野毛ランチ

 西スポーツセンターで、スイミングのワークアウトを決行。久々のノンストップ5000メートル、うち3000メートルはそこそこのペースで泳ぎ、久々の掛水欲しい状況になり、なかなか心地よいものがありました。最近は、運動量を落とし、食事量を減らすという努力をしていたのですが、ちょっとさすがに連休最終日は食べ過ぎたものですから。
 というのも、何の気なしにしばらくぶりにセンターグリルに行ったわけです。ちょっとケチャップライスでも食べようか、でも行ったら、この店の今現在のイチオシであるオムライスをたべてしまいそう、というよりは、オムハヤシを頼んでしまうかもしれない、などと思って店に入りました。案の定お客さんの多くはオムライス系を頼んでいました。例のくぱぁと割れたやつね。ここでは普通の薄焼き卵のオムライスはチキンライスと注文しますのです。
 で、まあ私も、と思ったのですが、そういえば高島屋催し物みたいな店で今センターグリルの出店が出ていたなぁ、などと考えながら、メニューを見ていたら、「野毛ランチ」という文言が目に飛び込んで参りました。こりゃあ頼まなきゃと思って、何?と聞いたら、留学したてみたいなアルバイトの人で、何言っているのか、よくわからない。なんか、スパゲティのハヤシソースとカレーソースが選べるみたいにゆっているので、今話題の東京丸の内カレーのインディアンの裏メニューなどを思い浮かべ、いいかも、と思って注文しました。盛りは多いだろうと思ったけど、まあいいやみたいな。で、出てきたのがこれ。

 わはははははは。笑いがとまんねぇ、というくらいのボリューム。カツプレートの添え物のスパゲティがちょっと大盛り、みたいに思うかもしれませんが、このメシにかけるのが、ソースというやつ。要するに、このメシがカレーライス、ハヤシライスになるの。で、私はここと言えば、カレーだったのでカレーにしていて、すごいものにとりかかったわけです。カツとスパゲッチとカレーライスのトリオ。鬼です。
 ここのカレーは、昔うちのぢいさまが左官の仕事をしたりすると、「庄次郎さんもっていきな」みたいに、缶詰の空き缶に入れて、持たしてくれて、それを温めて、みんなでちょっとずつ喰ったのはなつかしい思いで。チキンの骨付きカレーこそが、私にとって、登録商標@米国式洋食横浜センターグリルの原点。チキンがもうサムゲタンのようにホロホロ骨からはがれ、さすがに骨は喰えないけど、なんかアメリカだな、みたいな。
 当時はものすごく美味しく思ったんですが、今食べてみると、まあ普通のカレーです。昔美味かったなぁ、というものも、それほどでもないものも、多いですよね。イズミヤのクッキーなんかも、一つか二つは今でもものすごく美味しいと思いますが、全品とは思いませんし。まあ、うちのぢいさまがもらってきたのは、他にもありますが、なんか時代を感じるわけです。うなぎのわかななんかで仕事をしたときは、タレだけもらってくるわけですよ。それをメシにかけて、安い魚の照り焼きとか、みりん干しとか、たべていたんですから。米国の豚の餌が、ミルクと称して、給食に出ていた時代のことです。歩いて1分のところにあった、マッカーサー劇場という映画館で洋画を見て、戦後復興を生き抜いたのが、うちの祖父母や父母なのであります。なんつったって、「風とともに去りぬ」なんて映画は、80年間職人一筋、左官は黙って立ち呑みコップ酒、東京五輪のマラソンで円谷がエゲレスのヒートリーに逆転負けしたときに、婿養子と「これじゃ戦争負けるはずだ」とか言って、悔しそうにしていた、カチンコチン洋風クソくらえのうちのぢいさままで、こっそり観にいったらしいですから。
 カツも普通のカツですが、まあここのカツは、昔ながらの洋食の衣の香りがちょっとします。特筆すべきは、スパゲッティで、ゆであげにオリーブオイルをからめ・・・みたいに思っちゃいけません。なにせ米国式ですから。ぶっといし、そこそこソフト。ここに、トマトピューレがからんだ味わいは、ボクのソウルフードの一つなのであります。物資がないころは、うどんをケチャップで炒めたりして、マネをしたものです。このうどんも、炒めていると溶けかかるようなしろものだったわけですが、それがボクらの米国式でした。むかし、けつのあなだかなんだか、こじゃれたスパゲッチがではじめたころも、私たち一家はここに勝るものなし、と確信していました。なんか元気が欲しくて、トマトピューレで炒めたスパゲッチが喰いたくなると、私はここに足を運んだものです。
 とまあ食い過ぎたわけですが、闇市の街として、戦後史に刻まれる野毛の街の名前を冠したランチを食って、それがそれなりにソウルに響いて大満足でした。みんな西口やみなとみらいのテナントでメシ喰ってないで、ちょっと野毛方面に足を運んでみてほしいものでございます。なぜか人の流れは、桜木町でせき止められ、そこを超えてきたのも、野毛通りで止まってしまいます。なんともにんともでございます。