではないかと思う。