お彼岸なので一応帰省している。帰ればやることは、散髪をして、有隣堂に行くくらい。あとは、うだうだしているだけ。有隣堂は、いかにも新学期前といった棚ぞろえで、文芸書のコーナーには広島大学総合科学部でつくった学生に薦める本だとか、ガイドブック調のものが目につく。その中でおおっと思ったのが、本書である。豊崎って、文学賞メッタ斬りの人?由美ちんだったっけ?と思い手にとってみると、ピンポーン。ちゃねらーの由美ちんですた。
- 作者: 岡野宏文,豊崎由美
- 出版社/メーカー: ぴあ
- 発売日: 2004/10
- メディア: 単行本
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それはともかく、私はあるひとつの期待を持って、目次をおった。それはなにか?狂い氏にした島田清次郎ぢゃねぇよ。それもあったけどさ。答えは、『蟹工船』である。ホワイ?とゆうかもしれないけど、ちゃねらーの由美ちんたちがこれをどう斬っているか?あそこに言及しているか?そんな期待をもったのだ。そしたら、もう一番でかいAA貼りたいくらいにキターですた。もろある。速攻そのページを開くアテクシ。わくわく。そうしたら、さらにフォルテッシモにキターでもろありますた。しかも言及した豊崎は、さらっと流しているが、岡野は丁寧に注までつけていやがる。
「勃起している睾丸(ルビ:きんたま)」(注)(『蟹工船』より:inainaba)
「(注):幸か不幸か僕はまだ睾丸が勃起しているのを見たことがない。凄いぞ海の男・・・」(岡野)。
私はあまりの感動に、笑い転げそうになったが、グッとこらえ、きょろきょろと周りを見回した。しかし、また笑いがこみ上げてくる。すばらしい。『蟹工船』は、これ以外に語るところがないと言っても過言ではないのではないかとすら思う。三修社から出ていたシンチンゲル独和辞典の「ficken」ほかのニュアンスをこめた訳語や、有名な新解さんなどにも匹敵するんじゃないだろうか。岡崎は「まるでスプラッター小説のようなえぐい描写の連続」と言っている。実にイイ。ただ、団結して立ち向かうコアプロレタリア文学っちょいところには、しっかり文句をつけている。どうだろう。ちょっとその文句のつけ方は、型どおりすぎませんかって気もした。あと、オノマトペの凡庸だけを例示し、大好きな長島茂雄さんに悪いけどと言いつつ、「文章がだめ」と言っちゃうのも、ちゃねらーっぽいというか、どっちかというと長島ねたふりたくて言ったんじゃないのとツッコミを入れたくなる。が、ともかくここだけ読んで買った。
帰って読んでみると、やっぱり面白い。通常は凹らレルことが多い堀辰雄は、絶賛に近い。シマセイも、かなりの好意的なとりあげ方。最大のベストセラーにして、最大のロングセラーの『宮本武蔵』も絶賛。でも、『バガボンド』読んでおけば十分とかいちびりかましている。意見が分かれたのが『蒲団』。岡崎「実話だっていうんだぜ」と一刀両断。豊崎「かわいいおやぢぢゃん」。わはははは。かなり楽しめる。永井荷風は、二人にぼこぼこにやられ、サルトルでは豊崎が高等遊民フォビアでガウガウ吼え、岡崎がどうどうとなだめ役。いうまでもなく、チホー、『俺について来い』、『気くばりのすすめ』など、香ばしい作品のならぶ戦後は、期待通りでございました。私の最初の愛読書、『ぐうたら人間学』が意外なまでに高く評価されていたのは、びっくりしたが、読んでみて納得。深沢七郎は、やっぱやばいほどすごい。どうツッコムかと思っていたので、ちょっと残念かなぁ。索引も充実していて、なかなか使える本でもある。