- アーティスト: 手嶌葵
- 出版社/メーカー: ヤマハミュージックコミュニケーションズ
- 発売日: 2008/07/23
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教師に成り立ての頃は、いろいろ学生の相談ごとにのった。勉強の相談に来るのはほとんどいなかったけど、メシが喰えないとか、ふられたとか、親がガンになったとか、指導教員の先生とのおりあいが悪いとか、毎日のようにメシを喰いながら話した。教養部の若手は、誰彼なくみんなそんなカンジだった。というか、もっと面倒見?がよかったと思う。雷雨の時に、同僚の先生のところに電話がかかる。泣きじゃくる学生がいて、そこで待て、などとシャウトして、みんなで救出に向かう。夜中に突然高熱を出したと電話がかかる。学生数人たたき起こして、みんなで救出に向かう。等々。今だったら、問題にされこそすれ、褒められることはない。でも、当時のぼくたちはけっこう使命感を持っていた。
そんな私も、今は勉強以外の相談には一切のらないのを原則にしている。進路も聞かない。とりわけ精神的な悩みなどは、持ちかけること自体がハラスメントだ、と言う。今の社会では、そういう相談にのるには高度の専門的な知識がいると思うからだ。素人に相談持ちかけられるのは、パワハラだと私は考えている。その分、相談室が充実しているので、そちらに行くようにすすめている。さらに、うちの大学は、臨床心理系のセンターができて、外来も受けつけるようになった。安心してお任せできるというものである。
ところが、卒業時期になると、卒業パーティなどで、先生たちが異口同音に「この大学はいつでも帰ってこれる大学です」とおっしゃる。そして、「大学の教員は、家族や会社から中立に話を聞いてあげることができる。何もアドバイスはできないけれども、黙って話を聞くことはできる」などともおっしゃっている。私は帰ってくるのは自由だと思うが、悩み相談はほぼ全拒否しているので、複雑な気持ちになる。悩み相談だけではなく、同窓会とか飲み会も、こちらがよほど気分が乗らないと行かない。いくつ学年があると思ってるんだ、みたいな。w
ところが最近きいて驚いたのは、大学の相談室は在学生だけではなく、卒業生の相談にものってくれるそうなのである。心理センターとも連携しているだろうし、女性のライフコースやキャリア形成などを熟知したスタッフが、転職、ハラスメント、その他いろいろな相談にのってくれるらしい。要するに、ここでもまた遠慮なく自分の仕事は学問周りのことに限定できることになる。そして、「いつでも帰ってこれる大学」ということを、躊躇なくいうこともできる。
うちの大学は、同窓会などでこてこてのコネクションみたいなことはなく、そう言えば・・・みたいに思い出して、のぞきに来て、研究室をのぞいて、いなけりゃ適当に帰る、というくらいの独特のダンディズムのようなものを、卒業生の人たちは持っていると思う。それがまたよいところでもあるとは思うが、相談室を使えるというのはなかなかよいんではないだろうか。たぶんキャリアセンターとかも使えるんだろうな。こういうことだと。そういう往還から、新しい大学作りが始まったらよいかなぁ、とも思う。それにしても、あいかわらず市場ベースのキャッチコピーはつけにくい。