山田信行先生から本をいただきました。本当に恐縮しています。心より感謝申し上げます。労働社会学、国際社会学などで、重厚な著作を連作され、在外研究を経て、次は何を、と思っておりましたら、「入門」と題される本でした。しかし、野太い論理ががっちりくみ上げられた著作であることはかわりはなく、独特の読み応えを期待する読者の期待を裏切るものではないと思います。
内容的には、下記の目次が紹介されているサイトを見れば、コンパクトな展望が得られると思います。
第1部 世界システム論とはなにか世界システムという考え方―批判的入門― (世界思想ゼミナール)
- 作者: 山田信行
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 2012/10/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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基本構成―世界システムはどんなシステムなのか;
社会のレベルと概念 世界システムはどんなシステムなのか
世界システムの構成 世界システムの拡大と収縮
歴史―近代とはいかなる時代か;
近代史と世界システム 歴史記述の方法
『近代世界システム』における歴史記述
歴史記述のスタイルと評価
開発―南北格差は解消できるか;
近代化と西洋社会 近代化論と第三世界
従属理論が提起したもの 世界システムにおける開発
資本主義―どこがユニークなのか
資本主義をとらえる視座 市場システムとしての世界システム
世界システム論における階級と労働
世界システムにおける生産様式 世界システムと移行
第2部 世界システムの過程
国家―システムに制約されるもの;
単位としての国家 資本主義世界経済と国家間システム
世界システム論における国家観 半周辺における国家
社会運動―システムに抗うもの;
資本主義と社会運動 反システム運動とそのタイプ
世界革命とヘゲモニー 反システム運動の周期性
反システム性とシステム内在性
イデオロギーと文化―システムを支えるもの;
社会学とイデオロギー論 世界システムにおけるイデオロギー
ジオカルチャー 貧困の文化/文化の貧困
移行―われわれはどこから来てどこに向かうのか
資本主義への移行 資本主義以前の世界システム
世界システムの将来 世界システムのオルタナティブ
第3部 世界システムの現在
新国際分業―システムは変化したのか;
世界システムと国際分業 (旧)国際分業と輸入代替工業化
新国際分業と輸出志向型工業化 世界都市と移民労働者
ポスト新国際分業―グローバル化はなにをもたらすのか;
グローバル化 「経済のグローバル化」
ポスト新国際分業 再生産のグローバル化
グローバル化への抵抗?
反グローバリズム―「もう1つの世界」は可能か;
資本によるグローバル化 反グローバル化
オルタナティブなグローバル化
世界社会フォーラム運動 が意味するもの
エコロジー―環境問題をどうとらえるか;
資源とエネルギーにみる不平等 国際分業と環境破壊
世界エコロジーの構想 環境問題はシステムに回収できるか
むすびにかえて―われわれはどこまで世界システム論者であるべきか
参考文献
あとがき
索引
http://news.honzuki.jp/the_idea_of_the_world_systems+analytics
私は、従属理論や周辺革命論くらいまでは、こっち方面を隠れてコソコソ読んでいたのですが、世界システム論が紹介されたころになると、まったく読まなくなってしまいました。しかし、ここ数年『ウェーバーと比較社会学』であるとか、あるいは共著者の訳しているハーヴェイだとか、あるいはビュラウォイであるとか、ミルズとの関わりで、いろいろ読まなくてはいけないと思い始めていて、しかし、いきなり原典というのは、ちょっと無理かなぁ、と思っていたところに、非常にありがたい一冊であります。しかし、コソコソ読まなくてもよくなったんだなぁ、というのが実感です。
従属理論の頃は、反原発=マオイスト=悪い奴、みたいな、ベタな図式で、レイブリングされるようなこともあり、学園祭とかで反原発の展示をするのも、それなりに腹をくくる必要がありました。ところが、グローバル化からフクシマに至るできごとの中で、割と普通に反原発を考えられるようになり、従属理論的な議論も普通に読めるようになり、また、マルクスとかも読み直されはじめたように思います。まあこういうふうに思うのは、私がチキンというだけかも知れませんが。ともかく、こういうアカデミックな風格を湛えた本で、一つの思考法を勉強できるようになったことは非常に幸甚なことであると考えます。本当にありがとうございました。