増田聡・谷口文和『音楽未来形』洋泉社

 久しぶりに晴れ渡った。しかし、鬱である。毎年この時期になると、卒業できない人が話題になる。ちょっとしたことが、大きな違いになる。不注意といえば不注意だが、なんともやりきれない。私は自分が留年しているから、他の人に比べこの件についてさほど重大に考えていない。それでも、やはり気にはなる。大学に着いたら、「著者より」ちうことで、『音楽未来形』という本が届いていた。先日、増田さんとは、ポピュラー音楽学会の例会で「接近遭遇」したわけだが、例によって一言も誰とも口をきかずに帰ってしまい、せっかくお話しする機会だったのに残念だ。と言いつつも、どこかであってもまたせいぜい頭を掻く程度の挨拶しかできないと思いますけど。すんまそん。増田さんは、私にとって重要なコメントをしてくれた人である。クレオールの説明に宮台真司を使ったりしてバカじゃね、どーでもいいなどと、羊頭狗肉なドキュソ本として悪し様に言われていた『サブカルチャー社会学』に対して、「サブカルもてない男かもしれないですぞ」とかゆってくれたのが増田さんであり、私としては足を向けて寝れないのであったりした。だから、この本は買う予定に入っていたし、私のようなど素人が、バリバリの気鋭の研究者にに印税払いの本をいただいてしまい、まったく恐縮するしかないのである。まあただ、編集者の渡邉秀樹さんは、子犬ムックの編集者でもあり、むしろ編集者から送っていただいたのかもなぁとも思った。いずれにしても、心からお礼申し上げたい。あ、さて@下衆ヤバ夫風に。
 まず題名であるけれども、増田さんのブログ(id:smasuda)に「書名がアレな事実については追求禁止」とある。この件は、例会でも話題になっていたわけだが、なぜ「アレ」なのかは、ちょいとわからない。坂本龍一の『未来派野郎』などを思い出したりして、けっこう(・∀・)イイ!!と思うのは、やっぱり親ぢせんすなのだろうか。私が『若者文化のフィールドワーク』に「エリアキッズ」という文言の題名をつけようとして担当の島原裕司さんに「十分に検討したけどダメです」ときっぱり言われたことなんかを思い出す。アレは恥だ。出、今回の題名だが、『ポピュラー音楽未来派野郎』とかゆうなら、さすがに「アレ」かもしんないけど、そんなに「アレ」かどうかはわかりませぬ。で、目次と帯の口上ですが、つぎのようになっております。

まえがき
第1章 音楽を揺るがす装置
第2章 レコードの20世紀
第3章 正体不明の「作品」
第4章 「音楽」を更新するDJ
第5章 多層化する「聴くこと」
第6章 オリジナリティと音楽の経済

 いままでの「音楽」の常識はもう通用しない!iPod、CCCD、MP3、サンプリング・・・激変する音楽をめぐるテクノロジー環境は、音楽を、リスナーを、ビジネスを、著作権をどう変えるのか?
 たとえばこんな常識はもはや通用しない!デジタル・コピーの氾濫は音楽を殺してしまう!CCCDは音楽を殺してしまう!ターンテーブルは楽器じゃない!音楽は「人工的な」ものよりやっぱり「生」に限る!著作権を守らないと独創性が消えてしまう。

 私は、この前の研究例会で、CDを聴くよりみんなつくって遊ぶ方が楽しくなっちゃうみたいな話をされていたことに、とても惹かれるものがあったので、まず第5章、第6章あたりを流し読みした。このあたりはやはり、著作権知財うんぬんといった、コンテンツ産業系の話とも結びつくことであり、そして業界出身者の経験を尊重しつつも、それに臆することなく学問的な貢献のあり方をニートに切りわけて論じていることや、コンテンツ産業論などに食傷気味な人も文化社会学的な議論に食傷気味な人もともに楽しめるといったことなどは、著者たちがなかなか得難い書き手であることを証明していると思う。著者たちはこれをきっかけに、さらに飛躍され、各方面で活躍されるだろうなぁ、実に(・∀・)イイ!!と思ったのであった。
 あともう一つ目についたのは、第2章でグールドに論及があったことである。受けての「編集」というのは、いわゆる能動的な受け手論などとの絡みもあり、たとえば岩波の社会学講座で浜日出夫さんが「マクルーハンとグールド」という論文を書いているし、グールドの著作集なども含め、いろいろな論考がある。私も『若者文化のフィールドワーク』という本のエピローグにおいて、ジーサスジョーンズのマイク・エドワーズが編集して聴く時代になるみたいなことを言っていたことにちょっとだけ触れたことがある。しかし、もともとは音楽美学の専門家である著者が書くと、非常に丁寧でわかりやすい説明になっていて、またそれが20世紀音楽のコンテクストのひろがりとして説明されていて、非常に萌えでございました。非常にわかりやすい論考ではあるけれども、ものすごい勉強量に基づいていることは、増田さんのブログやネットサイトをながめただけでも瞬時にわかる。心から表敬したい。
 6回で終わるし、値段も手頃だし、ゼミテキストにすることなども検討していますです。さあ、今日はさんまちゃんの番組だよね。わくわく。