エネミーライン2

 最後の推敲に向かうため、あたまを空っぽにしようということで、ビデオでアホ映画でも観ようかと思い、ダイハードとかも考えたし、再びワイルドグリズリーでもとか考えたのですが、イマイチだなぁと思い、有識者にあとを引かないくらいのハイタッチ系ということで助言をもとめ、イチオシだった『エネミーライン2』をみる。最近リリースのもの。曰く「珠玉の2」。みたあとの感想。たしかに。「マトリックス」みたいなものから、「山猫は眠らない」まで、私なりに楽しめた作品の2は、けっこうアレなものが多かったんだけど、これはもうカチンコチン国策映画っつぅかんじで、井筒和幸監督だったら、ゴルァとスクリーンに殴りかかりそうなものであります。おれはけっこうきらいじゃないけどさ。面白いよ。けっこう。w

 アマゾンのレビューもこてんぱんなものが多い。ボスニアだから「エネミーライン」じゃなかったのか?これだったら、3でイラン、4でコロンビアとか、増産体制準備完了っつぅことか?みたいなことが、書いてあった。こうなったらさ、ウディ・アレンでも、スパイク・リーでもいいからさ、国名逆転させるなり、そこまでしなくても「アメリカからの脱出」みたいなのを撮らないもんかね。カメラ一台でとった、わけわかめなホラー映画みたいなチープやつあったじゃん。ああゆう金かからないのでもいいけどさ。昔だったら、AV監督みたいなのが、「ミクロの決死圏」みたいなのをポルノ仕立てで撮って、一週間くらい笑って、あとはシラネ、みたいなもんがでてきたんだろうけどね。w
 ともかく、悪の枢軸vs十字軍みたいな愛国者萌え萌えの図式が鮮やか。1は、戦争への絶望みたいなものが漂っていたんだけど、こんどのはもうわかりやすい。核兵器準備している北朝鮮のミサイルサイロをぶっ壊してトンズラこくという脱出劇です。映像は、時々トリップするIWGP堤幸彦のパロディみたいだしぃ、なんかさ、加藤あいが「まこっちゃん」とか出てきそうな、わけねぇよな。w登場人物も実にシンプル。やんちゃだったが今はプロの主人公、ゴリラだが涙もろく人間味あふれるサブ、鬼の曹長、部下思いの指揮官、イケイケの指揮官、悪い国のカチンコチン悪い椰子ら、悪い国の悪くない人。かげりもない。でさ、これらがいちいち愛国者のツボつきまくりッテカンジなんですよね。ガッツにあふれていて、ハイタッチで、でもハートフルでさ。
 あと、一応公民権にも十分に配慮したキャスティングだし、敵国の虐げられた人々、次代を担うだろう人(一人のアメリカかぶれの亡命斡旋えらいさん)のことなんかもそれなりに描かれているけど、ボクいい人気味悪い人図式がステレオタイプということばも赤面するくらいカチンコチンでさ、笑っちゃうくらい、社会意識論の勉強に・・・ならないかな。wともかくみる人のターゲット絞って、非常にクリアに作品を提示しているわけで、中途半端にゲージツぶったAVとか、できるつもりでうんちくかましまくりのかまびすしい著作などよりは、数段ましだとは思うよ。この点において。爆(´・ω・`)ショボーンだけどな。オレは。
 しかし、一番ワロタのは、こき使われている政治犯に拳銃渡して「闘おうぜ」みたいに言うと、「サンクス」などと言って、躍動するんだよ、政治犯のあんちゃんが。キターバカくせぇ拳銃アクションかと思ったら、眼が飛んでいて、いきなり頭撃って自殺しちゃうんだからな。まさか呉智英読んでいて、水滸伝仕様にしたわけじゃないだろうけどな。まあこれも、虐待のひどさを表現するためだろうし、「敵」が仮面ライダーのショッカーみたいに顔がないのも、それなりの作為なのかもしれないけどね。あと、最初に北朝鮮に潜入するときの仕方も、民間機からパラシューターという計画が中止になったのに飛び降りちゃって、それを追いかけてゴリラが軍法会議覚悟で飛び降りるという強引なものだし、途中もパロディ、パスティッシュとおぼしきところはたくさんあり、おちょけまくっているんだけどね。単純にアホにつくっただけかもしれないけど、そうでもないかもしれないとも思ったけどな。愛国者鬼ハアトなキャラもなんか、笑えるしね。
 もしかすると、べたカチンコチンの世界が亀裂入りまくりで、不安定で、馬鹿臭いみたいなことが作為としてあったら、とか、思わないことはない。今買うとついて来るという、1のほうは、ジーン・ハックマンが出てきて、モノホン艦船、戦闘機歌舞伎まくりのすごい作品ながら、バルカンの内戦におけるホロコーストがそれなりの奥行きを持った映像と、脚本と、なにやかにやでもうちょっとオーソドックスに描いていたと思うけどね。