近藤ようこ『見晴らしガ丘にて』

 ネット上でアニソン、ゲーソンなどと出会っても、ダウンロードはもちろんのこと、CDを購入することすら困難を極めることが多い。ベルセルクOPやパプリカの白虎野の娘などは最近作者が大放出してくださったのでどうにかなったわけだけど、クロノクロスOPなどはどうしようもない。それは私がほとんどゲームをしないし、あまりアニメはみないし、ヲタ情報に疎いだけかもしれないのだが。ただ丹念に検索してみると、意外なところに入っていたりすることがわかった。そんなこんなで、いとうかなこの「とある竜の恋の歌」もようやく注文できた。『竜†恋 [Dra+KoI]』 というゲームのサウンドトラックが出ていたのを発見したのである(DANCES&DRAGONS!竜†恋[Dra+KoI]オリジナルサウンドトラック)。しかし、ジャケツが鬼ヲタ仕様なのが笑える。アニソンではないが、KOKIAの「ネシアの旅人」も入手したし(これはamazon楽天ではヒットしないで、HMVで購入)。しかし、最近はこういうコンシェルジェ的な情報としては、みくしよりも、閲覧時間でそれを抜いたと言われる某サイトからのものが多い。著作権の問題は言うまでもなく重要だろうが、このへんのチャンネルが消滅しないようにして欲しいと思うのである。

DANCES&DRAGONS!竜†恋[Dra+KoI]オリジナルサウンドトラック

DANCES&DRAGONS!竜†恋[Dra+KoI]オリジナルサウンドトラック

 さりとて、みくしの情報もやはり貴重なもので、近藤ゆうこの『見晴らしが丘にて』の完全版が出たことを、コミュ経由で知る。この本はちくま文庫になっていて、とりわけ「かわいい人」という作品ばかりが気になっていた。聞きかじりのスノッブな文芸知識で思いを寄せる人を啓蒙しようとするでぶ眼鏡男の恋愛話で、他人事とは思えない。w イケメンで「自分のことばでものを語れる」地に足が付いた風の男と対比的に描かれたこのあんちゃんは、「自分のことばで語りなさいよ」と一喝される。そして、結末はひねりのきいたものになっており、紋切り型に話が落とされていないことに震撼した覚えがある。
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 狂言ファンでもあり、本も出している近藤は、余白や「間」を上手く使いながら、余韻のあるラストカットへとつなげる。センやべたやスクリーントーンの使い方が、リズミカルで、あやとりがからくりくられるようなかんじで、全体を通した作品性にはぶっとぶものがある。
 実は近藤のあるマンガが読み直したくて、本棚を探していたのだが、どこにしまったのかみつからないでいた。本の名前も忘れ、どうしようもなかったのだが、この本の巻頭にあった。「初恋」という作品である。ばあちゃんが病院に入院する。長年連れ添った夫が毎日看病に来る。でも、ぢいちゃんは、となりのベッドに寝ている女性の名札をみてびっくらこく。それは、昔別れた女性といっしょなのだ。あの人なのではないか??カーテンあけちゃおうか、どうしようか、などと、ワクワクしている間に、カーテンの向こうの人は逝く。ぢいちゃんは、妻と一緒に家に帰る。とまあ、これだけの話なのだが、最後の一コマの炸裂感は、今まで読んだマンガのなかで、ナンバーワンと言っても過言ではない。
 字が付いているとあまりに説明的で興ざめという人もいるかもしれないが、近藤作品はそういうところに挑戦する感じはある。「もう永遠に空想の娘らは来やしない」という文言は、絵の中でヌラッとゆらめくカンジで、この文言を繰り返し味わいたくて、段ボールを何個もあけて、マンガを探したことを思い出す。文庫版のほうは、「かわいい人」にも登場した松浦理英子の解説がついていたりしたのだが、今回は省略されている。ちょっと残念だけど、まあしょうがないよね。しかし、こういう恋愛ものを読むにつけ、近藤ようこの『あけがたルージュ』はなぜああゆう仕上がりなんだろうと思う。それは私の読解力不足に過ぎないのかもしれないし、あるいはジェンダーバイアスなのかもしれないとも思うのだが。