たかが30年されど30年

 今日は若干体調を崩し、一日中ごろごろしながら田宮二郎の『白い巨塔』をみていました。放映が78年〜なので、もう30年近く前の作品となります。時の流れを感じるところが随所にあります。オフィス用品、医療器具その他が、比較にならないくらい古くさいものであるというようなことからはじまり、ファッション、髪型その他いろいろ目につくところがありました。そういう細かいところだけでなく、ちょっと今なんの注釈もつけずこれやったらスゲーことになるだろうなぁと思うところが随所にあり、私のようなものですら、あちゃー、あたたたたと思うところがたくさんあります。
 たとえば大学の会議でも、研究室に行ったときでも、メシ喰いに行ったときでも、どこでもかしこでも、お構いなくタバコを吸いまくっているのは、今じゃありえねーことかと思います。教授がいようと、助教授がいようと、ヒラの医局員までがぷかぷかと、安田南な紫煙たなびかせちている。封建的な関係が今以上に強いカンジがするので、それがよけい目立ったのが、面白かったです。あと、医局などが全員男であるのも異様な雰囲気に見えます。私が岡山に赴任した頃も、「ちょっと前までは○○の医局は女子禁制だった」みたいな話を耳にしたことがあります。あと言動の類も、ものすげぇものがあり、セクハラ大魔王が竜虎相撃つガオガオ合戦には、どっちかといえば、まーどーでもいいじゃないというような基本スタンスの私も、ぶっ飛びました。主人公財前の舅である財前産婦人科院長が教授選でカネばらまいた時にコテコテの大阪人っぽいパフォーマンスで「どーせ毎日女のドブ掃除やって稼いだカネや!」と絶叫した明蝶にはワオ!と叫んでしまいますた。昔みた時はそんなことには一切選択的注意を払わなかったわけで、正直ビックリしています。それにしても、旧作の凄さは、特筆されると思います。黒田昭彦さんの解説が、唐沢版新作の良さを確認しながら、旧作の凄さを、「田宮二郎の鬼気迫る演技」「脇役人の厚み」に分けて、分析解説しています。一読の価値はあると思います。
http://allabout.co.jp/entertainment/drama/closeup/CU20040217/
 このドラマがはじまった時に、しばしば学生から「すごい世界を生きてきたんですねぇ」と言われました。が、まあ、やっぱりこの世界とわれわれの世界は違うと思います。当時お医者さんが「現実はこんなもんではない」みたいにゆったという話もあります。しかし、医学部の知り合いなどに聞きますと、これほどのことはないという人もいます。そして、医学部と他は違うし、文系と理系も違います。文系はある程度エスカレーター式で、スターターポストに就いたら、あとは年齢で昇進する。研究も、理系のように短編ばかり書くスタイル以外にも、年月をかけて長編を書き上げるようなスタイルもとりあえず今のところは認められていて、マイペースなところがあります。これに対してこのドラマに描かれている政争は、とりあえず国際級の業績を上げた上での政争なので、すげぇもんだと思うわけです。筒井康隆の『文学部唯野教授』の方が、まだイメージは近いですが、まあこれもちょっと違うなぁと思うんですよね。私の経験してきた世界に一番近いと思われるのは、佐々木倫子動物のお医者さん』です。たぶんこれが一番近いと思います。
 ついでに論文業績のことについて少々言います。査読論文がたくさん必要な現実は、短編作家的な研究者ばかり育ってどうなるのだろうと思います。データを用いて、仮説検証解釈理論化という手順を踏む論文に長編はあり得ないということもあるのかもしれませんが、理系だって長い論文はあるのではないでしょうか。そうでもないのかなぁ・・・。私は、自分が長編作家だなどと思い上がったことを言うつもりはありません。ただ、査読誌に投稿できるような枚数の論文を書くのにたいそう苦労しました。あきれるかもしれませんが、正直言って、40歳すぎてはじめて投稿しました。悪運だけで生きてきたわけですけど、今はそんな恵まれた悪運を享受できることは少ないでしょう。なぜ査読論文が書けなかったか。それは、私が社会哲学出身で、社会学がおぼろげにわかりはじめたのは、就職してからあとだということが、最大の原因だと思います。また、すぐ全面展開したがって、ニートに問題を立てられないということもこれに負けず大きいと思います。就職して、2種類の紀要に習作を投稿できるようになり、特に一つの雑誌は制限枚数がなかった。これでずいぶん救われた気になりました。